カテゴリーアーカイブ:再チャレンジ

利用しにくい病児保育

2026年4月8日   岡本全勝

3月17日の日経新聞に「子が急病、働く親の苦悩なお 「病児保育」手続き煩雑で利用1割どまり」が載っていました。まだまだ共働き家庭の子育ては大変です。私も、娘夫婦の孫を見て、病児保育を知りました。

・・・働く人が病気の子を一時的に預ける病児保育が国の少子化対策「エンゼルプラン」で重点施策に位置付けられ約30年。制度の使いにくさや施設数の偏在などを背景に、ある調査では利用経験を持つ保護者の割合は約1割にとどまった。看病で仕事を休む看護休暇の整備も欧州などに比べ後れている。働く親を支える仕組みづくりは道半ばだ。

・・・三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2023年度の調査では、保護者2000人のうち、子の病気で対応に困ったことがあると答えた割合は47%に上った。一方、病児保育の利用経験があるとの回答は13%にとどまった。
背景には、手続きの煩雑さや予約の取りづらさがある・・・
・・・病児保育は1960年代に民間施設で始まったとされる。共働きの増加や核家族化が進み、95年度に始まったエンゼルプランに重点施策として盛り込まれた。
国や自治体の補助対象の施設は2023年度で約4300カ所。過半は保育所などで体調の悪化した子を親の迎えまで預かる施設だ。翌日なども症状が続く子を預かる施設は3割にとどまる。
施設数の地域差も大きい。リベルタス・コンサルティングの24年度調査で一定基準の病児保育施設がない自治体は4割に上った。
同調査では56%の施設が赤字と回答。全国病児保育協議会の杉野茂人会長は「当日のキャンセル率は大半の施設で約5割と高く、事業者の持ち出しで何とか成り立っている」とみる。行政の補助金は定員でなく利用実績に応じ加算される。利用者が少なくても職員は必要なため、人件費が膨らむ・・・

・・・専門家などによると、施設に子を預ける病児保育は日本特有のものとされる。欧州は保護者が家で看病すべきだとの考え方が強い。各国は有給の看護休暇を整備し、子育てと仕事の両立を支援する。
スウェーデンは1970年代に子の看護休暇を導入した。病気で1人年最大120日を付与し、全取得日数に占める男性の割合(2025年)も約4割と高い。アプリから簡単に申請可能で、祖父母や友人に日数を譲渡できる。財源は主に社会保険料として雇用主に負担を求めるのが特徴だ。
ドイツは12歳未満の子1人あたり年15日で、複数の子を育てる場合などはより多くの看護休暇を取得可能だ。公的健康保険の加入者には、児童傷病手当として給与の9割が原則として保障される。
連邦制の米国は州で差がある。シリコンバレーのあるカリフォルニア州など一部の州は有給の病休制度を導入。連邦レベルでは最大12週の無給休暇を取れる家族・医療休暇法があるが、対象は重篤な場合に限られる。
日本は02年施行の改正育児・介護休業法で子の看護休暇を創設した。保護者1000人を対象にした連合の23年調査で取得経験を持つのは約14%にとどまった。25年には法改正で対象の子の年齢を小学3年まで引き上げたが、子1人あたり5日の日数や、給与保障の定めがない点は変わらない。

専門家は病児保育の施設を増やすより、親が休むことを基本とした方が社会の負担が少なく、子や親の利益にもかなうと指摘する。
東京大の山口慎太郎教授(労働経済学)は財源論と合わせ、看護休暇拡充を検討する必要性があると説明する。「海外事例を参考に給与保障額に上限を設け、社会保障の一環とすべきだ」と説く。
大阪大の高橋美恵子教授(家族社会学)は、看護休暇が使われないのは職場の雰囲気が一因とし、「子の有無に関係なく、誰もが必要なときに休める社会をつくることが大切だ」と訴える・・・
病児保育」2021年6月11日

職場の女性活躍前進

2026年3月29日   岡本全勝

3月8日の日経新聞に「職場の女性活躍「1年で前進」4割 国際女性デー、1000人調査」が載っていました。
・・・今日は国際女性デー。性別や国籍を問わず公平に活躍できる社会を推進する「DEI」の動きは、育児・介護休業法や女性活躍推進法の改正などを経て、徐々に浸透しつつある。日本経済新聞の男女1000人調査では、DEIの中でも「職場の女性活躍が直近1年で前進した」と感じる人が約4割にのぼった。一方、DEIを推進するうえで一定の「条件が必要」だと考える層も少なくない・・・

