カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

子ども政策、予算の効果

6月1日の日経新聞経済教室「子ども庁、何を優先すべきか」、中室牧子・慶応義塾大学教授の「縦割りの排除、自治体でも」から。

・・・社会保険、教育、職業訓練、現金給付など公共政策は多岐にわたる。だが過去50年の米国の133の公共政策を評価した最新の論文によれば、最も費用対効果が高いのは子供の教育と健康への投資だという。子供の教育や健康に投資した政策の多くは、子供が大人になった後の税収の増加や社会保障費の削減により、初期の支出を回収できていることも示されている。
とりわけ幼少期の教育投資の収益率が高いことを示す研究は多いが、あまり知られていない。英国での研究によると、子供をもつ親は、子供の学齢が高いほど教育の費用対効果は高く、幼少期の投資とその後の投資は補完関係ではなく代替関係だと認識している。
そして驚くべきことに、親だけでなく幼稚園教諭・保育士・小学校教員ですら、幼少期よりももっと学齢の高い教育段階の方が重要だと考えている・・・幼少期の教育投資の効果が特に大きいのは、貧困世帯の子供たちだ。このためノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン米シカゴ大教授は、貧困の世代間連鎖を食い止めるには、所得の再分配よりも、不利な状況にある子供の幼少期の生活を改善する「事前分配」の方が経済効率がよいと主張する・・・
この項続く

高齢者の就労・社会参加の形

5月31日の読売新聞「安心の設計」は「変わるシルバー人材センター」でした。

・・・60歳以上の高齢者の仕事探しを後押しする「シルバー人材センター」が岐路に立たされている。保育や介護といった人手不足の業種で事業拡大が期待される一方、企業の雇用延長制度などで会員数の伸び悩みにも直面している。試行錯誤しながら変わっていくセンターの姿を追った・・・
・・・シルバー人材センターは時代の変化に直面している。雇用延長制度の広がりや、高齢者の健康状態の改善、「60歳代はシルバーではない」という意識変化を背景に、“シルバー離れ”が目立ち始めた・・・
詳しくは、記事をお読みください。

「高齢者の就労・社会参加のイメージ」という図が載っています。横軸に収入が、縦軸に負荷が取られています。右上の雇用や起業から、左下に向かって、シルバー人材センター、ボランティア(有償、無償)などが載っています。
・・・高齢者が「働きたい」と考えた時、就労先を探す手段は様々だ。
内閣府が収入のある仕事に従事している60歳以上の男女を対象として「今している仕事を見つけた方法」を尋ねたところ、「知人・友人等の紹介」が28.1%で最も多かった。
次いで「自分で起業」(15.7%)、「ハローワーク」(8.6%)、「求人情報誌」(7.8%)が続いた。「シルバー人材センター」は3.8%にとどまった・・・

ヤングケアラーを支える

5月26日の日経新聞夕刊が「ヤングケアラー支えたい 交流の場づくり、経験者も動く」を載せていました。
・・・家族の介護や世話を担う18歳未満の子ども「ヤングケアラー」を周囲がどう支援するかが課題となっている。新型コロナウイルス禍もあって心身の負担はさらに重くなっているとみられる。ヤングケアラーだった人、現場で支援に携わる人に実情や悩みを聞いた。
「母の表情が暗くなり、仕事もやめてふさぎ込むようになった。私が母のサポートを引き受けるしかなかった」。こう話すのは坂本拓さん(30)。中学2年生で母がうつ病とパニック障害を発症。「誰にも相談できなかった」と振り返る・・・

ヤングケアラーは、近年「発見」された社会生活の問題です。私たちは、「介護」を高齢者を世話する、その人は連れ合いか子どもなので高齢者や熟年だと、思い込んでいました。しかし、親や兄弟の面倒を見ている子どもや若もがいたのです。
核家族化もその要因にあります。子どもなので、助けを求めることができないのです。連載「公共を創る」の「孤立」の項目で、ヤングケアラーを取り上げています。
澁谷智子著「ヤングケアラーー介護を担う子ども・若者の現実」(2018年、中公新書)が参考になります。

高校教科書、足し算や九九を教える

5月8日の日経新聞夕刊に「高校教科書 学び直し対応」という記事が載っていました。
・・・「3×8=」「36+42=」……。来春から主に高校1年生が使う「数学Ⅰ」のある教科書には、2桁同士の足し算や引き算、九九といった演習問題が並ぶ。さまざまな事情で基礎学力が身に付かないまま高校に進学した生徒のために編集され、文部科学省の検定に合格。学習指導要領にも記載された「学び直し」のニーズの高まりに応えたものだ。
作ったのは東京書籍。数学Ⅰは難易度が異なる4種類があり、その中で最も易しいものに盛り込んだ。数学編集部の提橋正一部長が高校を訪れた際、教員が小学2年生用の算数教科書を使って教えているのを見て、必要性を強く感じた。「これまでは大学入試の方ばかりを向いて作っていた」と振り返る。

約170ページのうち、冒頭の約30ページが主に小学校の復習だ。整数の足し算と引き算から始まり、「37+28=65」などを筆算で解く方法を示す。九九では「7×5」を「7+7+7+7+7」と、7を5つ足したものだと丁寧に解説している。
続けて割り算、小数、分数、速さの求め方などを説明し、最後に中学1年で習う負の数を紹介する。項目ごとに演習問題があり、教科書に直接書き込めるよう余白を確保した。
高校の学習範囲も基礎的なものに絞り、漢字には極力ルビを振った。提橋部長によると、小中学校を休みがちだった生徒も含め、多様な学力層が在籍する通信制高校などでの採用を見込む・・・

なるほどと思うとともに、そのような学力でも小学校や中学校を卒業させることがよいのか、高校には何を求めて進学しているのか、疑問になります。
なんのための義務教育であり、なんのための高校なのでしょうか。

技能実習生の実態

商売と人権」の続きです。佐藤暁子さんの「人権とビジネス、企業のあり方は」には、次のような指摘もあります。

・・・人権侵害は日本にもある。弁護士として案件に向き合ううち、日本の貧困や格差にもより敏感になった。
「『技能実習生』として海外から受け入れ、日本で働く人々の人権に、どう対応しているでしょうか。自らの基本的な権利は、必死で守らなければ権力者から奪われかねないという緊張感はあるでしょうか」・・・

これについては、5月2日の朝日新聞が1面「失踪村 ベトナム人技能実習生」でも取り上げています。「失踪村、お金も仕事もない 元実習生たち 過酷な労働、夢砕かれて」
・・・途上国への技術移転の名目で、安い労働力として働かされていると指摘されてきた技能実習生。その半数以上を占めるのがベトナム人だ。劣悪な労働環境などから失踪する例が後を絶たない。「失踪村」にたどりついた元実習生たちから何が見えるのか・・・
詳しくは、原文をお読みください。