カテゴリーアーカイブ:再チャレンジ

就職氷河期世代、前期と後期

2026年5月2日   岡本全勝

4月12日の読売新聞、近藤絢子・東大教授の「就労支援と社会保障 両輪で」から。
・・・バブル経済崩壊後の就職難に直面した「就職氷河期世代」に、再び注目が集まっている。希望する仕事や正規雇用がかなわず、不安定な生活を余儀なくされてきたこの世代が40~50歳代半ばに差し掛かり、老後という更なる不安が顕在化してきたためだ。
あれから約30年たったが、非正規など厳しい労働環境から抜け出せない人も多い。経済的に頼ってきた親は高齢になり、介護などで負担は重くなる一方、自らは十分な年金が期待できない。氷河期世代が抱える困難は、今なお解けない大きな社会課題だ。
この難題に国や社会はどう向き合えばいいのか。自らも就職氷河期世代で、労働経済学の観点からこの問題を分析する東京大学社会科学研究所の近藤絢子教授に話を聞いた・・・

・・・私の研究では、就職氷河期世代を1993~2004年に高校や大学を卒業した世代と定義しています。該当する人口は約2000万人で、日本の人口の約6分の1に当たります。ただ、このうち93~98年卒の「氷河期前期世代」と、99~04年卒の「後期世代」では置かれた状況が全く異なります。
国の労働力調査などを見ると、実際に就職率や失業率、求人倍率が底だったのは後期世代の01~03年卒あたり。「氷河期が終わった」とされた05~09年卒の「ポスト氷河期世代」も、実は正規雇用率や平均年収などの指標が前期世代よりも悪いことが分かりました。
さらに、リーマン・ショックや東日本大震災後に社会に出た10~13年卒の「リーマン震災世代」も、同様に厳しい就職状況や雇用環境が続きました。データを見ると、氷河期世代より下の世代も、置かれている状況が相当悪かったことが分かります・・・

・・・ 氷河期世代の中には、いまだに正規雇用として働けないなど、苦しい生活が続いている人がいます。こうした人たちが今後、直面するであろう課題は大きく二つあります。
一つは親世代の高齢化です。親の経済的支援で生活が成り立っていた人たちが、親が認知症になったり介護が必要になったりするケースが出てくる。自分の仕事や収入が不安定なのに、親の面倒も見なければならなくなると、ますます生活が困窮する人が増える。介護保険で使える施設やサービスを拡充するような取り組みが必要になってくるでしょう。
もう一つは、氷河期世代自身の老後の問題です。若い頃に正規社員になれず、非正規やアルバイトで生計を立てていた人は十分な年金保険料を納めていないため、低年金となる可能性が高いのです。
こうした人たちが生活保護に頼るようになると、財政負担がさらに拡大してしまいます。どのような対策が有効なのか、今のうちから幅広い視点で検討していく必要があります。

氷河期世代に対して、国は様々な支援策を打ち出してきました。ハローワークでの就職支援や無業者を対象にした「地域若者サポートステーション(サポステ)」、ひきこもり者などへのサポートなどです。ただ、こうした施策の多くは00年代に始まった若者向けの就労支援です。この世代が年を取るのに合わせ、対象年齢が引き上げられてきただけのものも少なくありません。

氷河期世代は、すでに40~50歳代半ばの中高年に差し掛かっています。働ける人には、65歳でも70歳でも元気に働いてもらえるように後押しをしていくべきですが、若い頃に得られなかった就業経験を取り返すのはなかなか難しい。また、家族や健康面などの事情で、働きたくても働けない人も増えてきます。もはや就労支援だけでは解決できない状況になっています。
こうした現状を踏まえると、これからは就労支援と社会保障の充実といった両輪の支援策が大切になってきます。特に重要なのはセーフティーネットの拡充です。生活保護を思い浮かべる人が多いと思いますが、適用条件は非常に厳しく、そこまで困窮してからでは再び自立するのは極めて難しいのが実態です。その前に救済できるような仕組みを構築する必要があるでしょう・・・

孤立死2.2万人

2026年4月28日   岡本全勝

4月15日の朝日新聞に「「孤立死」2.2万人 昨年 死後8日以上で発見」が載っていました。

・・・自宅で亡くなった一人暮らしの人は昨年1年間に全国で7万6941人で、このうち死後8日以上が経過して見つかる「孤立死」の目安とされるケースは、2万2222人だった。年間を通じた統計は昨年初めて取りまとめられ、今回が2度目。警察庁が14日、発表した。

