カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

失敗した場合を教える教育、スウェーデンの中学教科書

8月4日の朝日新聞読書欄に、尾木直樹さんが、『あなた自身の社会―スウェーデンの中学教科書』を紹介しておられました。「教育に感じる若者への信頼

・・・「あなた自身の社会」。教科書のタイトルにも、日本の公を優先する「公民」とは違って個の人権を尊重し、主権者を育成する思想が浮き彫りになっている。
特筆すべきは、社会の負の面の取り上げ方だ。暴力と犯罪、アルコールと麻薬、いじめ、離婚・・・。まず、それらの問題の背景に客観的・多面的・科学的に光を当てる。日本の道徳教育が陥りがちな「説教」的にではなく、徒(いたずら)に恐怖心に訴えもしない。「失敗」を犯してしまった場合に立ち直る方策や社会的保障も、複数の視点から丁寧に紹介する。ここには、今後直面するであろう様々な問題に真摯に向き合い、乗り越えてほしいという若者への「信頼」が感じ取れる・・・

このスウェーデンの社会の教科書は、拙著『新地方自治入門』でも引用しました。授業でも紹介しています。
特徴的なのは、失敗を犯した子供が立ち直る過程を教えること、社会保障などを教えていることです。
勉強して立派な大人になることを教えることも重要です。しかし、失敗をすることもあり、社会保障のお世話になること(これは権利です)もあります。これまでの日本の教育は前者を教え、後者については触れてこなかったのです。
私の表現では、社会も個人も「坂の上の雲」を目指すことを教え、「坂の下の影」は教えなかったのです。

ところで、この翻訳が出たのが1997年です。その後、スウェーデンでは、どのような改訂が行われているのでしょうか。知りたいですね。基本は変わらないのでしょうが。

孤独という社会問題

7月31日の朝日新聞オピニオン欄「孤独は病か」、岡本純子さん(オジサンの孤独研究家)の発言から。
・・・孤独は老若男女、日本のあらゆる年代に広がっています。誰にでも訪れる短期的な孤独には耐えることも必要でしょう。しかし、人とのつながりがなく、頼る人がいない恒常的・長期的な孤独を放置してはいけません。孤独は多くの人の精神と身体をむしばみ、社会問題にも関わる、深刻な病の一つなのです。

私は、これまでに約1千人の社長や企業幹部のコミュニケーションのコーチングをしてきました。その経験から、日本人、特にコミュニケーションが苦手なオジサンは、孤独に陥りやすいと感じてきました。その理由は、日本独自の文化や価値観にあります。
日本人は一つの会社に長く身を置く傾向があります。会社というムラ社会の内部で重視されるのは、上意下達のタテのコミュニケーション。しかも、内の人との和を大切にしすぎて、望まない人間関係も強いられ、人と関わることに疲れ切ってしまいます。その結果、外の人や異文化とわかり合う努力をしなくなり、フラットなコミュニケーションが苦手になります。

また、日本では、定期的に集まる教会、市民団体などでの活動などがあまり身近にありません。人と人とのつながりや信頼関係を意味する、ソーシャルキャピタルの充実度のランクは149カ国中101位。先進国で最低です。最近の「1人で十分」「つながりはいらない」という、孤独美化の風潮が、日本人の孤独化を悪化させることを危惧しています。
引きこもり、介護、貧困、いじめなどの社会問題は、誰ともつながらず、孤独であると深刻化します。様々な事件でも「周囲からの孤立」が背景にある場合が多いのです・・・

ぜひ、原文をお読みください。

1998年、自殺者3万人に

7月22日の朝日新聞連載「平成経済」は「倒産にパワハラ・・・自殺急増」でした。

・・・1998年、日本の年間自殺者数は3万2863人になった。97年までの20年間は多くて2万5千人台だったので、異常な増え方だった。
その後も2003年の3万4427人をピークに、年3万人超えが続く。しかし、「自殺対策基本法」ができたのは06年。自殺は個人の心の問題だから、と法律づくりが遅れたのだ。
NPO「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京)は08年、こんな推計を公表した。
98~07年の10年間を、もし97年と同じ自殺数で推移していたとして比べると、経済的損失は全部でいくらになるか。結果は、4兆3900億円!
「社会の生きづらさ、息苦しさなどを数字にしてカウントしたら、経済的損失はケタ違いになります」と、代表の清水康之さん(46)。
ライフリンクをおこして14年、清水さんは「生き心地のよい社会」をめざしてきた。清水さん、平成はどんな時代だと言えますか?
「日本の化けの皮がはがれた時代、ですね」
敗戦後の日本は、どんどん豊かになると思っていた。それは幻想だった。倒産、リストラ、低賃金。セーフティーネットもなく人々が追い詰められる。日本はそんな国だった。

とはいえ法律ができ、国、自治体、企業、民間団体が対策に取り組んできた。その結果、12年に自殺者は2万人台に戻り、減少傾向が続いている。
もっとも、自殺者が減ってきたことを、手放しで喜ぶことはできない。
厚生労働省は18年版の自殺対策白書で、今の日本でも人口10万人当たりの自殺者数「自殺死亡率」は世界ワースト6位と位置づける。
さらに、佐藤久男さん(74)は言う。秋田市にある自殺対策のNPO「蜘蛛の糸」、その理事長だ。
昭和は「1億総中流社会」だった。平成で「格差社会」になり、格差が固定化してきている。「がんばってもはいあがれないと、人は絶望へと追い込まれかねません。富める者から富めない者へおカネが回る循環型経済にしないと、危うい」・・・
詳しくは、原文をお読みください。

