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行政-災害復興

台風19号、想定されていた浸水

今回の台風19号は、予想以上の大雨を降らし、河川堤防が壊れて市街地に水があふれました。想定以上の雨と水量になったようです。すべての豪雨を、堤防で防ぐことは不可能です。津波についても、巨大津波に対しては、防潮堤と逃げることを組み合わせることにしました。
ところが、浸水が想定されていて、被害を抑える方法があったのに、それを怠ったところもあるようです。10月16日の日経新聞「台風19号、想定された浸水 活用途上のハザードマップ」によると。

・・・長野市は2007年3月に洪水ハザードマップを作成し、19年3月に更新したばかり。従来の「100年に一度」の想定に「1000年に一度」も加え、同年夏に広報紙と一緒に各家庭に配布していた。台風19号による浸水地域の周辺は、19年版では最大10~20メートルの浸水が想定されていた。
今回の浸水地域内には県立病院、大型商業施設のほか、JR東日本の長野新幹線車両センターがあり、北陸新幹線の車両120両も水に漬かった。同社は氾濫時に浸水の恐れがあることを認識していたが、車両を「避難」させていなかった・・・

これが事実なら、天災ではなく人災ですね。

台風被害、復旧の難しさ

風による大きな被害をもたらした台風15号に続き、台風19号が、各地に大雨による大きな被害をもたらしました。気象庁が、狩野川台風以来と予告した通りになってしまいました。被害に遭われた方に、お見舞い申し上げます。
被災者を救助し、避難所に入ってもらい、生活の支援をします。次に、復旧の段階に入ります。被災者にとっても、自治体にとっても、大変なことです。

ところで、私の経験では、一般の方、自治体の職員、報道関係者が、意外と気づかない「課題」があります。それは、大きく報道されることと、被災者にとって重要な課題が、ズレていることがあるのです。
道路や堤防などの公共施設は、国土交通省や自治体の土木部が経験と能力を持っています。農業被害の把握も、農水省と農政部が取り組んでくれます。それも大変なのですが。

課題は、つぎのようなものです。
・各家庭への支援。どのような支援策があるかの相談や、何に悩んでいるかの聞き取り。これは、最近までは家庭のことは「自己責任」とされ、自治体の業務ではありませんでした。しかし、公共施設の復旧も重要ですが、住民の生活再建の方がより重要なのです。
・がれきの片付け。分別しておかないと、後の作業が大変です。これについては、環境省が経験を積みました。
・ボランティアの受け入れと、配置。これも、近年経験を積み重ねてきましたが、多くの自治体と社会福祉協議会にとっては、初めてのことです。
・そして、これらの対応に当たる市町村役場への職員の応援です。

なぜ、これらの項目を、ここで挙げるのか。それは、
・これまで、各家庭の責任と町内での助け合いで対応していたことが、行政の責任になったからです。
・道路や農地は、県庁にも市町村役場にも担当部局があります。しかし、ここに上げた項目は、担当部局がないのです。危機管理課や防災課は、ここまで手が回りません。庁内で対策会議を開いても、これらの項目は担当課がないので、上がってきません。
・県庁にも、このような視点で市町村役場を応援することが、これまでなかったのです。

公共施設の被害状況は、比較的早くまとめられます。担当部局があるからです。しかし、個人の家がどの程度被災したかは、すぐには報告されません。これは、ふだんそれを担当している部局がありません。役所の目で見るのと、被災者の目で見るのとでは、すべきことが違って見えます。
また、激甚災害に指定するかどうかが報道されますが、これは公共施設の被害額が算定の基礎になります。極端なことを言えば、家屋がたくさん倒れていても、道路や堤防に被害がないと激甚災害にはならないのです。

原発被災地での新たな農業参入

東北農政局の「震災復興室だより」9月号は、被災12市町で新たに農業をはじめた方の特集です。
詳しくは、それぞれの記事を読んでください。皆さん、厳しい条件の下で、頑張っておられます。

