カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

命の相談電話

11月11日の朝日新聞生活面「命のSNS相談、急増する一方で… 「非正規切りされた」「寂しい」目立つ若者」から。
・・・近年は減少傾向にあった自殺者数が7月以降、増加している。目立つのが若者だ。国はSNSを使った相談窓口の整備に力を入れているが、急速な相談の増加に、応じる側の手が足りない現実もある。

今年の自殺者数は、7月から4カ月連続で前年同月を上回り、10月は前年同月比4割増の2153人にのぼった(速報値)。9月の年代別では20歳未満が1・2倍、20代が1・6倍と若い世代が増えていた。
国は若者の自殺対策として2018年3月から、SNSによる相談事業への補助を始めた・・・国が相談事業に補助している4団体の一つ、NPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」(東京都豊島区)。18年3月からSNSの相談窓口「こころのほっとチャット」を運営している。

・・・月平均1千件程度だった相談は、新型コロナの感染が拡大した4月以降に急増。7月以降は月2千件を超えている。
「親といるのが嫌なのに、家に居ざるをえない」「非正規切りにあい、生活に困っている」「寂しい」。内容はさまざまだが、新型コロナによる外出自粛や経済悪化などで、それまでも抱えていた問題が表面化したケースが多いという。カウンセリングセンター長の新行内勝善さん(51)は「影響が長期化し、先が見えないと感じている人が多い」と話す・・・

再チャレンジのできない日本

10月20日の朝日新聞オピニオン欄、公益社団法人「日本駆け込み寺」代表・玄秀盛さんへのインタビュー「新型コロナ 歌舞伎町で見えたもの」から。

――苦しい人たちが、もっと「助けて」と声を上げることはできないのでしょうか。
「うかつに『助けて』って言ったら、周りから、もうこいつ終わりやなって思われるから、言わない。それは、歌舞伎町とか夜の街だけのことではない。まして会社員ほど『助けて』って言わない。弱みを見せたら、悪い評価がつけられるんちゃうか、と思うからや。だから、『助けて』どころじゃない。今の日本は、いったん脱線したら終わりで、再チャレンジはでけへん」

 ――なぜ、そうなのでしょう。
「だって、いまだに成功した人から学びましょう、偉くなった人から学びましょうって言われるやろ。失敗した人から学ぶという考えがないねん。どんな過去があってもやり直しがきく、再チャレンジできるシステムがない限り、どんどん無傷で痛みがわからんやつが上がっていくから、みんなで痛みを分かち合おうとはしない」

 

いのちの電話、運営困難

10月13日の読売新聞夕刊が「いのちの電話 運営ピンチ」を伝えていました。
・・・新型コロナウイルスの影響で、自殺を防ぐため電話相談に応じる各地の「いのちの電話」で、相談員不足が深刻化している。コロナ禍で生活苦や家庭内暴力(DV)などの相談が増加傾向にあるが、電話がつながりにくい状態が続いており、各団体が頭を悩ませている・・・

・・・一方、年中無休・24時間の相談体制は、外出を控える高齢の相談員もいるため縮小している。団体は仮眠室での感染を防ぐため4~8月、深夜・早朝の相談を休止した。
・・・背景には、コロナ禍による影響に加えて、慢性的な人手不足がある。
全国の相談員は2001年の7933人をピークに減少傾向にあり、現在は約5900人にとどまる。相談件数は東日本大震災などの影響で12年に約75万8000件に達したが、昨年は約62万件だった。佐合信子・事務局長は「相談が減っているわけではなく、相談員の減少で対応し切れていないのが実情」と明かす・・・

いのちの電話の解説もついています。「ロンドンで始まった自殺予防のための電話相談を参考に、1971年にドイツ人宣教師が東京で始めた。センターは43都道府県に50か所あり、各地の社会福祉法人やNPOが運営している。相談件数は年間60万件以上。運営費は寄付や行政・民間の助成金などで賄われている」とのことです。
大震災の際にも、いのちの電話には協力をいただきました。「よりそいホットライン