7月21日の日経新聞連載「平成の30年」は「脱・会社人間 模索続く働き方改革」でした。こちらもあわせて読んでください。
栄養ドリンク「リゲイン」のCM「24時間戦えますか……」、「5時から男の、グロンサン」も出てきます。
ところで、グラフに総実労働時間の推移が載っているのですが、「1985年175.8時間、2017年148.4時間」とあります。これは何を表しているのでしょうか。年間労働時間は「1993年の1920時間から、2016年の1724時間まで減った」と記事にはあります。

イギリスの孤独担当大臣

昨日、「社会的孤立が生む認知症」に、イギリスに「孤独担当相」ができたことを書きました。今日7月18日の朝日新聞に「英国人 実は孤独?」という記事が載っていました。

・・・英国政府が今年、「孤独担当大臣」を置いた。見知らぬ人ともパブに集いビールとサッカー観戦で盛り上がる英国人だが、成人の5人に1人が孤独を感じているという。孤独が長引けば健康を害しかねないとの認識も広がっている・・・

・・・ 英国では75歳以上の半数以上が独居だ。ジェンキンスさんは「以前は教会やパブで世代を超えた交流があったが、そんな近さは失われつつある」と心配する・・・英国赤十字と生協の調査では、900万人以上の成人が「いつも」または「しばしば」孤独を感じていると推計されている。成人の5人に1人だ。
別の調査では、障害者の半数が常に孤独を感じる、また65歳以上の5人に2人がテレビかペットが「一番の友人」と回答した。ロンドンの移民・難民の6割弱は孤独や孤立が最大の課題だという・・・

・・・対策を求める声が強まり、高齢者や障害者らを支援する官民5団体は11年、「孤独を終わらせるキャンペーン」を始め、行政への働きかけを強めた。
決定的だったのは労働党のジョー・コックス議員の存在だ。戸別訪問で孤独な人の多さを知り、15年の初当選後、対策を検討する超党派の委員会を設立。だが翌年、英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票の直前、極右の男に殺害された。事件の衝撃とともに遺志を継ぐ機運が高まった。
委員会は昨年末、担当大臣の設置を政府に要望。メイ首相が今年1月、トレイシー・クラウチ議員(42)を孤独担当相に任命した。
英政府は今年中に「対孤独戦略」を立案する。クラウチ氏の下に各省庁から8人の政務次官らを集めて対策チームを設置。6月以降、実態調査に乗り出した。世代や地域によってどのような介入が効果的か、地域で活動している団体や専門家に問うものだ。
英政府は孤独を「人との交わりがない、あるいは足りないという、主観的で好ましくない感情」と改めて定義。「社会的関係の質や量についての現状と理想に不一致があるときに起きる」とした。国家統計局が主体となって「孤独の指標」の確立もめざす。
クラウチ氏は「ボランティアや活動家、企業、政治家が力を合わせれば、孤独に打ち勝つため前進できる」。これまで民間主導だった孤独対策を国が指揮することになり、個人の内面に公権力が踏み入る危うさをはらむが、社会の受け止めはおおむね肯定的だ・・・

詳しくは原文をお読みください。

社会的孤立が生む認知症

7月4日の朝日新聞オピニオン欄「認知症の予防どうする」、西田淳志・東京都医学総合研究所心の健康プロジェクトリーダーの発言から。

・・・世界的な医学誌、英ランセットに昨夏、「認知症の3分の1は予防可能かもしれない」という趣旨の論文が載りました。
青年期の教育機会の不足や、中年期の聴力低下、高齢期の孤立など、九つの要因を取り除ければ、認知症の発症を35%減らせるかもしれないという内容です。期待される認知症根治薬開発が難航する中、英国でも大きく報じられました。
しかしこれらの要因を減らすことで認知症の発症が実際に予防できたという介入研究による報告は限られており、現状では因果関係についての慎重な解釈が必要だと思います・・・

・・・ただ、この論文が「社会的孤立」を認知症のリスク要因と位置づけた点は、興味深いです。
今年1月に英国で誕生した閣僚ポスト「孤独担当相」のきっかけとなった報告書には、「38%が認知症になったことで友人を失った」とあります。認知症の予防という観点からだけでなく、認知症になっても孤立を生まない社会的な仕組みを、作ることが大事なのだと思います。
孤立を「自己責任」の範疇としている限りは、多くの公衆衛生的課題、健康課題の解決には結びつきません。
その意味で、英国の取り組みは参考になる部分が多いと感じます。英国民保健サービス(NHS)は数年前から、「社会的処方」という取り組みを試行しています。
例えば「寂しく、生きがいがない」と孤独を訴える患者に、地域の絵画教室や運動教室に行く「処方箋」を出し、そうした機会への参加を具体的に手配するのです。
こうした取り組みによって、地域の保健医療費の支出が減るなどの報告も出てきています。
社会的に排除されやすい人々、孤立しやすい人々を地域社会に包摂する具体的な仕組みが認知症予防の観点からだけでなく、総合的な健康政策としても位置付けられるべきだと思います・・・

社会的孤立は、このようなリスクにもつながるのですね。イギリスに「孤独担当相」ができていたのは、知りませんでした。