カテゴリー別アーカイブ: 災害復興

行政-災害復興

復旧、町長と議会の役割

9月20日の朝日新聞オピニオン欄に、碇川豊・岩手県大槌町長のインタビューが載っていました。大槌町は町長が津波でなくなり、170日の間、代理が指揮を執っていました。役場は全壊、140人の職員のうち40人が亡くなりました。11人の管理職のうち7人が亡くなり、さらに3人が3月に定年で退職しました。
町長不在で、復興のスケジュールが遅れた、との指摘に対して。
「役場と住民がうまくかみ合わなかった。役場は意見を聞くといっても形式的対応に終始し、住民は無関心だった。一刻も早く復興計画をまとめたいが、あまり急いでは阪神大震災後の神戸のように住民から反対意見が出て、かえって時間がかかってしまいます。私は、町内9地区ごとに協議会を作って住民から起案してもらい、年内に計画をまとめようと思います。
先日、自律的な復興をめざす若いグループと懇談しました。心強かった・・」
「あとは、議会。積極的に政策立案に関与してほしい。チェック機能も大事ですが、今は、みんなの知恵を集めなくてはいけない。一緒に予算を作ってもいいくらいです」

震災を経て地方自治、役場の存在意義が明確になったということはありませんか、という問いに対して。
「地方自治法は『民主的にして能率的な行政の確保を図る』とある。その原点に返らないといけない。今までは前例踏襲の『惰性の行政』でもなんとかなったかもしれない。今は、役場が住民に必要なことを創造力とスピード感を持ってできているかどうか、すぐわかってしまう」

その若者の動きについては、9月15日の同じくオピニオン欄に、大槌町の若者、赤崎友洋さん(33歳)のインタビューが載っています。「おらが大槌夢広場創造委員会」理事です。この会は、復興に関することなら、みんなで知恵を出し合い、協力しましょう、というプラットホームとのことです。
「復興計画に住民が関われる仕組みも必要だ。町が道筋を示さないので、私たち被災者が主催して5~6月に「復興まちづくり住民会議」を避難所など6か所で開き、参加した250人の意見をまとめて町に提言した・・
本来、町や議会がやるべき仕事であっても、事務的な仕事で手一杯だろうから、役割分担すればいい。町は街づくりの大きな絵を描き、我々の声も反映させる。経済活動や住民サービスは我々に任せて、町はそれを助ける・・」

被災地での産業再開

9月25日の読売新聞は、農林水産省が発表した、被災した農業と漁業の再開状況(7月11日時点)を伝えていました。
それによると、農業については、被災した8県の74%の農家や農業法人が再開しています。しかし、津波による塩害やがれきが大きかった宮城県では34%にとどまっています。漁業については、6道県で36%です。岩手県は16%、宮城県は17%です。なお、福島県は調査から外れています。
同じく25日の日経新聞は、民間調査機関が7月にまとめた調査によると、3県で津波被害区域や原発事故警戒区域に本社を置く5,004社のうち、半数以上の企業が事業を再開したことを伝えています。金融機関による融資が効果を出しているとのことです。
しかし、福島県では風評被害によって、観光や農業に大きな影響が出ています(9月20日読売新聞、日銀支店長へのインタビュー)。

被災地での法律相談

9月20日の日経新聞が、大震災に関して「法テラス」が受け付けた電話相談の概要を、紹介していました。
法テラス(日本司法支援センター)は、国が作った組織で、法律問題でお困りの方の相談に乗る窓口です。個別問題は弁護士さんたちに相談しなければなりませんが、どこに行ったら相談に乗ってもらえるのかを、無料で案内します。解決に役立つ法制度や、各種機関の相談窓口(地方公共団体、弁護士会、司法書士会、消費者団体など)、無料で教えてくれます。
大震災に関しても、いろいろな支援をしています。電話相談や巡回相談など。また、各種の相談窓口も載っています。
ところで、半年間の相談は、約3,700件。一番多いのは、住まいや不動産で25%。次が、金銭の貸し借りなど生活上の取引で19%、解雇など労働関係が14%、家族関係が12%です。(8月下旬までの相談概要

役所の窓口は柔軟です

9月19日の河北新報(東北地方第一の地域新聞)が、気仙沼 農地転用、進む宅地化/手続き加速、国が促す」を伝えていました。
・・東日本大震災で大きな被害を受けた気仙沼市で、自宅が被災した住民が近くの高台に所有する農地に新居を構えるため、農地転用を申請し、許可されるケースが急増している。海と山が接する三陸特有の地形のため大規模農地が少なく、転用が認められやすい上、国が被災者の事情に配慮し、手続きの迅速化を促したことも背景にある・・

「とかく行政は手続が複雑で、時間がかかる。たらい回しされて、面倒だ」というのが、行政を批判する場合の定番です。そんなことはありません。このように、ご要望にお応えしています。でも、よくやっている例は、報道されないのですよね。河北新報さん、ありがとうございました。

役所の窓口に座っている職員は、鬼でもロボットでもありません。あなたの近所に住んでいる普通の住民が、公務員で窓口に座っているのです。みんな、どうしたら被災者のためになるかを、考えています。
もし「窓口の手続が面倒だ」という声があったら、ぜひ、どの町のどの手続か問題かを、お知らせください。匿名をご希望の場合は、それでも結構です。
とかく批判される方は、ステレオタイプ=定番の批判をされます。もちろん、火のないところに煙は立ちません。何か事実があるのでしょう。でも、その批判を生産的に使うためには、「どこの何が悪いですか」「それを改善するためには、どのような代案がありますか」と聞いてください。

復興本部会合、財源確保方法の選択肢

今日夕方、官邸で、復興本部会合を開きました。今日の議題は、復興財源です。5年間で、19兆円の事業費が必要と見込まれます。この財源を、どう調達するか。既に「基本方針」で決めていたように、ひとまず国債でつなぐとしても、その償還は国民に負担してもらわなければなりません。その案が、政府税調でまとまり、報告されました。2案あって、これから与党、さらには与野党で、決めてもらいます。法人と個人の所得、さらにはたばこが、増税の対象になっています。詳しくは、資料をご覧ください。

極端に単純化すれば、復旧事業と復興事業は、各省(公務員)と地方団体に任せてもらえれば、きちんとやり遂げます。やることは、決まっています。道路を復旧し、学校を建て直し、住宅を建てることです。しかし、その財源を、国民にどう負担してもらうか。それは公務員には、決めることができないことです。国民に選ばれた政治家が、決めることです。

なお、この19兆円は、国費と地方費を含めた事業費です。国の直轄事業で行うか、補助事業で行うか、地方自治体が単独で行うか。いずれの場合もあります。補助事業で行う場合は、国庫補助金とその地方負担額が含まれます。地方単独事業費も、ここに含まれます。すなわち、補助率が高くなっても低くなっても、この事業費総額の数字は変わりません。
市町村の関心は、国庫補助金の残額=地方負担額が、どのように手当てされるかでしょう。必要な市町村に必要な額が配分されるように、その仕組みを総務省で検討してもらっています。近いうちに、お知らせできると思います。