ここでわかることは、園芸作物には技術が必要で、米作りには大規模化が必要だということです。
かつての農業は、農家の息子が、田んぼとともに親の後を継ぎました。そして、受け継いだ農地で米を作ったのです。しかし、この半世紀の間に、大きく様変わりしました。稲作は生産効率が上がり、また相対的に価格が下がったので、昔ながら小規模農家では食べていけません。稲作で食べていくなら、大規模化が必須です。家業から事業に転換する必要があります。
他方で、園芸作物は高く売れます。しかし、片手間仕事でできる稲作と違い、技術、資本、そして毎日の労働が必要です。簡単な作業ではないのです。

毎年の新規営農者は、とても少ないです。家業を子供が受け継ぐという旧来の意識では、成り立たなくなっています。ここに、日本の農政の失敗があります。
事業として、従業員を雇って経営するという、発想と仕組みに変えていく必要があります。この半世紀に、日本が経験した「社会の転換」の一つの要素です。そして、手当てが遅れました。
家業から事業への転換が必要だということは、商工業でも同様です。商店街の個人営業の店がなくなり、チェーン店に変わっているのです。

岩手県被災地視察、その3

今回の視察で、もう一つ印象的なことがありました。被災住宅移転跡地にできた、トマト栽培の大規模ハウスです。高さ6メートル、横幅150メートル、奥行き100メートルです。
住宅移転跡地は、住宅を建てることができず、利用用途が限られます。多くの地域で、苦労しています。ここは企業が進出してくれて、ハウスが建ちました。そして、地元の人の雇用の場になっています。「いわて銀河農園

大震災被災地では、いくつもこのような大規模ハウスが建っています。私も、これまでに、いくつか視察しました。ノウハウを大企業やオランダから学び、企業として職員を雇って、野菜を生産しています。このような事業で、何が難しいかを、根掘り葉掘り聞いてきました。勉強になったのは、次のようなことです。

1 よい品質の野菜を、年間を通してなるべく同じ量を生産すること。ここに、技術と経験の善し悪しが現れます。ここまでは、よく聞く話です。しかし、企業として成り立たせるためには、次の2つが重要です。

2 取引先。いくら作っても、売れないと事業になりません。たいがいの大規模農園は、スーパーマーケットや飲食チェーンと契約を結んでいて、安定した売り先を確保しています。

3 従業員の確保と管理。育成や肥料やりなどは、機械化されていますが、収穫は人手です。そして、相手は生物なので、繁閑期があります。すると、フルタイムの従業員だけでなく、パートタイムの従業員も必要となります。
その人たちを集めることができるか。そして、野菜の育成に応じて、勤務を管理しなければなりません。これも、事業としては重要な仕事なのです。

ふたばワールド2019

今日10月5日は、ふたばワールド2019に、Jヴィレッジまで行ってきました。ふたばワールドは、双葉郡8町村がこの時期に開くお祭りです。避難指示が解除されてから、再開されました。帰還した住民と、まだ帰還できない住民が集う機会です。

今年は、Jヴィレッジで開催しました。関係機関の紹介展示、各町村からの物品販売、売店などなど。たくさんの人で賑わいました。
住民、特に高齢者向けのいろんな健康相談が、賑わっていました。私も誘われたので、一つ受けてきました。福島心のケアセンターも、参加していました。

今回目立ったのは、子供さんです。体操のお兄さんにの周りに、たくさんの子供が集まってくれました。
避難指示が解除された地区では、徐々に住民が戻っているのですが、子育て中のお母さんと子供の戻りが遅いのです。このようなお祭りに参加してもらい、安全であること、そしてお友達も戻っていることを実感してもらって、いずれ戻ってきて欲しいです。

帰りは、JR常磐線のJヴィレッジ駅から、電車で帰ってきました。この駅は、Jヴィレッジに隣接していて、便利です。ただし、催しのある日しか営業しないので、時刻表を確認してから乗る必要があります。