連載「公共を創る」第75回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第75回「社会の課題の変化―失敗しても再挑戦できる環境づくり」が、発行されました。

これまで説明した「人間らしい生き方への被害」には、古典的リスクなどとは違った対策が必要です。孤立や社会不適応といった不安は、新たな法律を作って取り締まりを強化しても、なくなりません。
今回は、私がこの問題に関心を持つことになったきっかけを紹介し、そこで考えた新しいリスクの特徴と行政の課題を説明します。少し古くなりましたが、第1次安倍晋三内閣(2006年9月〜2007年9月)での、再チャレンジ政策です。私は、その事務局の責任者(内閣官房再チャレンジ担当室長)に指名されました。その際に、この問題を通して、日本社会と行政の在り方を考えることになりました。

当時は1990年代のバブル経済崩壊後の長引く不況で、社会にさまざまな問題が出ていました。2000年代に入って景気は回復したのですが、それらの問題は解決されず、景気や経済の問題ではないことが分かってきました。
そして、さらにいろんな問題が見えてきました。例えば就職氷河期に正規社員になれなかった人たちは、景気が回復しても企業は新卒者を採用し、置いてきぼりになりました。そのほか、非正規労働者、ホームレス、引きこもり、自殺者、子どもの貧困、そして格差の拡大などです。