カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割

行政-政治の役割

政治の情報化

10月3日の朝日新聞夕刊で、野口陽記者が「データ化に遅れ 政治資金、分析可能な公開を」を取り上げていました。

・・・自民党派閥の裏金作りは、遅くとも十数年前から続いてきた。発覚したのは、政治資金収支報告書の記載漏れを「しんぶん赤旗日曜版」が報じたからだ。
報告書は全ての政治団体が公開を義務づけられている。派閥のパーティー券を買った団体が購入額を報告書に記した一方、派閥側は販売収入を記載していないケースが多くあったのだ。
もっと使いやすい公開制度なら、不正はより早く見つかったのではないか。米国留学時に現地の制度を見た経験から、そう思う・・・
・・・日本でも国や地方がウェブで報告書を公開しているが、米国に比べると状況は大きく遅れている。
「格差」の要因は公表データの形式の違いだ。米国は、ウェブ上でテキストの検索や数字の集計などの処理ができる「機械可読」の形式だ。日本では、ほとんどの政治団体が機械可読なデータで報告書を作るが、提出する段階で紙にしたり、国などがウェブ公開の際にPDF画像にしたりする。そのため機械可読でなくなり、処理がしづらい・・・
・・・見直しは難しいことではない。報告書を機械可読なデータのまま1カ所に集め、最低限の加工だけ施して公開すればいい・・・

他方で、9月23日の読売新聞東京版は、「墨田区議会「改革度」なぜ1位? AI駆使 情報公開徹底」を伝えていました。
2022年に政務調査費を着服する事件が起き、それへの反省から、区民への説明や区政の透明化を進めたとのことです(読売新聞のウエッブで出てこないので、リンクを張ることができません)。

旧優生保護法、遅かった救済

9月19日の日経新聞「強制不妊、逃した「救済」機会 司法判断で政治解決再び」から。

・・・強制的な不妊手術という国による重大な人権侵害に対する補償制度法案が18日、超党派の議連で固まった。旧優生保護法の成立から76年。国際社会からの批判や当事者の訴えという「救済」の機会があったにもかかわらず政府は動かず、司法に迫られる形で政治決着に至った。約2万5千人とされる被害者へ補償が行き渡るかが問われる。

旧優生保護法は1948年に議員立法で成立した。戦後の深刻な食糧不足から人口抑制を図りつつ、復興に携わる人材を確保する狙いがあったとされる。「不良な子孫の出生を防止する」ため、正当な理由なく不妊手術を認める規定が盛り込まれた。
同法が示す「優生思想」を批判する声は80年代ごろから国内で高まり、旧厚生省内でも「人道的に問題はあるのでは」と指摘が上がったという。しかし法改正の動きは鈍く、90年代に入っても不妊手術は続けられた。

見直しを迫ったのは国際社会だ。94年、カイロで開かれた国連の国際人口開発会議で本人の同意なく子宮を摘出された日本人の事例が紹介された。「日本にはなお優生保護法が存在し、障害をもつ女性の人権が侵害されている」との訴えは大きな反響を呼び、障害者の国際団体などから法改正の要望が殺到した。
国会は96年に旧法を母体保護法に改正し、手術の規定を削除した。しかし手術を受けた人への補償は見送った。同様に不妊手術を強制し、見直し後に正式な謝罪や補償をしたスウェーデンやドイツとは対照的な対応だった。
国際人権規約委員会が98年、必要な法的措置をとるよう勧告した際には「過去に遡って補償することは考えていない」との政府見解を示した。

国による補償がないまま法改正から20年超が経過した2018年1月、当事者が声を上げた。手術を受けた本人が初めて訴訟を提起。これを受けて同年3月に超党派の議員連盟などが発足し、補償に関して初めて具体的な検討が始まった。
19年に全会一致で成立した一時金支給法は手術を受けた本人にのみ一律320万円を支給することを柱とする。320万円は「見舞金」という位置づけで、賠償の趣旨は含まれていない。国の法的責任は明示せず、全面的な補償はまたも置き去りとされた。

背景には旧法により障害者への社会的差別や偏見が助長されるなかで、当事者が訴え出る心理的負担が重かった点がある。約2万5千人が手術を受けたとされる一方、一時金の支給を受けたのは24年7月末時点で1129人にとどまる。今なお家族や周囲にさえ明かせていない人も多いとされる。
「国会は適切に立法裁量権を行使して速やかに補償の措置を講ずることが強く期待される状況にあった」。最高裁は24年7月の判決で、立法府としての役割を果たさない国会や政府への批判を強くにじませた。
最高裁判決を受け、岸田文雄首相は7月、原告らに直接謝罪した。面会で「政府の主張自体が原告の気持ちを傷つけるもので、政府の姿勢が問題の解決を遅らせた」と言及した。旧法成立から76年が経過し、全面補償への道筋がようやく開けた・・・

