カテゴリーアーカイブ:著作と講演

連載「公共を創る」第127回

2022年8月26日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第127回「政治・社会参加の重要性」が、発行されました。
前回に引き続き、税金に関心を持ってもらう話を続けます。イタリアでは個人所得税の千分の8を宗教団体に、5を非営利団体に、2を政党などに納めることができます。スウェーデンでは、毎年の年金納付額が所得の一定割合に固定され、それが積み重なって本人の年金受給権が増えていくことを確認できます。

なぜ、このような政治参加や社会参加、そしてその国民の意識を議論するのか。それは、現在の日本社会の不安は、社会の仕組みと国民の暮らし方や意識によって生じているからです。そして、政府、行政による公共サービス提供では、解決しないのです。

ところで、政治学と行政学は政府の役割について、経済学と財政学は市場の役割と政府の関与について大きな蓄積があるのですが、社会については、社会学が分析はするのですが、どのように改善すべきか、政府や私たちはどのように変えるべきかの議論はあまりしません。
社会学は、哲学のような深遠な議論をするものから、格差や孤独なの身近にある具体問題を扱うものまで、様々なものを含んでいます。その全体像を系統的・分類的に示すことは難しいでしょう。私が期待するのは、社会学のうち「実用の学」と思われるものを集めて、分類し、それらを全体的に議論することです。政治学、経済学(の一部)が「実用の学」であると同様に、社会学にもそれを期待したいのです。「公共社会学」という学問分野の考え方もあるようです。それが発展することを期待します。

気仙沼市で講演

2022年8月26日   岡本全勝

昨日25日は、気仙沼市の「東日本大震災からの復興とその先の未来へ」で、基調講演をしました。
大震災の復興で、政府と自治体、住民、企業、非営利団体は何をしたのか。従来の復興と何を変えたのか。さらに、流された町を復興する過程で、町とは何か、町のにぎわいはどうしたらつくることがわかりました。これは、今後の町の発展や住民の暮らしを考える際に、よい勉強になりました。それを簡潔にお話ししました。
その後、大西隆・東大名誉教授、大滝精一・東北大名誉教授、関満博・一橋大学名誉教授(このお三方は気仙沼市の復興会議委員でした)、菅原茂市長の討論会の司会を務めました。

震災から11年余りが経ちました。震災後に現地に行ったときは、被害の大きさと膨大ながれきの山に、「この先どのようにしたら復旧、復興するのだろうか」と思案に暮れました。今、その時を知らずに気仙沼を訪れた人は、震災を感じることはないでしょう。それくらいに、見事に復興しました。関係者の努力のおかげです。また、高速道路や大島架橋など、以前よりよくなったものもあります。被災という悲劇を経験し、これまで以上に強く、立派なまちをつくって欲しいです。
いつも思うのですが、先は長く思えますが、過去は短く感じられます。
このあと、気仙沼市をはじめ被災地が発展するかどうか。それは、産業にかかっていると思います。働く場があって、人が暮らせます。にぎわいも、それによります。もう一つの鍵は、若い女性です。仙台や東京に学びに行った後、ふるさとに帰ってくる人が少ないのです。この風潮をどう変えるか。

気仙沼は、去年のNHK朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」の舞台になりました。
久しぶりの気仙沼なので、いくつか復興の進んだ姿を見てきました。朝、気仙沼駅で一関行きの列車を待つ間に、そこから先の鉄道を引き継いだバス(BRT)が、南と北へと出発していきました。

連載「公共を創る」第126回

2022年8月19日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第126回「政治・社会参加を促す具体策」が、発行されました。社会参加の意識を議論しています。政策として本格的には取り組まれていないのですが、今回は、いくつか特徴的な動きを紹介します。

学校の部活動を教員に指導させるのではなく、民間に委ねようとする動きがあります。ドイツでは、学校の部活動がなく、地域のスポーツクラブが引き受けています。
裁判員制度は、国民に政治参加を促す方法の一つです。日本では選挙の投票に行くか行かないかは、本人に委ねられていますが、義務にしている国もあります。政治教育の一環とも考えられています。

日本では勤め人は、所得税の計算と納税を会社がやってくれます。計算書はもらいますが、関心は少ないでしょう。税金の天引きは多くの国がやっているのですが、年末調整は本人が税務署に申告する国が多いようです。そこで、自分の納税額とその計算に関心を持つのです。

「明るい公務員講座」3部作電子版の売れ行き

2022年8月6日   岡本全勝

「明るい公務員講座」3部作。出版社から、電子書籍の売れ行き状況報告がありました。電子書籍にしたのが2020年です。それぞれに、結構な部数が売れています。ありがたいことです。私は、「このような本を読む人は紙で読むので、電子書籍には向いていない」と思っていたのですが、そうでもないのですね。

初めて知ったのですが、紙の本には定価がありますが、電子書籍は自由価格なのですね。紙の本の定価に近いものから、ぐっと安い物まで、いろいろな価格で売られています。へえ。

紙の本も、アマゾンでの売れ行きを時々覗くのですが、それなりに売れているようです。公務員にとっての(企業の社員にとっても)仕事の教科書で、類書がないと自負しています。
「第4巻、課長の上級編はまだですか」との問い合わせがあります。すみません、忘れているわけではないのですが。連載「公共を創る」の執筆に追われて、着手できません。

連載「公共を創る」第125回

2022年8月5日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第125回「社会参加政策のあり方―スウェーデンとドイツ」が、発行されました。社会参加の意識を議論しています。

前号で紹介したスウェーデンの政治教育のために、若者・市民社会庁が作った副教材「政治について話そう!」には、学校において中立を保ちながら政治を教えるためにはどうしたらよいか、どうしたら騒動を起こさずに安全な討論会を実施できるかといった実践的な事項も書かれています。「学校は価値中立にはなり得ない」こと、すなわち社会の中にある多様な価値観をすべて公平に扱うことはできないと断言しています。翻って日本の状況を考えてみると、学校だけでなく、家庭などでも政治の話、特に意見対立がある争点については触れないようにすることが多いようです。

同国には若者を社会参加に誘う場として、若者団体のほかに「ユースセンター」「若者の家」という余暇活動施設があります。中学・高校生世代が誰でも自由に出入りできます。そこは、学校でも家庭でもない「第三の居場所」として機能しています。

スウェーデンで積極的な若者政策が国政において取られ、発展してきたのは、ここ30年のことです。経済成長を遂げて成熟社会の段階に入った頃から、人生の選択肢が増え、「良く生きる」ことが単純明快なものでなくなりました。かつては多くの人にとって「家庭→学校→就職→家庭を持つ」という単線的だった人生が、そうではなくなったのです。このことから生じる人生への不安や悩みが、学校から社会に出ようとして選択しなければならない立場にある若者に集中するようになりました。

1981年の政府報告書は「若者が、商品やサービスの消費者になっているだけでなく、自分自身の人生においても『消費者』になってしまい、結果として自身の人生を自分で決めることができなくなっている」と述べています。そこから、社会の発展に必要な彼らを、社会と政治に参加するようにさせることに踏み出したのです。