昨年、警察が取り扱った死者は20万4562人だった。このうち一人暮らしで自宅で死亡した人は、4割近くを占める7万6941人(前年比921人増)だった。
一人暮らしで自宅で死亡した人を年代別に見ると、10代以下57人、20代753人、30代975人、40代2382人、50代7568人、60代1万4183人、70代2万4416人、80代以上2万6445人。年代が上がるごとに人数は増える傾向の一方、15~64歳の現役世代は2割以上を占めた。

死亡推定日から発見されるまでにかかった日数別では数日以内に発見される人が多い。当日か翌日に見つかる人が2万8398人、2~3日が1万5865人、4~7日が1万456人だった。
死後8日以上が経過して発見された2万2222人のうち、7割超は65歳以上だった。また、死後1カ月以上が7148人、1年以上も208人いた。

「孤独死・孤立死」の実態把握を進めてきた内閣府の作業部会は「8日以上」を「孤立死」の目安としている。発見される前の7日間は誰とも接触する機会がなく、社会的な孤立が推認されるなどとして位置付けられた・・・

利用しにくい病児保育

2026年4月8日   岡本全勝

3月17日の日経新聞に「子が急病、働く親の苦悩なお 「病児保育」手続き煩雑で利用1割どまり」が載っていました。まだまだ共働き家庭の子育ては大変です。私も、娘夫婦の孫を見て、病児保育を知りました。

・・・働く人が病気の子を一時的に預ける病児保育が国の少子化対策「エンゼルプラン」で重点施策に位置付けられ約30年。制度の使いにくさや施設数の偏在などを背景に、ある調査では利用経験を持つ保護者の割合は約1割にとどまった。看病で仕事を休む看護休暇の整備も欧州などに比べ後れている。働く親を支える仕組みづくりは道半ばだ。

・・・三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2023年度の調査では、保護者2000人のうち、子の病気で対応に困ったことがあると答えた割合は47%に上った。一方、病児保育の利用経験があるとの回答は13%にとどまった。
背景には、手続きの煩雑さや予約の取りづらさがある・・・
・・・病児保育は1960年代に民間施設で始まったとされる。共働きの増加や核家族化が進み、95年度に始まったエンゼルプランに重点施策として盛り込まれた。
国や自治体の補助対象の施設は2023年度で約4300カ所。過半は保育所などで体調の悪化した子を親の迎えまで預かる施設だ。翌日なども症状が続く子を預かる施設は3割にとどまる。
施設数の地域差も大きい。リベルタス・コンサルティングの24年度調査で一定基準の病児保育施設がない自治体は4割に上った。
同調査では56%の施設が赤字と回答。全国病児保育協議会の杉野茂人会長は「当日のキャンセル率は大半の施設で約5割と高く、事業者の持ち出しで何とか成り立っている」とみる。行政の補助金は定員でなく利用実績に応じ加算される。利用者が少なくても職員は必要なため、人件費が膨らむ・・・

・・・専門家などによると、施設に子を預ける病児保育は日本特有のものとされる。欧州は保護者が家で看病すべきだとの考え方が強い。各国は有給の看護休暇を整備し、子育てと仕事の両立を支援する。
スウェーデンは1970年代に子の看護休暇を導入した。病気で1人年最大120日を付与し、全取得日数に占める男性の割合(2025年)も約4割と高い。アプリから簡単に申請可能で、祖父母や友人に日数を譲渡できる。財源は主に社会保険料として雇用主に負担を求めるのが特徴だ。
ドイツは12歳未満の子1人あたり年15日で、複数の子を育てる場合などはより多くの看護休暇を取得可能だ。公的健康保険の加入者には、児童傷病手当として給与の9割が原則として保障される。
連邦制の米国は州で差がある。シリコンバレーのあるカリフォルニア州など一部の州は有給の病休制度を導入。連邦レベルでは最大12週の無給休暇を取れる家族・医療休暇法があるが、対象は重篤な場合に限られる。
日本は02年施行の改正育児・介護休業法で子の看護休暇を創設した。保護者1000人を対象にした連合の23年調査で取得経験を持つのは約14%にとどまった。25年には法改正で対象の子の年齢を小学3年まで引き上げたが、子1人あたり5日の日数や、給与保障の定めがない点は変わらない。

