カテゴリーアーカイブ:再チャレンジ

模索中のケアラー支援

2026年7月5日   岡本全勝

6月10日の読売新聞に「ケアラー支援のあり方は」が載っていました。ところで近年できた「ケアラー」という名称、もう少しわかりやすい日本語、その人たちの苦労を表す表現はありませんかね。

・・・高齢者や障害者、病気、ひきこもり状態の家族らを日常的に世話している人(ケアラー)たちへの支援を求める声が高まっている。少子高齢化の進展で家族を取り巻く環境が変わり、孤立したり、困窮したりするケースがあるためだ。求められる支援のあり方について、専門家3人に聞いた・・・

田村憲久・自民党ケアラー議員連盟会長の発言
・・・この数十年間で人口構成や社会構造が激しく変化した。今後も変化が続くことが予想されているにもかかわらず、日本独特の家族観や社会的な価値観を背景に「介護は家族がするものだ」という考え方が残っている。
高齢者の介護だけではない。障害のある人や心身に不調を抱えている人の家族が、「ほかに世話をする人がいないから」と、働きたくても働くことができずに世話に専念しているケースがある。子どもや若者がケアを担っていることも少なくない。
家族がケアをしなくていいと言っているわけでは決してない。私たちは今、家族だけでケアを完結することができない時代を生きている。そうした認識を社会に広げて、ケアラーの皆さんが健康を損ねることなく、自分らしい生活を送れるように、環境を整えていきたいという思いがある。

私が会長を務めている自民党ケアラー議員連盟は、全国の当事者たちの声を聞く窓口だ。その声を「見える化」して、国の政策に反映させる役割がある。24年に改正された「子ども・若者育成支援推進法」では、国や自治体にヤングケアラー支援を努力義務として求めている。適切な支援につなぐため、議連では、学校で状況を把握するための調査を定期的に行うように国に働きかけた。
今後は、大人のケアラーについても実態を把握するための調査を行い、課題を「見える化」する必要があるだろう・・・

・・・高齢者や障害者を介護する人、ヤングケアラーなどへの支援は、各省庁で徐々に整えられてきている。しかし、まだまだ不十分だ。内閣府にケアラー支援の所管を一元化することも一案だろう。ケアラーを支える法律を作ったり、政府として「骨太の方針」にケアラー支援の強化を盛り込んだりすることも考えられる・・・

避難所で抜け落ちる、外国人の視点

2026年6月18日   岡本全勝

6月13日の朝日新聞「避難所で抜け落ちる、外国人の視点 山林火災があった岩手県大槌町」から。田村太郎さんのホームページ

・・・大規模山林火災が5月29日に鎮火した岩手県大槌町では、多くの外国人技能実習生が働く。避難所では、生活習慣の違いから来る戸惑いもみられた。外国人に限らず、避難生活でのニーズは多様だ。どう備えていけばよいのか。

「お弁当ありますよ」
山林火災で煙に包まれた大槌町の避難所で4月下旬、女性たちが弁当を手渡され、貼られた成分表を見つめていた。
女性たちはインドネシアから来て町内の水産加工会社で働く、約20人の技能実習生だ。寮の裏山まで火が来た。避難指示を受け、最大約200人が身を寄せた城山公園体育館に来た。
実習生のうちの一人の女性(23)は弁当の配布に感謝しつつ、「ムスリム(イスラム教徒)だから豚肉も豚肉の脂も、お酒にあたるからみりんも食べる習慣がない」と話した。県災害派遣福祉チーム(DWAT)リーダーの小泉進さん(42)は「要配慮者は日本人高齢者を中心に考えており、ハラール(宗教的に認められた)食の視点がなかった。認識不足だった」と振り返る・・・

生活習慣の違いによる戸惑いは、食事にとどまらない。今回の山林火災で避難したインドネシア人女性は避難所にいた数日間、シャワーが利用できずに困ったという。
町内では火災後、避難者向けに銭湯やホテルの大浴場が開放された。だが、ムスリムには肌の露出を控える文化がある。女性は「他の人とお風呂に入るのは……」と抵抗感があったという。

1995年の阪神・淡路大震災以来、外国人の災害支援に関わってきた「ダイバーシティ研究所」の田村太郎代表理事は「ふだんから生活習慣の違いを理解するための接点が少ない」ために同様の問題が繰り返されてきたとみる。「『外国人』というくくりも雑で、出身地域や宗教によって習慣は多様な上、ジェンダーや子ども、持病など色んな属性がある」とも指摘する。

復興庁の復興推進参与でもある田村さんは「シャワーブースも備えとして標準化してもらいたい」と話す。食べ物については今、ハラール対応の非常食も市販されている。アレルギー対応食も同様だ。「『これしかないから、皆で我慢して頑張る』という日本の避難生活のスタンダードを、そろそろ改めませんか。選択肢の多い避難生活は誰にとっても過ごしやすいはずです」・・・

ひきこもり、平均37歳

2026年5月25日   岡本全勝

5月12日の日経新聞に「ひきこもり、平均36.9歳 昨年度、民間調べ 高齢家族から不安の声」が載っていました。

・・・ひきこもり状態にある本人の2025年度の平均年齢は36.9歳となり、10年間で4.2歳上昇した。家族を対象にした調査結果をNPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が公表した。家族が高齢化し、親亡き後の不安を訴える声が多いとして行政の支援強化を求めている。

25年12月~26年1月に家族278件を調べた。15年度の調査では本人の平均年齢は32.7歳だった。親ら家族の平均年齢は66.3歳で、15年度調査の62.8歳を上回った・・・

