カテゴリーアーカイブ:政治の役割

OECD「日本は消費税18%まで引き上げを」

2026年5月27日   岡本全勝

5月14日の日経新聞に「OECD「消費税18%まで段階引き上げを」 高齢化対応促す」が載っていました。このような提言を、日本政府と国会は無視し続けるのでしょうか。後世の人は、どのような評価をするでしょうか。

・・・経済協力開発機構(OECD)は13日公表した対日経済審査報告で消費税率の段階的引き上げを提言した。最大18%とする試算も例示し、少子高齢化に対応する財源の確保を促した。

OECDのコーマン事務総長は13日の日本記者クラブでの記者会見で「引き上げは全体の租税負担を増やさずに可能だ。ターゲットを絞って低所得層を支援し、消費税による歳入を経済成長につなげる必要がある。財政も持続可能になる」と訴えた。
日本は消費税率を19年に10%に上げたまま据え置いている。OECD加盟国でも低水準にとどまる。

対日審査は隔年で、前回24年も消費税の引き上げを提起していた。動きがないことから、改めて対応が必要と訴えた。税率を年1%ずつ上げて18%にした場合、財政収支が国内総生産(GDP)比で3%程度改善する可能性があるとの試算も添えた。
消費税は社会保障を支える財源として有力と位置づけた。世代間で負担を公平に分担できるほか、財源としての安定性も大きい。貯蓄、投資といった経済行動をゆがめにくい利点もある。
税率を上げれば税収が増える。低所得世帯に絞った給付などの再分配策に充てるべきだと提言した。

高市早苗首相は物価高対策で食料品の消費税率を時限的にゼロにする方針を掲げ、超党派の社会保障国民会議で検討を進めている。コーマン氏は「荒っぽい対応だ。高所得者の方が恩恵が大きくなる」と否定的な考えを示した。
日本は債務残高のGDP比が200%を超え、主要先進国で突出して高い。「中期的に財政を持続可能にする難題に直面している」と強調した。

首相は「責任ある積極財政」を看板として、財政規律に目配りする姿勢をアピールする。市場は財政拡張が成長につながらず、債務だけが増大するリスクを懸念する。
足元で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは1997年以来約29年ぶりの高水準で推移している。13日は一時2.6%まで上昇した。高市政権が発足した2025年10月当時の1.6%台から1%近く高くなっている。
金利が上昇すれば借り換えコストが増し、債務の膨張圧力となる。「公的債務を低下軌道に乗せることを最優先課題とすべきだ」と指摘した。消費増税などによる歳入確保や歳出改革に加え、中長期的な財政再建の道筋を描くよう求めた。
財政健全化の指標として基礎的財政収支の早期の黒字化に言及した。補正予算については「大規模な経済ショック時に限定すべきだ」とクギを刺した。生産性を高めたり労働供給を増やしたりする構造改革も必要だと唱えた・・・

コロナ特例貸付、45%が返済免除

2026年5月26日   岡本全勝

5月12日の朝日新聞に「コロナ特例貸付、45%が返済免除 計6千億円超 生活再建進まず」が載っていました。

・・・コロナ禍で収入が減少した世帯が利用した「コロナ特例貸付」で、貸し出された総額1兆4431億円の45%にあたる6540億円余が「返済免除」となったことが厚生労働省への取材でわかった。コロナ禍後の物価上昇によって、利用世帯の多くが依然として生活再建に苦しんでいるためとみられる。

コロナ特例貸付は、都道府県の社会福祉協議会が低所得世帯を主な対象として実施している「生活福祉資金貸付」の特例制度。原資は国の補助金で、コロナ禍で収入が減ったと申告した世帯が最大200万円まで借りられた。2020年3月~22年9月に計382万件の利用があった。
返済の時点で住民税が非課税だったり生活保護を受給したりしていると返済が免除される仕組みで、厚労省によると、25年末時点で返済免除は6540億円、生活が苦しい場合に返済を原則1年遅らせられる「猶予」は301億円、猶予の手続きをしていない「遅滞」は1715億円だった。
返済があったのは1323億円で、残る4552億円は返済時期が到来していないという。

全国社会福祉協議会(全社協)がまとめた報告書によると、利用世帯の月収は中央値が15万~16万円程度。コロナ禍前は6割以上の世帯が月収20万円以上だったが、借入時には9割近い世帯が20万円未満に落ち込んでいたという・・・

過疎問題にみる産業政策

2026年5月25日   岡本全勝

東日本大震災の復興に携わってわかったことの一つに、人は産業となりわいがないと暮らしていけないということです。それは、商業などのサービスの必要と、働く場の必要です。その観点から見ると、かつての過疎対策は、少し視点がずれていました。
都会並みの道路や上下水道などの整備に力を入れました。それらも必要だったのですが、働く場のない、買い物の場のない所には、人は住み続けることができません。兼業農家か、近くの働く場所に通うか、それがないと農山村では集落は維持できません。行政サービスの充実も、働く場所があり、住民が住み続けることがあってのことです。

産業構造の変化は、農山村での生活を終わらせました。では、対策はあったのでしょうか。私は、日本の国土政策(過疎過密対策)には、大まかに言って、次のような選択肢があったと思います。
1 東京一極集中(+政令指定都市が生き残る)。これは地方分散政策を行わない場合の道筋ですが、現在の状況はこれに近くなっています。
2 全国各地の集落が存在し続ける。これまでの地方振興政策はこれを目指したようですが、無理なようです。
3 1と2の中間。全国で、県庁所在都市や中核的都市を生き残らせ、そこから遠い集落はここに集約する。

