カテゴリーアーカイブ:連載「公共を創る」

連載「公共を創る」第75回

2021年3月26日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第75回「社会の課題の変化―失敗しても再挑戦できる環境づくり」が、発行されました。

これまで説明した「人間らしい生き方への被害」には、古典的リスクなどとは違った対策が必要です。孤立や社会不適応といった不安は、新たな法律を作って取り締まりを強化しても、なくなりません。
今回は、私がこの問題に関心を持つことになったきっかけを紹介し、そこで考えた新しいリスクの特徴と行政の課題を説明します。少し古くなりましたが、第1次安倍晋三内閣(2006年9月〜2007年9月)での、再チャレンジ政策です。私は、その事務局の責任者(内閣官房再チャレンジ担当室長)に指名されました。その際に、この問題を通して、日本社会と行政の在り方を考えることになりました。

当時は1990年代のバブル経済崩壊後の長引く不況で、社会にさまざまな問題が出ていました。2000年代に入って景気は回復したのですが、それらの問題は解決されず、景気や経済の問題ではないことが分かってきました。
そして、さらにいろんな問題が見えてきました。例えば就職氷河期に正規社員になれなかった人たちは、景気が回復しても企業は新卒者を採用し、置いてきぼりになりました。そのほか、非正規労働者、ホームレス、引きこもり、自殺者、子どもの貧困、そして格差の拡大などです。

連載「公共を創る」第74回

2021年3月12日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第74回「社会の課題の変化―新しいリスクにさまざまな対応策」が、発行されました。
前回までで、近年の社会におけるリスクを説明しました。
これら新しいリスクに対し、日本の行政は急速に対応策を講じています。今回は、取られた対策の主なものを説明します。そして、リスクの性質によって対応方法が異なること、特に社会生活問題などには従来の対策では十分に対応できないことを考えます。

連載「公共を創る」第73回

2021年3月5日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第73回「社会の課題の変化―新たに生まれてくるリスクと不安」が、発行されました。

前回に続き、近年の社会におけるリスクの特徴を説明しました。被害の形態からリスクを分類すると、
・武力攻撃や自然災害、事故は「身体や財産への被害」
・ライフラインの途絶などは「経済社会活動への被害」
・格差や人間関係の問題は「人間らしい生き方への被害」に、分けることができます。

コンピュータに例えると、身体や財産への被害は、機械の故障です。机の上のパソコンが、金かなづち槌で叩たたかれて壊れた状態です。
経済社会システムの混乱は、ネットワークの故障です。インターネット網が故障して、多くのパソコンがつながらなくなった状態です。
格差の問題は、パソコンとインターネットの接続において送受信の能力が低く、他の人と同じような仕事ができない状態です。社会生活の問題は、パソコンにもネットワークにも支障がないのですが、それでも他者とのつながりがうまくつくれない状態です。本人の能力なのか変換のプログラムがおかしいのか、書いたり受信したりしたものの内容が不十分で、相手に意味が通じない文章になっています。他人との通信がうまくできないのです。

新しい不安は、次のような要因で生まれます。
・技術と経済の発展によるもの。サリン、フロン、原発事故
・これまでもあったリスクが再認識されたもの。武力攻撃や自然災害
・成熟社会が生むもの。豊かな暮らしが失われる、生きにくい社会、格差と孤立

連載「公共を創る」第72回

2021年2月26日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第72回「社会の課題の変化―近年の社会で顕著なリスクの問題」が、発行されました。

前回に引き続き、近年の社会におけるリスクを説明しました。犯罪(振り込め詐欺、サイバー犯罪)、病気(感染症のパンデミック)、環境問題(地球温暖化、プラスチックごみ)、社会システムの混乱(コンピュータのシステム障害、世界金融危機)、格差(負け組、ワーキングプア、子供の貧困)などです。

このうち格差は、豊かになった日本での社会問題です。非正規労働者は、本人に責めがあるのではなく、誰もが陥る可能性がある社会の側の問題です。孤立も、自由を達成した成熟社会の問題です。

連載「公共を創る」第71回

2021年2月19日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第71回「社会の課題の変化―暮らしやすい社会を作るために」が、発行されました。今回から、第4章「政府の役割再考」に入ります。

第1章「大震災の復興で考えたこと」では、町を復旧する過程で見えた、私たちの暮らしを支えている要素を説明しました。公共施設や公共サービスを復旧しただけでは、暮らしは成り立ちませんでした。
第2章「暮らしを支える社会の要素」では、暮らしを支えている要素を広く検討し、社会は公私二元論より官共業三元論で考える方が適切であること、施設や設備といったインフラだけでなく、社会関係資本や文化資本など、人のつながりや気風といった要素が重要であることを指摘しました。
第3章「転換期にある社会」では、日本は昭和後期に驚異的な経済成長を遂げたのに対し平成時代は停滞したこと、豊かで自由な社会を達成したけれど新たな不安が生まれていることを説明しました。豊かさと自由は、個人には、自己責任や孤立化といった問題を連れて来ました。社会では、格差拡大や社会参加の低下といった問題が生まれました。満足したことが停滞を生んでいることと、成熟社会に適合した生き方を模索していることを指摘しました。

第4章ではこれまでの議論を踏まえて、成熟社会で生まれている課題を、どのように解決するのかを議論します。暮らしやすい社会をつくるためには、何が必要か。この連載の結論部分です。
今回はまず、社会のリスクの変化を説明します。
かつて、月刊「地方財務」に「社会のリスクの変化と行政の役割」を連載しました(2010年10月号から2021年4月号)。それを基に、再度考えました。