カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

チャイルドペナルティー

9月19日の日経新聞「出産・子育て不利にしない チャイルドペナルティーどう防ぐ」から。

チャイルドペナルティー問題は米プリンストン大学のヘンリック・クレベン教授らが19年に提起した。学歴等の性差が解消された先進国でも、なぜ格差が残っているのか。各国の統計データを分析し、出産するとあたかも罰せられるかのように収入が下落する状況が元凶だと突きとめた。

日本の状況は財務省財務総合政策研究所の古村典洋さんが厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」を基に試算した。出産1年前の収入を基準とし、出産1年後は67.8%も減る。出産退職して収入がゼロになる人も含むので減少幅は大きめに出る。
ただ日本は他国に比べ落ち込みが大きく、その後の回復も緩やかだ。「日本では長時間労働ができないと評価されにくい。子育てに時間を割かざるを得ない女性は昇進・昇給で不利になる」と古村さんは指摘する。

保育所の機能拡大

9月15日の日経新聞夕刊に「保育所、子育ての多機能拠点へ」が載っていました。

・・・親が希望しても保育所に入れられない待機児童が2022年4月、全国で2944人と過去最少になった。施設整備が進んだうえ子どもの人口が減り、希望すればみな保育所に入れる時代が目前に迫っている。そこで課題になるのが余力のある保育所をどうするかだ。これまでの就労家庭への支援施設としての役割を捉え直し、地域全体の子育て支援に役立てようとする動きが広がりつつある・・・

事例として、仙台市の保育園が子ども食堂を行っていることが紹介されています。園児でなくても、18歳以下の子どもを育てていたら利用できます。大人は300円、子どもは無料です。

親が働いていたりして子育てが難しい場合に子どもを預かるのが、保育所の役割でした。しかし、子育て支援という視点に立てば、困っている親は他にもいます。次のような支援を期待します。
・働いていない親でも、週に何回かは預かって欲しい。
・子どもが熱を出した場合。
・障害がある子どもの支援。
・相談する相手がいない親への支援。

「生きづらさ」言葉の功罪

9月7日の朝日新聞オピニオン欄「「生きづらさ」言葉の功罪」、貴戸理恵・関西学院大学准教授の「他者とつながる足掛かり」から。

かつて、女性、障害者、不登校者などマイノリティーとされた人は、「障害者は劣っている」「学校に行かないことは悪い」とまとめて差別され、その苦しみを分かち合うことができました。社会の無理解は深刻で、変革のために連帯する必要性も明らかでした。
ところが今は、少なくとも建前のうえでは「多様なライフスタイルを承認する」とされ、同じマイノリティーだからといって、共通のしんどさを抱えていることを前提にできません。「30万円稼ぐようになった引きこもりの男性」のように、「弱い立場だったけど生産性がある人になった」話も流通している。だからマイノリティーであることを「言いわけ」にできず、「苦しいのは自分のせいだ」となってしまう。

もちろん、多様性が認められるのは重要です。でも、市場的な価値が重視されるなかで共同性が失われ、孤立感を持ちやすくなることには、注意が必要だと考えます。
そうしたなかで、個人の「苦しい」というリアリティーを表現できる言葉が「生きづらさ」なのでしょう。自分の個人的なストーリーをその言葉に乗せることで、ようやく他者に語ることができる。
これは現代的な現象だといえます。自分だけでなく多くの人がしんどいのに、共通の問題は見えず、「自分のがんばりが足りないからだ」と個人的に抱え込まされる。その結果、苦しみを主観や身体性に根ざして表現せざるを得ないのです。「生きづらさ」が多く使われている背景には、個人の苦しみを自己責任だと思い込まされるような状況があると思います。

「生きづらさ」という言葉は困難を個人の問題にしてしまう面があることは確かですし、しんどさの原因となっている社会構造を問うことも必要です。でも、この言葉のよいところは、「自分で語る足掛かりになること」だと私は思っています。
参加者が自分の生きづらさを語り合う場に10年以上関わっています。互いの話を聞きあうことを通じて、「自分だけの問題じゃない」という実感が積みあがっていきます。就労に結びつくなどの具体的な変化もありますが、一番大切なのは、しんどさを通じて他者とつながる「孤立の回避」です。

