カテゴリーアーカイブ:政治の役割

各国政治、20世紀と21世紀の違い

2026年1月29日   岡本全勝

1月8日の日経新聞経済教室、水島治郎・千葉大学教授の「21世紀型の政党政治は「改革中道」がカギに」から。

・・・まず指摘すべきは近年、「与党の敗北」現象が各国で相次いでいることだ・・・この世界的な状況の背景にあるのが、ウクライナ戦争や異常気象などを原因としたエネルギー・食料価格上昇、さらには家賃などの上昇である。庶民の生活苦が広がるなか、インフレに無策な政権与党に批判の矛先が向かった。日本の選挙における連立与党の敗北もその延長線上にある。
しかし、それではウクライナ戦争が終結しインフレが解決すれば、各国で与党は安定的な支持を回復できるのか。そうではない。政党政治の変容の背後には、より構造的な変動がある。

20世紀の各国政治は端的に言えば「組織・団体に支えられた政治」だった。欧米では二大政党の屋台骨は教会と労働組合だった。中道右派政党は教会など宗教団体のほか、地縁団体・業界団体・農業団体を支持基盤とし、中道左派政党は主に労組に支持された。
これらの団体は政党を選挙で支援し、政治資金を投入し、組織内議員を送りこんだ。それに対し政党側は団体の要望を受け付け、政策実現に手を貸した。政党自体も党組織を強化し、社会に根を張った。政党を組織・団体が継続的に支えることで、20世紀の政党は安定的に議席を確保し、存在感を発揮できたのである。

しかし21世紀の今、こうした団体政治に昔日の面影はない。労組や農業団体、業界団体や宗教団体は軒並み弱体化し、政党の組織そのものも揺らいでいる。
日本でも組織・団体依存の強い共産党や公明党、そして自民党の不振が目立つ。全国に党組織を張り巡らせてきた共産党は党員の減少と高齢化が顕著で、衆院議席数でれいわ新選組の後塵を拝す結果となった。公明党も選挙区で落選者を複数出している。自民党も業界団体、農業団体など系列団体の動きが鈍くなり、党員数は100万人を割り込み、組織票を固めても選挙に勝つことができなくなっている。
従来の組織・団体頼みの政治が有効性を失う中、既成政治そのものを「既得権益」と同一視して批判し、「人民」の声を代弁するとして改革を主張する、ポピュリズム的手法が各国で活発化している。組織・団体離れが進み、所属団体や支持政党を持たない層が増加するなかで、ポピュリスト政治家の主張は既成政治に違和感をもつ人々の意識に訴えるものがある・・・

・・・ただ、各国政治の変化を単に左右への分極化とみるだけでは不十分だ。25年10月のオランダ総選挙で第2党の右派ポピュリスト政党に競り勝ち、初めて第1党の座を射止めた政党は、開明的な無党派市民層に支持される「改革中道」政党だった。既存の中道右派・中道左派のいずれも支持できず、急進派にも共鳴できない有権者は潜在的にはかなり多いのではないか。
この改革中道支持の動きは、近年の日本における国民民主党の人気の背景を考えるうえでも、重要な手がかりとなるだろう。
以上をまとめると、日本を含む各国の政党政治は、中道右派・中道左派の2大勢力が対峙する20世紀型の構造から、左右の急進派と改革中道が台頭し、5大勢力が対抗する21世紀型の乱戦模様へと転換しつつあるといえる・・・

食品減税は物価に効かず

2026年1月28日   岡本全勝

1月27日の日経新聞に、23日から25日にかけて実施した世論調査結果が出ていました。

・・・日本経済新聞社とテレビ東京は23~25日に世論調査を実施した。高市早苗内閣の支持率は67%と2025年12月の前回調査の75%から8ポイント低下した。内閣を「支持しない」は26%で、前回の18%から8ポイント上昇した。10月の内閣発足後、初めて内閣支持率が7割を割った。

