最低賃金の引き上げ

4月22日の朝日新聞オピニオン欄、竹内幹・一橋大学准教授の「最低賃金引き上げの意義 人として生きる費用必要」から。
・・・最低賃金の引き上げは先進国のトレンドになっている。昨年、スイスのジュネーブ州では最低賃金を時給23スイスフラン(約2700円)に引き上げることが住民投票で決まった。最低賃金としては世界最高だろう。他方、日本は時給902円(全国加重平均値)にすぎない。
一般的に、最低賃金を国際比較する場合は絶対額でなく、フルタイム労働者の稼得の中央値を100として最低賃金がその何%に相当するかを比べる。OECDのデータでは日本は44%で、加盟国でデータがある31カ国のなかで27位だ・・・

記事では、「多くの経済学者は最低賃金法は、賃金が一定水準以下の雇用機会を奪うので、低賃金でしか働けない貧困層の職を奪うだけだ、と長らく信じてきた」と書かれています。そして、その考え方が変わりつつあることも、紹介されています。

しかし、最低賃金を経済学の理論で扱うこと自体が、間違っていると思います。
賃金は、人が暮らしていくために必須です。その際に、最低賃金は、商品やサービスのように、需要と供給で決まってはいけないのです。高度な技能や人がやりたくない仕事について、需要と供給の関係で賃金が上下することがあっても、最低賃金は人が暮らしていけるだけの金額にしなければなりません。これは経済学ではなく、社会保障です。
連載「公共を創る」では、非正規労働者を貧困から救う政策として、同一労働・同一賃金と、この最低賃金引き上げを、書いているところです。