心の回復力(レジリエンス)学習

4月7日の日経新聞夕刊に「強い心 カギは回復力 レジリエンス学習、学校も導入 苦難の乗り越え方培う」が載っていました。
・・・精神的に苦しい場面からどう立ち直るか――。企業の研修などで導入が進む「レジリエンス(回復力)学習」を取り入れる学校が増えてきた。悩みや失敗をポジティブに捉える方法を話し合うなどする。子どもが話しやすい環境を整えるなど教員による細やかな配慮も必要だが、専門家は「多感な思春期こそ、つらさを乗り越える方法を学んでほしい」と話している・・・

よいことですね。これまでの教育は、立派な大人になることを教えていました。そこでは、落ちこぼれは弱い人間で、そうなってはいけないと教えていました。
しかし、みんながみんな、立派な大人になるわけでありません。みんなが、強いわけでもありません。強い大人も、挫折を経験しながら、強くなったのです。

これからの教育は、優秀な人を育てるとともに、そうなれない人、うまく行かない子ども、落ちこぼれるを支える教育が必要だと思います。そして、優秀な子どもは、放っておいても勉強します。支援しなければならないのは、後者です。
しかし、日本の教育は、まだその転換ができていないようです。

心のレジリエンスについては、拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』P116で、「精神の体力」として取り上げました。

子供の貧困

4月6日の朝日新聞オピニオン欄は、中塚久美子記者の「子どもの貧困のいま 弱い所得再分配・窮迫続く母子家庭」でした。
要点は次の通り。
・子どもの貧困の「発見」から12年。問題意識は広まったが解消していない
・所得再分配が弱い。総合的な親の所得保障や教育費負担の軽減を
・貧困を生み出すのは構造的問題。賃金格差など社会的不利の改善に力を入れるべきだ

・・・日本の「子どもの貧困」が国内で注目され始めたのは2008年だ。研究者や当事者らが発信し、メディアで取り上げられるようになった。それ以前の朝日新聞でも、国内の子どもの貧困を指摘した記事はなかった。
翌09年、政府が初めて子どもの相対的貧困率を公表した。07年の数値で7人に1人にあたる14・2%。その後、過去の貧困率も公表され、1985年以降、上昇傾向にあることがわかった。

ワーキングプア、年越し派遣村などで貧困の可視化も進んでいた。生活保護家庭の子ども学習支援や困難を抱える子どもの居場所づくりなどの活動を支える市民が増える中、13年に子どもの貧困対策法が成立。「生まれ育った環境で将来が左右されることのないよう」にと教育支援に力点が置かれた。

貧困状態を把握するための25の指標のうち、21が進路や就園など教育関係。生活困窮家庭の学習支援や奨学金など教育費軽減策、学校を窓口とした福祉機関との連携などが進んだ。
12年の子どもの貧困率は16・3%。15年は13・9%に改善したが、先進国でつくる経済協力開発機構(OECD)の平均13・1%(16年)より高い・・・

・・・日本の母子世帯は8割が働いているが貧困率は高い。東京都立大の子ども・若者貧困研究センターによると、母子世帯(配偶者のいない65歳未満の女性と20歳未満の子ども)の貧困率は1985年の60・4%から、2015年に47・6%と下がったものの、高水準なのは30年にわたり変わっていない。

厚生労働省は02年、母子家庭の自立支援対策として、福祉の手当から就労を促進する方向性を打ち出した。一方、長時間労働を前提とし、男性が稼ぎ主で女性が補助的に働き育児や介護などを担う仕組みは、今も根強く残る。子どものいる男女の賃金格差は10対4。長年、母子家庭を支援するNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長は「結婚・出産で仕事を辞めた女性が子どもを抱えて働くのに合わせ、労働市場には月収10万円前後の仕事があふれている。母子家庭もそこに誘導される結果、働いても貧困になる」と指摘する・・・