自民党と日本維新の会の連立与党、立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」などは衆院選(27日公示・2月8日投開票)で食料品の消費税率ゼロの検討や実現を公約に掲げる。物価高の緩和を狙う。
今回の調査で、食料品の消費税率ゼロが物価高対策として「効果があるとは思わない」との回答が56%を占めた。「効果があると思う」の38%を上回った。
消費税のあり方に関して「財源を確保するために税率を維持するべきだ」と「赤字国債を発行してでも税率を下げるべきだ」のどちらに考え方が近いか聞いた。維持が59%と多数で、減税は31%にとどまった・・・

国民はわかっていますね。
他社も世論調査を実施しています。消費税減税を問う項目もあり、賛成が多い結果もあります。しかし、財源を合わせて聞かないと、無責任な調査と結果になります。誰でも、税金は少ない方がうれしいのですから。でも、社会保障にしろ教育にしろ、政府の支出には財源が必要です。
「行政改革で生み出す」という政治家もいますが、30年近く行政改革を続けていて、まだ大きな無駄があるのでしょうか。具体的に項目を挙げてほしいものです。

政党中心に政策を語れ

2026年1月13日   岡本全勝

2025年11月6日の朝日新聞オピニオン欄「政権交代論のいま」、飯尾潤教授の「政党中心で政策語れ、改革は未完」から。(紹介が今ごろになって、すみません。まだほかにも溜まっています)

―その政権交代の可能性を生み出すには二大政党制が不可欠なのですか。
「そうではありません。選挙による政権交代とは、有権者の投票で新たに信任を得た政党、もしくは政党連合が誕生することです。二大政党制のもとでの政権交代がある一方、多党制のもとでの『2大陣営』型の政権交代もあります」
「後者では、複数の野党が選挙前に連合を作って与党陣営と競い合います。事前に統一公約と首相候補者を決めたうえで選挙に臨めば、有権者は政策と政権と首相を同時に選べます」

―政治改革は二大政党制を目指すものだったという話をよく聞きますが。
「政治改革で衆院に導入されたのは、純粋な小選挙区制ではなく、比例代表制を組み合わせた制度でした。つまり当初から、小政党がなくなるようには設計されていなかったのです。二大政党制ではなく、2大陣営型による競争の方に適した制度と見るべきです」

―政治改革の目標は達成されたのでしょうか。
「政治家中心の政治を終わらせて政党中心の政治にすることが改革の狙いでした。政党中心になることで政策本位の政治が実現していくと考えていました」
「政党中心の利点は、体系立った政策を論じやすくなることです。個々の政治家の言う政策をただ束ねるだけでは、幅広い有権者をまとめうる政策、政権を取れる政策にはなりません」
「しかし政治は今も政治家中心のままであり、政策本位の政治を目指した政治改革は未完のままです」

政府が多文化共生に責任を

2026年1月3日   岡本全勝

12月17日の朝日新聞オピニオン欄に、鈴木康友・静岡県知事の「外国籍住民とともに 395万人の生活者 国が一元化すべき 地域での社会統合」が載っていました。詳しくは記事をお読みください。

・・・外国人の入国、在留の管理をより厳格にする検討を、政府が進めている。静岡県知事の鈴木康友さんは、全国知事会が今年、多文化共生社会の実現に責任をもって取り組むよう政府に求めた提言の取りまとめ役を務めた。日系ブラジル人住民が多い浜松市長も経て直面した、地域社会の切実な課題とは何か・・・

――全国知事会はなぜ、このような提言をしたのですか。
「今年6月末現在、395万人もの外国人が日本で暮らしています。それなのに、国はその存在をもっぱら労働力としてしか見ておらず、生活者である、という視点を欠いてきました」「労働力が足りなければ入れればいい、という程度の認識かもしれませんが、この方たちはロボットではなく血の通った人間です」
「政府は『移民政策はとらない』という一方、技能実習制度や留学生によるアルバイトなどで労働力を確保する、ダブルスタンダードを続けています。あいまいなまま受け入れ、実際の対応は、地域に『丸投げ』の状態でした」
「国が受け入れについて明確な方針を作り、国と地方、それぞれの役割を規定すべきだと考えています」