アメリカ、ニュースはソーシャルメディアから

8月24日の日経新聞オピニオン欄、西村博之・コメンテーターの「米大統領選ミームは毒か薬か」。
・・・秋の米大統領選に向け民主党候補のハリス副大統領が想定外の好スタートを切った。バイデン大統領が劣勢だった激戦州で支持を盛り返し、政治献金も急増する。
背景の一つが、ネット上で話題をさらう画像などのコンテンツ、いわゆる「ミーム」だ。勝ち目のないバイデン氏への絶望の反動もあり、一気に拡散した。
やたら大笑いするハリス氏は、「奇っ怪」と映っていた。だが共和党候補のトランプ前大統領がこれをちゃかし、攻撃用の動画集まで作ると若者らに人気となった。関連コンテンツも多く作られ、親しみと連帯感を生んだ。調子が狂ったのはトランプ氏だ・・・

本論は記事を読んでいただくとして。アメリカ市民のニュースの取得先が、図になって載っています。
2013年と2023年を比べて、テレビは約70%から約50%へ、新聞雑誌など紙媒体は約50%から約20%へ低下し、ソーシャルメディアが約30%から約50%に伸びています。
世代別には、重要な出来事やニュースはソーシャルメディアで知るという人びとの割合で、60歳以上は約20%、44歳から59歳は約50%、28歳から43歳は70%近く、12歳から27歳は80%近くです。

ソーシャルメディアでは、記事は短く、また興味を引く見出しや写真で、深くは考えません。

注目度高い論文数、世界第13位

8月22日の朝日新聞夕刊が「日本の研究力、続く下落傾向 注目度高い論文数、なお最低13位」を伝えていました。

・・・文部科学省は、日本の研究力を示す「科学技術指標2024」を公表した。注目度の高い論文数の国別順位は、過去最低となった昨年と同じ13位だった。博士課程の入学者数が4年ぶりに増加に転じるなど反転の基調も見られるという。
文科省の科学技術・学術政策研究所の報告によると、科学論文の総数(20~22年平均)は昨年と同じく5位だった。一方、「注目度の高い論文」として引用された回数が上位10%に入る論文数(トップ10%)では13位。トップ10%論文数は質の高い研究の指標とされ、日本は過去最高の3位から下落傾向が続く。
総論文数、トップ10%論文数とも、1位は中国、2位は米国だった。総数で3位のインドはトップ10%で昨年より二つ順位を上げて4位に。総数6位の英国はトップ10%で3位につけるなど、論文の総数が多い国は質の高い論文数も多い傾向にあるなか、日本のトップ10%での凋落が目立つ・・・

韓国、スペイン、イランにも負けています。
8月20日の日経新聞も「日本の研究力低迷」として載っています。そこでは、3つの不足をその原因としてあげていました。
予算、多様性、国際協力の3つです。
研究開発費は、2000年と比べ、日本は1.3倍、アメリカは3.4倍、中国は31.2倍、韓国は8.1倍です。

繋がり失われ根なし草、民主主義の危機

8月23日の読売新聞、宇野重規・東大教授の「民主主義って本当は楽しい」から。

・・・世界的な選挙イヤーの今年、大きな変化が起きている。英国では14年ぶりに政権交代し、米国では現職のバイデン氏が大統領選から撤退した。そして、日本では岸田首相が自民党総裁選に不出馬を表明し、来月の総裁選は 混沌こんとん としている。現職の相次ぐ退陣で政治に新しい風は吹くのか。民主主義研究で知られる東京大学の宇野重規教授(57)に聞いた・・・

宇野  大国でなぜ、この2人しか候補者がいないのか。日本でもなかなか清新な政治家が登場せず、民主主義は大丈夫かがテーマでしたね・・・
・・・候補者難の背景には政党の機能不全があります。支持基盤である組織が融解し、政党の顔としてふさわしい候補者を育てる能力、有権者に売り込むプロモーション能力が失われているからです。

――政治不信から、首相が退陣表明した日本も同じ?
宇野  はい。今、自分の 拠よ り所になる組織や団体に所属する人がどれくらいいるでしょう。人との 繋つな がりが失われ、人々は根なし草のようです。それが政治への無関心を広げ、米国の一部では、選挙結果を認めないという民主制への憎悪まで生んでいる。

――宇野さんが研究する仏の政治思想家トクヴィル(1805~59年)は『アメリカのデモクラシー』で、代議制より、自分たちでやれることは自分たちで決め、責任をとる自治の精神を重視しました。彼が今の日本を見たら……。
宇野  民主主義はないと言うかもしれません。地域組織は崩壊寸前。労組加入率も低く、盛んだった小学校の学区単位の活動も衰えている。

――外で遊ぶ子どもの声がうるさいとされる時代です。
宇野  結婚し、子を持つ家庭は勝ち組として反感の対象にすらなる。しかも、どの組織でも非正規の比率が高くなり、帰属意識が低い。これは東大などの大学も同じです。
「あなたの声で社会を変えよう」と言われ、何年かに1度投票しても、選挙が終われば忘れられる。それでは民主主義に失望するはずです。

――読売新聞の7月の世論調査では無党派層が54%と半数以上になっています。
宇野  しがらみのない社会こそ個人の自由と思われてきたのに、気がついてみたら社会から孤立した人ばかり。