過疎対策の次に取られたのが、地域活性化政策です。その走りは、一村一品運動でしょう。全国各地で、地域を活性化する取り組みです。自治省・総務省も地方制度を所管するだけではすまなくなり(住民がいなくなると自治制度自体が不要になります)、取り組むようになりました。安倍政権でも、地方創生に取り組むことになりました。
地域おこしでは、いくつかの成功事例があるのですが、全国展開にはなっていません。移住も成功している例があるのですが、残念ながら地方の人口を増やす、あるいは減少を止めるほどではありません。
1を止める、2では難しいとなると、3が選択肢だと思います。そして、その肝は産業政策です。

利上げ臆病な日本

2026年5月11日   岡本全勝

4月20日の朝日新聞オピニオン欄、原真人・編集委員の「長引く戦争と経済危機 利上げ臆病な日本、持続可能な財政を」から。詳しくは記事を読んでいただくとして。
・・・持続可能な財政の大前提として、世界では税や社会保険料などの「国民負担」と、年金や医療、介護や子育てへの「社会保障給付」の水準のバランスをとろうと努めている。例えばフランスのように「高福祉高負担」の国もあれば、米国のような「低福祉低負担」の国もある。
日本はと言えば、社会保障を一定レベルに保ちつつ国民負担を低く抑える「中福祉低負担」路線を続けてきた。そんな都合が良すぎる政策を永遠に続けられる「魔法の杖」は存在しない。迫り来る世界的な危機の嵐を、この無責任な財政のままで乗り切れるはずがないと肝に銘じるべきだろう・・・

・・・巨大地震や感染症のパンデミックなど重大危機はいつでも起きうる。「Xデー」が来れば想定外の巨大支出を迫られるかもしれない。もし財政余力が乏しいままでその時を迎えたら、政府は十分に機能を果たせず、最も弱い立場の人々の生命や生活を守ることさえできなくなる恐れもある。
何より深刻なのは、将来の危機が懸念されているのに政権や与野党が手をこまねいていることだ。財政再建は有権者に不人気なテーマだが、国政に携わる者なら必ず挑まねばならない課題である。

先日、政府の経済財政諮問会議が世界的に著名な米国の経済学者2人を招いた。会議は高市政権が掲げる「責任ある積極財政」を理論的に支える立場で、メンバーに積極財政と金融緩和を志向する「リフレ派」が陣取っている。会議事務局は当初、高市政権が描いている路線に著名学者たちのお墨付きを得ようともくろんでいたようだ。国債の追加発行も辞さず、危機管理投資を増やし、経済成長によって税収を増やす。そんな「お手盛り」構想である。
ところが2人の学者が発したのは甘い構想への苦い忠告だった。
ブランシャール・マサチューセッツ工科大名誉教授は「危機管理投資は重要だが明確な財政的収益が見込めない。成長を押し上げるかもしれないし、そうでないかもしれない。それだけを根拠に国債を財源とすることを正当化できない」とクギを刺した。
ロゴフ・ハーバード大教授は政権への注文を聞かれ、「制度面で一つだけ選ぶとすれば中央銀行の独立性が尊重されること」と述べた。日銀に超金融緩和を継続させようと圧力をかけてきたリフレ派にとっては耳が痛い指摘だ。
泰斗たちの提言を待つまでもなく、財政をまともな水準に回復させることは今の日本にとって最大の、そして最低限の課題である・・・
参考「消費税ゼロ、経営者「反対」66%

「憲法を守れ」が行き着く先

2026年5月3日   岡本全勝

今日は憲法記念日です。で、それに関することを。
憲法は、国の最高法規であり、それは尊重されなければなりません。
第九十九条は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と規定しています。

それはそうなのですが、日本国憲法の現状と国民の一部にある意識を考えると、憲法尊重の行きすぎは問題を生んでいます。明治憲法が「不磨の大典」であったように、昭和憲法も「神格化」されています。改正されないので、日本国憲法は世界で一番古い憲法になっています。

「憲法を守れ」を主張する人には、憲法改正を認めない人もいるようです。ところが、時代とともに状況変化します。例えば、前文にある次の文章は有名です。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」
この条文は理想的で、素晴らしいものだと思います。しかし、2026年の現在に憲法を制定するなら、このような内容を規定するでしょうか。突然戦争を始めるロシアやアメリカ、軍備を増強し周辺地域を脅かす中国や北朝鮮。そのような国際環境の中で、「各国を信頼して軍隊を持ちません」というのは、国民の多くは納得しないでしょう。

「日本国憲法は他国に比べ条文が少なく、改正しなくても運用できる」という考えもあります。それは実態を反映しているのですが、それがあるべき姿でしょうか。社会保障制度や新しい人権(プライバシー権、知る権利、自己決定権、環境権など)は、1946年当時に比べ大きく変化しました。解釈で切り抜けるというのは、「憲法はなくても同じ」ということになります。
憲法の神格化は、憲法を機能させず解釈に頼り、憲法自体は神棚に飾っておくことになります。「憲法を守れ」という考えは、かえって憲法の価値をおとしめている結果になっていないでしょうか。