専門家は病児保育の施設を増やすより、親が休むことを基本とした方が社会の負担が少なく、子や親の利益にもかなうと指摘する。
東京大の山口慎太郎教授(労働経済学)は財源論と合わせ、看護休暇拡充を検討する必要性があると説明する。「海外事例を参考に給与保障額に上限を設け、社会保障の一環とすべきだ」と説く。
大阪大の高橋美恵子教授(家族社会学)は、看護休暇が使われないのは職場の雰囲気が一因とし、「子の有無に関係なく、誰もが必要なときに休める社会をつくることが大切だ」と訴える・・・
病児保育」2021年6月11日

職場の女性活躍前進

2026年3月29日   岡本全勝

3月8日の日経新聞に「職場の女性活躍「1年で前進」4割 国際女性デー、1000人調査」が載っていました。
・・・今日は国際女性デー。性別や国籍を問わず公平に活躍できる社会を推進する「DEI」の動きは、育児・介護休業法や女性活躍推進法の改正などを経て、徐々に浸透しつつある。日本経済新聞の男女1000人調査では、DEIの中でも「職場の女性活躍が直近1年で前進した」と感じる人が約4割にのぼった。一方、DEIを推進するうえで一定の「条件が必要」だと考える層も少なくない・・・

5年間を取ると、大いに進んだが20%、ある程度進んだが41%に上っています。着実に進んでいるようです。
具体的には、次のような意見が紹介されています。
「産休や育休がようやく普及し、妊娠出産を経ても仕事が続けやすくなった」
「5年前は『制度があっても使いにくい』という雰囲気があったが、今では性別にかかわらず育休や時短勤務を利用しながらキャリアを継続することが当たり前の光景になった」

健常者に気を遣う障害者の視点

2026年3月1日   岡本全勝

2月17日の朝日新聞、近藤銀河さんの「「特別」なら許されるマイノリティー」から。

・・・高市早苗首相のSNSの投稿は衝撃的だった。彼女の夫のために公邸がバリアフリーに改装された、という報道を受け、その事実を否定しつつ「仮に貴重な税金を使って改修工事をする必要があるのであれば、私達は公邸に引っ越しませんでした」としていた。
健常者に対して気を使い、マイノリティーが堂々と主張できるはずの――けれど主張すれば批判を浴びるような――権利を引っ込める姿勢は、私の日常の中で選びたくないのに繰り返し浮かびあがってくる選択肢だった。それを政治のトップが口にしている。

私の日常を少し説明しよう。
外出のために車椅子を使って生きていると、たくさんの善意に出会うけれど、時には善意を断らないと自分を守れないことがある。
一番よく遭遇する例が、長い階段で「背負ったり車椅子を運んだりできるよ!」という申し出だ。運んでもらったり、背負ってもらったりすることは強い身体的な労作を伴う。車椅子だけを運んでもらって、自分は時間をかけてゆっくりはうように登らないといけないこともある。
そうした善意の申し出を受け入れたあと、私は人知れず数日、時には1週間ほど倒れ込む。そしていつも、悩む。差し伸べられた――優しいけれど取れば自分が痛みを背負うことになる――手をどうすればいいのかと・・・

・・・強く支持される政治家が示すマイノリティーの姿は、ほとんどの場合そのマイノリティー性以外では徹底的に規範に従順な姿だ。少なからぬ女性議員が差別的な姿勢を示すのはまさにそうした例だろう。それは明白なメッセージとなる。「あの人は〇〇だけどさ、他の〇〇とは違う、特別だからいいんだよ」と言われるような存在。マイノリティーはそれを目指して努力せよ、と。
私もそうした声に日々、従おうとしてしまう。無理なことでも平気な顔で「出来ます」と言ってしまい、後で数日寝たきりになってしまう。そんな自分にがくぜんとする。なぜそんなに健常者と同じように振る舞おうとしているのか、と。そんなこと出来やしないのに。

マジョリティーにとってあるべき姿を守るマイノリティーになるのか、そこから動き出してさらに社会の想定から外れた「マイノリティーの中のマイノリティー」になるのか。私はいつも悩んでいる。すでに理想的な姿から外れきっているのに、と。
けれど、健常者が想像する障害者像の内側に踏みとどまる限り、私は迷惑をかけないから許される存在としてのみ許容される。「何も気にしなくていいです、大丈夫です」と言い続ける限り合理的な調整はなされない。あとに続く人もまた苦しむことになる。
だから、いつも吐きそうになりながら少しだけの勇気を出して、物申したり出来ないと断ったりする。頑張らないで社会に存在するために頑張る。なんてむごい矛盾だろう。でも特別でなくても生きられるために今はそうするしかないと歯を食いしばる(時々は諦めているけど)・・・