――浜松市は2001年に外国籍住民が多い他の自治体に呼びかけて「外国人集住都市会議」を設立し、鈴木さんは市長として国に政策提言を重ねていました。
「自治体にとって、外国人はそこに暮らす生活者であり、向き合わざるをえない存在です。日本語教育や生活支援、子どもの教育といった課題は、受け入れ自治体に任せられてきました」「文化の違いからくる生活習慣の違いなど、さまざまな課題がありますが、とりわけコミュニケーションの問題が大きい。日本で生きていくには、生活全般で日本語が必要になります」
「これに直面したのは、浜松市長だった2008年のリーマン・ショックのときでした。多くの日系ブラジル人が雇い止めにあいました。製造業の現場では、仕事さえ覚えればコミュニケーションはさほど必要なかったのですが、いざ転職を迫られたときに障害になったのが、日本語ができないということでした」「そこで、浜松市と合併した旧町の庁舎に外国人向けの学習支援センターをつくりました。今でもその施設は活動を続けています」

――家族で在留している人たちもいますね。
「併せて、子どもたちの教育にも力を入れました。しっかり教育を受けてもらわないと、成人してから日本での独り立ちが難しく、就職などで苦労があります」「市の予算でポルトガル語やスペイン語の分かる支援員を学校に派遣しました。今もNPOなどと協力して続けています」
「就学していない子どもを追跡調査して、教育を受けてもらうことにも努めました。外国人には『教育を受ける権利』はあっても、『教育を受けさせる義務』は課されていない。親が勝手に学校に行かせないと判断してしまったり、日本語が分からず授業についていけずに不登校になったりと、さまざまな事情がありました。細やかな対応が求められます」

――国に求める役割とは、どんなことですか。
「知事会の提言では、日本人と外国人が共生する施策の根幹となる基本法を作ること、外国人施策を一元的に進める、たとえば『外国人庁』のような組織を作り、しっかり予算を確保してください、と求めています」

再び巡り来た「積極財政」

2025年12月30日   岡本全勝

2025年12月20日の朝日新聞、原真人・編集委員の「再び巡り来た「積極財政」 歴史は忘却とともに過ちを繰り返すのか」から。

・・・歴史は繰り返す、とはよく言ったものだ。より正確に言えば、歴史は忘却とともに何度も過ちを繰り返す、か。
高市早苗政権の財政出動を積極財政派のエコノミストたちがはやしている様子を見ていると、いつか見た光景と危なっかしい気分がよみがえってくる。
過去にも政府は経済低迷を積極財政で打開しようとしたことがたびたびあった。バブル崩壊後の1990年代初頭から10年余の間に、公共事業を軸に総計150兆円超の経済対策を講じた時代だ。
当時は、内容より規模が重視された。「過去最大」が連発され、その後、巨額の国債残高が積み上がる契機になった。
問題はそれで日本経済が元気にならなかったことだった。いつしか経済専門家たちからは費用対効果が悪い財政出動はやめた方がいいという声が高まった。
次に期待されたのが金融政策だ。政府は日本銀行に緩和を求め圧力をかけた。日銀は世界初のゼロ金利や量的緩和という常識破りの政策に踏み出して応じた。それでも低体温経済は変わらなかった。
そして再びバトンは財政に戻る。リーマン・ショックが2008年に起きると政府は財政をふかした。80兆円規模だった一般会計予算は補正予算編成で100兆円超に膨らんだ。経済停滞は続いた。

こんどこそ停滞を脱してみせると2012年末に登場したのが第2次安倍政権のアベノミクスだった。大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略の「3本の矢」を掲げたが、実態は「第1の矢」つまり日銀による異次元緩和頼みだった。日銀が国債を事実上買い支え、株式市場を下支えして資産効果を狙った。
そのころ、経済官庁の元事務次官が言った。「アベノミクスが誤っていたと気づくには何年もかかるだろうね」と。
政策の効果や影響は長期間たたないとなかなか判明しない。失敗と分かったころには責任者が誰だったか、どんな経緯で始めたかなど、みな忘れてしまう。時間の経過で「当時と環境が変わった」という言い訳も成り立つ。
「だから政治家というのは政策責任を取ったことがないんだよ」
長年、政治家とつきあってきた練達の元次官はそう言って、ため息をついた・・・
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