5年間を取ると、大いに進んだが20%、ある程度進んだが41%に上っています。着実に進んでいるようです。
具体的には、次のような意見が紹介されています。
「産休や育休がようやく普及し、妊娠出産を経ても仕事が続けやすくなった」
「5年前は『制度があっても使いにくい』という雰囲気があったが、今では性別にかかわらず育休や時短勤務を利用しながらキャリアを継続することが当たり前の光景になった」

健常者に気を遣う障害者の視点

2026年3月1日   岡本全勝

2月17日の朝日新聞、近藤銀河さんの「「特別」なら許されるマイノリティー」から。

・・・高市早苗首相のSNSの投稿は衝撃的だった。彼女の夫のために公邸がバリアフリーに改装された、という報道を受け、その事実を否定しつつ「仮に貴重な税金を使って改修工事をする必要があるのであれば、私達は公邸に引っ越しませんでした」としていた。
健常者に対して気を使い、マイノリティーが堂々と主張できるはずの――けれど主張すれば批判を浴びるような――権利を引っ込める姿勢は、私の日常の中で選びたくないのに繰り返し浮かびあがってくる選択肢だった。それを政治のトップが口にしている。

私の日常を少し説明しよう。
外出のために車椅子を使って生きていると、たくさんの善意に出会うけれど、時には善意を断らないと自分を守れないことがある。
一番よく遭遇する例が、長い階段で「背負ったり車椅子を運んだりできるよ!」という申し出だ。運んでもらったり、背負ってもらったりすることは強い身体的な労作を伴う。車椅子だけを運んでもらって、自分は時間をかけてゆっくりはうように登らないといけないこともある。
そうした善意の申し出を受け入れたあと、私は人知れず数日、時には1週間ほど倒れ込む。そしていつも、悩む。差し伸べられた――優しいけれど取れば自分が痛みを背負うことになる――手をどうすればいいのかと・・・

・・・強く支持される政治家が示すマイノリティーの姿は、ほとんどの場合そのマイノリティー性以外では徹底的に規範に従順な姿だ。少なからぬ女性議員が差別的な姿勢を示すのはまさにそうした例だろう。それは明白なメッセージとなる。「あの人は〇〇だけどさ、他の〇〇とは違う、特別だからいいんだよ」と言われるような存在。マイノリティーはそれを目指して努力せよ、と。
私もそうした声に日々、従おうとしてしまう。無理なことでも平気な顔で「出来ます」と言ってしまい、後で数日寝たきりになってしまう。そんな自分にがくぜんとする。なぜそんなに健常者と同じように振る舞おうとしているのか、と。そんなこと出来やしないのに。

マジョリティーにとってあるべき姿を守るマイノリティーになるのか、そこから動き出してさらに社会の想定から外れた「マイノリティーの中のマイノリティー」になるのか。私はいつも悩んでいる。すでに理想的な姿から外れきっているのに、と。
けれど、健常者が想像する障害者像の内側に踏みとどまる限り、私は迷惑をかけないから許される存在としてのみ許容される。「何も気にしなくていいです、大丈夫です」と言い続ける限り合理的な調整はなされない。あとに続く人もまた苦しむことになる。
だから、いつも吐きそうになりながら少しだけの勇気を出して、物申したり出来ないと断ったりする。頑張らないで社会に存在するために頑張る。なんてむごい矛盾だろう。でも特別でなくても生きられるために今はそうするしかないと歯を食いしばる(時々は諦めているけど)・・・

こども食堂だけでは問題は解決しない

2025年10月8日   岡本全勝

9月13日の朝日新聞オピニオン欄、「気まぐれ八百屋だんだん」店主・近藤博子さんの「「こども食堂」看板やめます」から。

官民が後押しし、全国で1万カ所を超えるほど広がった子ども食堂。その「名付け親」であり、13年間、東京都大田区で子ども食堂を運営してきた近藤博子さんが、この春、「こども食堂」の名前を使わないと宣言した。一体なぜ――。取材を申し込むと、こう返ってきた。「言わなければならない時期だ」

――「言わなければならない」とは、何をですか?
「『ちょっと違うんじゃないか』と、ずっと感じていたんです。13年前、食を通じて近所のちょっとしたつながりができればと思い、子ども一人でも入りやすいように『こども食堂』という名前で始めました」
「その後、驚くスピードで全国に広まりました。応援してくれる人も増えていった。おかげで寄付や支援が集まって助かった面は確かにあります。でも、増えていくことが『いいこと』なのかという疑問はずいぶん前からありました」

