7月29日のNHKニュースが、「生活困窮者自立支援 相談の3割が働き盛り男性」を伝えていました。それによると、
・・・生活に困った人を支援するため、生活保護を受ける前の段階で自立につなげようと、ことし4月にスタートした「生活困窮者自立支援制度」について、NHKが全国の自治体を対象にこの3か月の実施状況を聞いたところ、自治体の窓口には合わせて5万5000人の相談が寄せられ、このうち3割が30代から50代の働き盛りの男性に関するものだったことが分かりました・・・
・・・相談の内容は、複数回答で、「収入や生活費」が全体の27%を占めて最も多く、次いで「仕事探しや就職」が16%、「病気や健康、障害」が13%などとなっています。また相談者の性別と年代を見ると、30代から50代の男性が合わせて全体の34%を占め、働き盛りの世代で生活に行き詰まっている実態が見えてきました・・・
戦後日本では、家族や親族による保護、地域での助け合い、会社での支援、そして生活保護によって、困窮者を救ってきました。しかし、それだけでは不十分なことが、この20年ほどの間に明確になってきました。高齢者については、年金や介護保険を充実してきたのですが、所得格差、子どもの貧困、非正規雇用、引きこもり、落ちこぼれなど、苦しんでいる人が「発見」されたのです。現在の日本社会の重要課題の一つでしょう。
第1次安倍政権では、再チャレンジ政策が掲げられました(官邸のHP、私のHP)。麻生政権では、「安心社会の実現」が提唱されました。「生活困窮者の支援制度」も、これらの問題への対応です。生活保護を受ける前の、安全網です。学生についても、同様の課題があります。学校を中退すると「困ったことに対応してくれる窓口や組織」がありません。非行を起こすと警察のお世話になりますが、その中間がないのです。「通常生活」と「行政によるお世話になる」の中間に、「自立を支援する」仕組みが必要なのです。
課題は明確になっています。そして、これまでの制度や組織では対応できないことも、わかっています。では、どのように、政府の政策さらには責任組織を再編成するか。ここに、政治と行政の力量が問われます。
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行政-再チャレンジ
犯罪。加害者を罰するだけでは、救われない
日経新聞日曜の連載「戦後70年 事件は問う」2月15日は「三菱重工爆破事件(1974年)。被害者に関心、支援の一歩。給付金から心のケアへ」でした。
新左翼によるテロで、多くの人が死傷しました。たまたま通りかかっただけの人が被害を受けたのです。従来の刑法や民法では、加害者に損害賠償を求めるのですが、加害者が見つからなかったり能力がないと、被害者は「運が悪かった」となってしまいます。被害者を救おうと、1980年に犯罪被害者に給付金を支給する法律ができました。次の転機が、1990年代です。被害者を精神的に救う施策がないことが指摘され、警察庁が取り組み始めます。そして、2005年には犯罪被害者等基本法ができました。その後も、対策は拡充されています。
加害者を罰するとか、被害を賠償させるだけでは、被害者は救われないのです。歴史的な大きな政策転換だと思います。詳しくは、原文をお読みください。
世界のリスク、経済から軍事へ
ダボス会議を主催している「世界経済フォーラム」が、毎年、世界のリスクを評価して発表しています(Global Risks Report)。近年は経済的なリスクが上位を占めていたのですが、今年はがらっと変わって、戦争や国家統治の失敗が上位に来ています(1月31日読売新聞解説スペシャル「ダボス会議2015」)。
昨年は、1位深刻な所得格差、2位異常気象、3位構造的失業と不完全雇用、4位気候変動への対応失敗、5位大規模サイバー攻撃。今年は、1位国家間紛争、2位異常気象、3位国家統治の失敗、4位国家の崩壊・危機、5位構造的失業と不完全雇用です。
・・As the report’s 10th anniversary approaches, the evolution of the perceived top five global risks can be viewed in terms of impact and likelihood as documented in the Global Risks reports from 2007 to 2015. As Table 1.1.1 shows, economic risks largely dominated from 2007 to 2014, with the risk of an asset-price collapse heading the list in the run-up to the financial crisis, giving way to concerns about the more immediate but slow-burning consequences of constrained fiscal finances, a major systemic financial failure in the immediate post-crisis years, and income disparity. This year features a radical departure from the past decade; for the first time in the report’s history, economic risks feature only marginally in the top five. In the 25th year after the fall of the Berlin Wall, geopolitical risks are back on the agenda・・.
女子高生、スマホ中毒
2月10日の朝日新聞夕刊に、子どもたちのスマホや携帯の利用状況が載っていました。ある会社の調査です。それによると、1日の平均使用時間は、男子中学生1.9時間、女子中学生1.8時間、男子高校生が4.1時間です。しかし、女子高校生は7.0時間です。1日9時間以上が3割、15時間以上が1割います。ほぼ1日中、スマホに没頭しているということですね。中毒でしょうか。
私が親だったり、教師だと、どのように指導すればよいのか。難しいですね。便利な機器が生む、新しいリスクです。かつてこのページで、「ハイテク企業のトップは、子どもにスマホを使わせない」ことを紹介しました(2014年10月13日の記事)。
ワーク・ライフ・バランスの実践
大学時代からの友人である、村上文・帝京大学教授が、『ワーク・ライフ・バランスのすすめ』(2014年、法律文化社)を出版されました。月刊誌に連載したものを基にしているので、各回ごとが読みやすく、また現場での実例がたくさん出ていて、わかりやすいです。どうしたら、残業を減らすことができるか、子育てママが働くことができるか。そして、仕事の業績を上げることができるか。
かつては、「夫は仕事、妻は家庭」が世間常識でした。しかし、これはある時代の、また夫が勤め人である場合の「典型例」でしかなかったのです。農家や自営業の家では、そんなことはありませんでした。我が身を振り返って、これを極端に実行してきたことを反省しています。それを疑うことなく、「企業戦士」を善と思っていました。娘が働き、結婚し、そして子供を育てているのを見ると、子育て、働く妻、働くママは、いかに大変かがわかります。
ただし、私も職場では、ある時期に考え方を変え、職員になるべく楽をさせること、残業をさせないことを、心がけてきました。部下の長時間労働は上司の責任だと、私は考えています。もちろん、突発事案などで、残業をお願いすることもあります。しかし、平時に残業が通例になっているのは、何かがおかしいのです。
ところで、「ワーク・ライフ・バランス」って、よい日本語はありませんかね。明治時代の人なら、何かよい訳語を考えたと思うのですが。
これに関連して。1月5日の日経新聞が「働きかたNext」という特集を組んでいました。アンケートによると、経営者が考えている働き方改革の重要テーマは、「長時間労働の削減」、「女性社員の採用・管理職への登用」、「休暇の取りやすい仕組み・環境作り」です。従業員の方は、「時短勤務や休暇を取得しやすいこと」が一番です。
「デュアル日経」の記事によると、「日本の長時間労働の最も大きな原因はなんだと思いますか?」という問への答えは、次の通りです。1位、時間当たりの生産性を意識しない人事・評価制度 47%。2位、残業しなければ片付かないほどの限界を超えた仕事量 19%。3位、早く帰りにくい職場の雰囲気 17%。ちなみに「デュアル日経」は、働くママ&パパに役立つノウハウ情報サイトだそうです。