忖度圏と孤立圏

7月29日の朝日新聞生活面「負担感強まる中間層、どうすれば 中央大・宮本太郎教授に聞く」から。

・・・物価高騰で、くらしは厳しさが増しています。給料は上がらないのに税や社会保険料の負担感が強まり、細っていく中間所得層。中間層再生の必要性が訴えられるようになりましたが、どんな選択肢があるのでしょう。中央大学の宮本太郎教授に聞きました・・・

・・・今の世の中は「忖度圏」と「孤立圏」にわかれています。中間層が属してきた忖度圏は、いつも空気を読んでいないと追い出されてしまう場所で、ディフェンシブにならざるを得ません。
いざというときの社会保障制度は、主に正社員とその家族を守る社会保険が中心です。忖度圏から一歩外に出ると、つながりすら断たれる孤立圏に入ってしまう。中間層は忖度圏で我慢し続けることで安心を得てきました。でもその安心は、一歩間違えるとすべて失う、という不安の源にもなっています・・・

成熟社会になった日本社会の不安を、上手に表現しておられます。

子ども食堂6000か所

7月23日の日経新聞1面「データで読む地域再生」は「子ども食堂、6000カ所超 世代超えた交流拠点に」でした。
・・・子どもに低額や無料で食事を提供する「子ども食堂」が広がってきた。2012年に東京都内でボランティアが始めた取り組みが自治体や民間企業などにも担い手を広げ、21年には全国6000カ所を超えた。沖縄県、滋賀県などで加速する。経済的困難を抱える世帯の支援にとどまらず、幅広い世代が集う場としても欠かせない存在になりつつある・・・

・・・沖縄県は子どもの貧困への危機感が極めて強い。15年に県が実施した調査で3人に1人程度(29.9%)が貧困状態との結果が示され、対策が本格化した。県は16年、30億円の「子どもの貧困対策推進基金」を創設し、国も10億円の予算を確保した。
市町村はこれらを原資に食堂の規模に準じた補助金を交付する。21年10月時点の子ども食堂は241カ所と、18年比114カ所増えた。那覇市社会福祉協議会の担当者は「財政支援に加え、自治体と社会福祉協議会の担当者が連携を強めたことなどが奏功した」と説明する。
2位の滋賀県、3位の鳥取県でも行政が支援に取り組む。滋賀県では制度や財政面で後押しする体制を整えた。助成金のほか、営業許可を特例で免除し、開設のハードルを引き下げた。鳥取県では食材費なども補助対象とした。
18年から21年にかけて食堂を最も増やしたのは山口県で7.9倍となった。保険加入や講習の参加など一定の要件を満たせば食堂を開設できる独自の登録制度を設け、手続きの負担を軽減した。

子ども食堂は交流拠点として幅広い役割を併せ持つ。東京都健康長寿医療センター研究所の村山洋史研究副部長は「コミュニティーが醸成されている地域ほど食堂が多い傾向がある」と指摘する。
同研究所は全国約2万5000人を対象に地域の協調性や信頼関係を測るソーシャルキャピタル(SC)と呼ばれる指標を算出し、20年の各都道府県の子ども食堂数との相関を分析した。「地域の人は信頼できる」と答える人が多かった高知県や鳥取県などは、人口あたりの食堂数の割合も高かった。
鳥取県の子ども食堂では子どもと運営ボランティアの信頼関係が強まったことで「家庭内で困っていること」などの本音を引き出し、直接的な世帯支援につなげた。Uターンなどで地域との関わりが乏しくなっていた母子世帯の母親が地域住民とのつながりを育んだケースも多い。
「とっとり子どもの居場所ネットワーク”えんたく”」の福安潤一コーディネーターは「食堂は年代を問わず、住民間の孤立を防ぐ役割を果たしている」とみている・・・
子ども食堂の活動」「こども食堂