就職氷河期世代、前期と後期

2026年5月2日   岡本全勝

4月12日の読売新聞、近藤絢子・東大教授の「就労支援と社会保障 両輪で」から。
・・・バブル経済崩壊後の就職難に直面した「就職氷河期世代」に、再び注目が集まっている。希望する仕事や正規雇用がかなわず、不安定な生活を余儀なくされてきたこの世代が40~50歳代半ばに差し掛かり、老後という更なる不安が顕在化してきたためだ。
あれから約30年たったが、非正規など厳しい労働環境から抜け出せない人も多い。経済的に頼ってきた親は高齢になり、介護などで負担は重くなる一方、自らは十分な年金が期待できない。氷河期世代が抱える困難は、今なお解けない大きな社会課題だ。
この難題に国や社会はどう向き合えばいいのか。自らも就職氷河期世代で、労働経済学の観点からこの問題を分析する東京大学社会科学研究所の近藤絢子教授に話を聞いた・・・

・・・私の研究では、就職氷河期世代を1993~2004年に高校や大学を卒業した世代と定義しています。該当する人口は約2000万人で、日本の人口の約6分の1に当たります。ただ、このうち93~98年卒の「氷河期前期世代」と、99~04年卒の「後期世代」では置かれた状況が全く異なります。
国の労働力調査などを見ると、実際に就職率や失業率、求人倍率が底だったのは後期世代の01~03年卒あたり。「氷河期が終わった」とされた05~09年卒の「ポスト氷河期世代」も、実は正規雇用率や平均年収などの指標が前期世代よりも悪いことが分かりました。
さらに、リーマン・ショックや東日本大震災後に社会に出た10~13年卒の「リーマン震災世代」も、同様に厳しい就職状況や雇用環境が続きました。データを見ると、氷河期世代より下の世代も、置かれている状況が相当悪かったことが分かります・・・

・・・ 氷河期世代の中には、いまだに正規雇用として働けないなど、苦しい生活が続いている人がいます。こうした人たちが今後、直面するであろう課題は大きく二つあります。
一つは親世代の高齢化です。親の経済的支援で生活が成り立っていた人たちが、親が認知症になったり介護が必要になったりするケースが出てくる。自分の仕事や収入が不安定なのに、親の面倒も見なければならなくなると、ますます生活が困窮する人が増える。介護保険で使える施設やサービスを拡充するような取り組みが必要になってくるでしょう。
もう一つは、氷河期世代自身の老後の問題です。若い頃に正規社員になれず、非正規やアルバイトで生計を立てていた人は十分な年金保険料を納めていないため、低年金となる可能性が高いのです。
こうした人たちが生活保護に頼るようになると、財政負担がさらに拡大してしまいます。どのような対策が有効なのか、今のうちから幅広い視点で検討していく必要があります。

氷河期世代に対して、国は様々な支援策を打ち出してきました。ハローワークでの就職支援や無業者を対象にした「地域若者サポートステーション(サポステ)」、ひきこもり者などへのサポートなどです。ただ、こうした施策の多くは00年代に始まった若者向けの就労支援です。この世代が年を取るのに合わせ、対象年齢が引き上げられてきただけのものも少なくありません。

氷河期世代は、すでに40~50歳代半ばの中高年に差し掛かっています。働ける人には、65歳でも70歳でも元気に働いてもらえるように後押しをしていくべきですが、若い頃に得られなかった就業経験を取り返すのはなかなか難しい。また、家族や健康面などの事情で、働きたくても働けない人も増えてきます。もはや就労支援だけでは解決できない状況になっています。
こうした現状を踏まえると、これからは就労支援と社会保障の充実といった両輪の支援策が大切になってきます。特に重要なのはセーフティーネットの拡充です。生活保護を思い浮かべる人が多いと思いますが、適用条件は非常に厳しく、そこまで困窮してからでは再び自立するのは極めて難しいのが実態です。その前に救済できるような仕組みを構築する必要があるでしょう・・・

孤立死2.2万人

2026年4月28日   岡本全勝

4月15日の朝日新聞に「「孤立死」2.2万人 昨年 死後8日以上で発見」が載っていました。

・・・自宅で亡くなった一人暮らしの人は昨年1年間に全国で7万6941人で、このうち死後8日以上が経過して見つかる「孤立死」の目安とされるケースは、2万2222人だった。年間を通じた統計は昨年初めて取りまとめられ、今回が2度目。警察庁が14日、発表した。

昨年、警察が取り扱った死者は20万4562人だった。このうち一人暮らしで自宅で死亡した人は、4割近くを占める7万6941人(前年比921人増)だった。
一人暮らしで自宅で死亡した人を年代別に見ると、10代以下57人、20代753人、30代975人、40代2382人、50代7568人、60代1万4183人、70代2万4416人、80代以上2万6445人。年代が上がるごとに人数は増える傾向の一方、15~64歳の現役世代は2割以上を占めた。

死亡推定日から発見されるまでにかかった日数別では数日以内に発見される人が多い。当日か翌日に見つかる人が2万8398人、2~3日が1万5865人、4~7日が1万456人だった。
死後8日以上が経過して発見された2万2222人のうち、7割超は65歳以上だった。また、死後1カ月以上が7148人、1年以上も208人いた。

「孤独死・孤立死」の実態把握を進めてきた内閣府の作業部会は「8日以上」を「孤立死」の目安としている。発見される前の7日間は誰とも接触する機会がなく、社会的な孤立が推認されるなどとして位置付けられた・・・