若年介護者(ヤングケアラー)

4月21日の日経新聞「私見卓見」は、宮本恭子・島根大学法文学部教授の「若年介護者を生まないために」でした。

・・・家族の介護や世話の負担が手伝いの範囲を明らかに超え、時間を費やすことが常態化している18歳未満の子どもをヤングケアラーという。「見えないケアラー」とも呼ばれ、どう発見するかが最初の課題とされる。筆者が島根県の子どもの生活実態に関する調査を独自に分析した結果から、島根県内だけでもヤングケアラーは推計1000人いることが分かった。
これらの子どもには、勉強がわからないことが多いなど学校生活への影響や、よく眠れないことがある、孤独を感じることがあるといった心身への影響もみられた。親の就労状況をみると、土日勤務や夜間勤務の割合の高さが目立つ。また、金銭的な余裕がない世帯の割合も高かった。
「見えないケアラー」が生まれてしまう背景には何があるのか。まず、社会環境の変化に追いついていない介護者支援の問題がある。以前に比べて世帯を構成する人数は少なくなり、介護を担うことのできる大人が家庭内におらず、必然的に子どもが引き受ける結果になっている実態に対応しきれていない。「介護の社会化」が不十分ということである・・・

・・・最後に「見えないケアラー」の正確な把握という課題がある。子どもは自分が行っていることが労働であるとか、それが介護であるという事実に気づくことも簡単ではない。家の手伝いをしている程度だと考えてしまっている可能性も高いだろう。したがって、子どもの側からSOSの声が上がるのを待っていることはできない。大人の側がこれを把握していくための仕組みが必要である・・・