――たくさんの子どもたちが利用しています。「いいこと」では?
「『子どものことを心配している大人がこんなにいる』と分かったのはうれしかったですし、子ども食堂が支えになっている子どもや親も実際にいます。だからといって、子ども食堂でなんらかの問題を解決しようと考えるのはおかしい」
「数が増えるのと並行して、子ども食堂に求められる役割も増えていきました。最初は『貧困対策』です。その後、誰もが通える『居場所づくり』や『地域のプラットフォーム』とされていきます。今では『子ども食堂はみんなの食堂』です。不安を抱きながら続けてきましたが、この大きな流れから距離を置き、立ち止まって考えたいと思いました。これまで通り、週に1回食堂を開いていますが、4月から『こども食堂』の名前は使っていません」

――不安というのは?
「大事なのは子ども食堂という『活動』ではないですよね。子どもであり、子どもを育てる親こそ大事なはずです。だから、当事者が置かれている状況を改善しようという議論は不可欠です。それをせずに、子ども食堂の数や利用者を増やすことが目的になっていないでしょうか」
「『子どもの貧困』など、子ども食堂に課せられてきた子どもや社会の問題は、ずっと前から存在していました。今始まった話ではなく、そういうものに気付かなかったり『見て見ぬふり』したりしてきただけです」

――本来議論されるべき問題とは?
「就労の問題は大きいと思います。子どもと接する中で強く感じるのは、『この子たちががんばった先の社会は、ちゃんとした雇用を準備しているのか?』ということです。子どもたちは一生懸命勉強している。でも今、『がんばれば大丈夫』とは言えないですよね」
「子ども食堂を始めて間もない頃、企業のCSR(社会貢献)担当の人たちが『何か手伝いたい』とここに来たことがあります。でも私は、企業がやるべきことは子どもが大人になった時にちゃんとした仕事を準備することだと思っていました。だから『応援して欲しいのは子ども食堂ではなく、子どもたちの就労です』と伝えました」

――なぜそうした問題は「見て見ぬふり」なのでしょうか。
「その方が簡単だからですよね。根っこの問題ではなく、困っているその人個人の問題としておく方が簡単です。例えば、子どもに関わる大きな問題の一つに、教育もあると思うんです。教育格差が広がったり、不登校が増えたりしています。でも、学校の先生は余裕がない。ある小学校の先生に『どうすればいいですか』と尋ねたら、『副担任がいるだけでずいぶん違います』と言っていました。それくらいのこと、国や行政がすぐにやればいいじゃないですか。先生を十分に増やさず、『不登校が増えて困ります』『じゃあフリースクールだ』『多様な学びを認めましょう』。問題がある学校がそのままでは、おかしいですよね」
「せめて子どもや親を直接支援すればいいのに、それは『自己責任』という考え方が阻んでいるように思います。個人の責任にしておけば、社会は責任を負わずに済んで楽ですから。政治家はよく『誰ひとり取り残さない』なんて言いますが、何を言っているのでしょうか。こんな社会にしたことを反省して、すぐに手を打つべきです」

男女平等まで300年以上

2025年9月22日   岡本全勝

9月9日の朝日新聞「データでみる男女平等の現在地」1に、「平等まで「300年以上」、女性進出進まぬ日本」が載っていました。

・・・世界経済フォーラム(WEF)がまとめた2025年版「ジェンダーギャップ報告書」で、日本は148カ国中118位で前年と同じ順位だった。男女平等の達成に向けて、多くの国から後れをとっているという評価だ。なぜこのような順位になったのか、公開された指標を詳しくみていこう。
報告書で示されるジェンダーギャップ指数は、国ごとの男女平等に向けた達成度をWEFが設けた項目で数値化したものだ。男女が完全に平等な状態になれば、達成率は100%となる。
今年のトップは16年連続でアイスランドで、達成率は92・6%だった。一方で、日本の達成率は66・6%にとどまり、主要7カ国(G7)のなかでも唯一、上位100カ国に入ることができなかった。

報告書はジェンダーギャップを「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野に分けて評価している。このうち、日本の順位を下げている要因は「政治」と「経済」の二つだ。
分野ごとに日本の達成率をみていくと、「教育」と「健康」では世界平均を上回っているが、「政治」の分野で下位に沈んでいることがわかる。また、「経済」では世界平均と並んでいるが、先進国からは後れをとっている。

日本の課題は、20年近くにわたって達成率がほぼ伸びていない点だ。
ジェンダーギャップ報告書の作成が始まった2006年を振り返ると、日本の達成率は64・5%だった。今年は66・6%で、19年間で2・1ポイントしか改善していない。
今年の報告書では、日本は「改善のスピードが遅い国」として分類された。06年から調査が続く100カ国をみると、19年間で平均6ポイントの改善があり、日本は改善速度でも後れをとっている。
世界各国がいまのペースで改善を続ければ「完全な平等実現には123年かかる」と報告書は指摘する。だが日本だけをみれば、達成率を100%にするのに300年以上かかる計算だ・・・