読売新聞7月1日夕刊に、「若者の自立援助ホーム。孤立させず、退去後が肝心」が載っていました。自立援助ホームは、その記事によれば、義務教育を終えた20歳未満の若者が、食事などの生活援助や就職の支援を受けたりしながら、自立を目指して共同生活をする場です。児童養護施設は18歳までに退所させられるので、その受け皿となっています。親が養育を拒否したり虐待を受けて、養護施設に入りますが、学校を終えると独り立ちが求められます。しかし、未成年の若者が家族無しで独り立ちすることは、極めて困難です。
この記事では、自立援助ホームで、社会経験を積んだり、さまざまな相談に乗ってくれること、そしてホームを出た後も相談に乗ることが重要だと指摘しています。この、自立援助ホームも、民間の努力で成り立っているようです。
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行政-再チャレンジ
親が子どもを育てられない場合
今日、6月17日の読売新聞1面は、「子供置き去り483人、餓死寸前も。過去3年」でした。読売新聞の独自の調査です。実際には、もっと多いのでしょう。親に放置され、餓死したり、衰弱死した幼児のニュースが、後を絶ちません。その子の立場になったら・・。かわいそうでなりません。
親にはそれぞれの理由があるのでしょうが、許せないことです。しかし、彼らを叱ったところで、事態は好転しません。それだけの能力と意欲のない親を教育するか、社会が子どもを引き受ける必要があります。
どうしても育てられない親には、「役場に相談すれば、助言をもらえたり、子どもを引き取ってもらえますよ」ということを教えるのです。今も、一人で悩んでいるお母さんやお父さんがたくさんいるのでしょう。それは、老親の介護も同様です。でも、学校では、困ったときに役所が助けることを、教えていません。それは、事故を起こしたときや病気になったときも同じです。「家庭で学ぶこと」なのです。
かつては、家族で面倒を見切れない場合は、親族や隣近所が手伝いました。その機能が低下しました。もちろん、昔も両親に捨てられた子どももたくさんいたのです。役所が救えず、救わず、悲しい結果になった場合も多かったのです。
落ちこぼれることや事故に遭うこと、病気になることは、誰にでもあるリスクです。よい子を育てることは必要ですが、それから漏れ落ちても安心して暮らしていくことができるように、社会を複線型に変える必要があるのです。拙著『新地方自治入門」』では、『あなた自身の社会―スウェーデンの中学教科書』(邦訳1997年)を紹介しました(p175)。これは、勉強になり、考えさせられます。明治以来の日本は、よい子を育てる教育では、大成功をしました。しかし、落ちこぼれた場合の教育は、不十分なようです。
コミュニティ・ソーシャルワーカー
朝日新聞6月18日オピニオン欄、「地域のチカラ」大阪府豊中市で住民の問題解決に取り組む勝部麗子さんへのインタビューで、コミュニティ・ソーシャルワーカーが紹介されています。
聞き慣れない言葉で、ご存じない方も多いでしょう。記事では、「地域福祉を進めるためにつくられた大阪発の専門職。大阪府が2003年に策定した「地域福祉支援計画」に盛り込まれ、2004年度から府の補助で、府内の自治体が中学校区に1人ずつをめどに配置できるようになった。豊中市の場合、市社会福祉協議会に事業が委託されており、現在は14人が配置されている。住民と協働で「制度のはざま」にある人たちを発見し、その解決をめざす。行政と住民をつなぐ役割も担う。とほぼ同じ役割を担う専門職を「地域福祉コーディネーター」と呼んでいる自治体もある・・」と解説されています。町内会の世話役、民生委員さんなどの仕事が近いでしょう。
「コミュニティーソーシャルワーカー」というのは聞き慣れない言葉です。「ソーシャルワーカー」と何が違うのですかとの問に。
・・福祉には、介護保険や生活保護など法律や制度に基づくいろいろなサービスがあります。しかし、どれにもあてはまらず、網の目からこぼれてしまう問題があります。「制度のはざま」と呼ばれ、話題になっている認知症の方の徘徊による行方不明やごみ屋敷、引きこもり、孤独死などがこれに当たります。役所に相談しても、担当する課もありません。だからSOSも出せず、苦しんでいる。そんな人たちをコミュニティー(地域)の住民と一緒に発見し支えていくのが私たちの仕事です・・
・・1995年の阪神淡路大震災がきっかけです。豊中市でも死者11人、全半壊4922棟の被害が出ました。ほとんどの福祉委員会は何も対応できませんでしたが、見守り活動をはじめていたいくつかの校区は、独り暮らしの高齢者の安否確認や救助が素早くできました。支援の必要な人が地域のどこにいるか、住民が知っていたからです。いざというときに命を守るには、こうしたやり方を広げるしかないと思い、震災の翌年から働きかけを始めました・・
・・最初のころは「福祉は行政の仕事だ」とか「素人に相談を受けさせるのか」とか言われました。しかし、震災の体験から「地域のつながりは大切だ」と思う人もいて、徐々に共感が広がりました。全ての校区が主体的に動き出すには、それでも5年かかりました・・
ぜひ原文をお読みください。
性同一性障害の子ども
各紙が取り上げていましたが、文科省の調査で、小中高校1,400万人のうち、性同一性障害の子どもが600人いることがわかりました。そのうち約6割の学校では、服装、トイレ、更衣室、水泳などの際に、配慮をしているようです。
かつては認知されなかった「悩み」が、理解されるようになりました。しかし、対応する側も経験がないので、苦慮しているようです。
子どもに限っても、いじめ、虐待、貧困、食物アレルギー、日本語が不自由な(外国からの)子どもなど、新しい課題が生まれています。学校現場だけでなく、社会人に対しても、系統だった学習や教育が必要だと思います。
新しい社会のリスク、認知症の行方不明者
認知症の高齢者が行方不明になったり、遠くで保護される例が報道されています。今日の読売新聞夕刊によると、警察が把握した認知症の行方不明者は、昨年1年間で1万3千人だそうです。1週間以内に見つかった人は、約1万人。1~2年後に発見されたのは11人、2年過ぎて見つかった人も32人いました。発見時に生きていた人は9千5百人で、約400人は死亡していました。前年分も含めると、所在のわからない人は258人だそうです。これは警察が把握している数ですから、実際にはもっと多いのでしょう。
私は、2003年に『新地方自治入門-行政の現在と未来』を書いたときに、地域の新しい問題群、住民の悩みとして、児童虐待や自殺者、ホームレスなどを上げました(第6章)。その後、自殺者は少し減りました。児童虐待は、さらに大きな問題になっています。そして、認知症の増加と行方不明やいじめが、次の大きな課題となっています。