「講演」カテゴリーアーカイブ

講演

6月8日 日本社会教育学会(六月集会)「博物館のアウトプットと予算査定」

(博物館の予算と機能)
今日は、社会教育学会で、「博物館のアウトプットと予算査定」という討論会に出てきました。博物館予算の現状とあり方についての議論です。1990年代に、ふるさと創生事業もあり、各地で箱ものができました。それが終わるとともに、財政悪化により、運営費の削減、さらには民間委託・指定管理者制度も進んでいます。「これで良いのか」という問題関心からです。私にとっても、改めて官の役割を考える機会になりました。
これまでは、官主導で博物館を作ってきました。しかし、官は箱ものづくりは得意ですが、内容になると不得手です。博物館の予算は、箱もの整備・維持管理・展示・教育研究に分けることができます。前2者は他の施設と同様に、効率化を進めるべきでしょう。ところが、あとの2つはその基準には当てはまらないのです。展示(ものを集める)は、どうあるべきか。その際に、民間立施設との役割分担・官としての関わりをどう整理するか問題になります。
教育研究は、もっと別の観点が必要になります。一つの博物館でフルセットは無理ですから、多くの同業者とネットワークを組む、例えば生物なら生物学会・研究者とのネットワークが課題になるのでしょう。すると、博物館予算という発想では、限界があるように思えます。
さて、私が公立博物館の現場にいたら、県庁に予算要求しつつ、他にいろんなところからの資金を探すことになるのでしょう。昔読んだ、梅棹忠夫先生の「研究経営論」を思い出しました。また、仕事の大半は、県内外の研究者や学校の先生などの情報結節点になるような気がしました。大学の研究室と、同じなんでしょうね。いえ、私たち官僚も、関心ある研究者や記者さんを巻き込み、発信することが重要です。私なりに、それを実践しています。

3月22日 政策メッセ・ワークショップ

今日は、政策メッセ・ワークショップに、出席してきました。私の出番は、「中央省庁等改革の成果と課題-この国のかたちは変わったか(「内閣主導」「官邸主導」について)です。司会は、田中秀明教授(一橋大学)、パネリストは、私のほか、清水真人記者(日本経済新聞社)、曽根泰教教授(慶應大学)です。なかなかの顔ぶれだと、思いませんか。
もっとも、3人が10分ずつ話すだけで、30分かかりますから、1時間半では2周ちょっとで終わってしまいます。
3人とも事前にレジュメを交換し(インターネットは便利ですね)、論点を整理してあったので、議論が発散することなく進みました。結構、身のある議論ができたと思います。連載中の「行政構造改革」と重なる部分があるので、私の勉強にもなりました。
観客は40人ほど。公務員や学生のほか、NHK記者、読売新聞記者、シンクタンク幹部など、知った顔ぶれも参加していました。

2月8日 第46回関西財界セミナー

今日は、第46回関西財界セミナー(京都国際会館)に行ってきました。第3分科会「日本復活の条件を探る」第3セッション「道州制で日本各地を元気にする」で、発表しました。議長は松下正幸松下電器副会長、関西財界のお歴々の前での発表で、いささか緊張しました。もっとも、しゃべり出すと、いつもの調子になりました。すると、違った意味で、血圧が上がるのです(笑い)。
私の主張は、次の通りです。
日本は中央集権モデルで大成功し、それが現在の失敗を生んでいる。
道州制によって変えるものの一つは政治であり、地方分権である。一言で言えば、内政面での「霞ヶ関の分割」である。国鉄の分割をイメージしてもらえばいい。これによって、国会議員と官僚は、国としてすべき仕事に専念し、地方のことは道州に委ねることができる。
変えるべきもう一つは、経済である。地域は、地域経営という思考に立ち、自立すべきである。東京を向かずに、アジアを向いてほしい。第一の政治改革は、分権でも達成できる。しかし、地域経済の自立は、都道府県を前提にしていては、できないだろう。
道州制実現に向けて、抵抗勢力は官僚と知事・県会議員であろう。推進勢力は、国会議員と経済界である。霞ヶ関を分割できるのは、総理のリーダーシップしかない。これは、省庁改革の時の橋本総理を思い浮かべてもらいたい。
さほど変なことは言っていないつもりなのですが、「霞ヶ関にもこんな官僚がいるのか」と、お褒めの?言葉をいただきました。会議終了後も、たくさんの出席者から、声をかけてもらいました。
この分科会のテーマが日本復活についてで、昨日はシュンペーターの創造的破壊が議論になったようです。そこで、官僚制は成功したが、日本復活のために、いまや破壊しなければならない、との発言もありました。松下副会長はとりまとめの際に、「トップダウンで改革ができるのは、創業者か、業績が悪くなったときだ」と喝破されました。
分権と道州制について、非常に深い理解と強い意欲を感じました。経済界の方がこれだけ熱心になっていただくのは、ありがたいことです。この熱意と力で、政治家を動かしてもらいたいです。
それにしても、全体で500人もの財界人が参加して、2日間議論をされるのは、すごいですね。「京都ダボス会議」といったところでしょうか。マスコミも政治家も、もっと関心を持つべきだと思います。海外ばかり向かずに、日本も向いてください。でも、事務局も大変でしょう。
お呼びいただき、ありがとうございました。少しはお役に立てたでしょうか。私としては、効果的な伝道師活動ができて、うれしかったです。

1月28日 自治大学校

今日は午後から、自治大学校で講義。かつて、自治大で教授を勤めました。まだ、広尾にあった頃です。立川に移転して、施設は比較にならないほど立派になりました。霞ヶ関から遠いのが難点です。
椎川校長のご指示は「骨太の方針」と「改革と展望」です。経済財政諮問会議の役割や日本の経済・財政が置かれている状況など、幅広い背景を含めてお話ししました。ふだん聞けない話の方が、面白いでしょうから。
今日はお客さんは、県や市の職員ですから、学生さんより楽です。脱線・小話もたくさん交えて、飽きが来ないように、しかし深くて濃い話をしました。いつものように、2時限しゃべるとへとへとになりましたが、満足できる出来でした。問題は、お客さんがどう受けとめてくれたかですね。
なお、授業中に紹介した、日本の人口ピラミッドの推移は日本の人口に、GDPの推移は戦後日本の経済成長と税収載せてあります。

2006年12月9日 福岡大学法科大学院

(官僚と法律)
今日9日は、福岡大学法科大学院で、講演をしました。テーマは「立法と行政-公務員の役割と行動」です。官僚と法律との関わりを、経験を交えてお話ししました。通常、大学や大学院で学ぶのは、できあがった法律の解釈学です。しかし、官僚は、その解釈・執行だけでなく、補充をし、また改正や新規立法をします。六法全書に載ってからと、載るまでといったら、わかりやすいでしょうか。しかし、物の本や講義では、立法学はあまり教えません。せいぜい、立法過程論、技術論ですね。
霞ヶ関の官僚と国会議員は、政策実現の大きな手段として、立法に携わっています。それは、どのようにして課題を拾い、解決策を考えるかという問題です。私の持論ですが、これまで日本の官僚は、欧米先進国に課題と解決方法を学び、輸入していました。発展途上国時代は、それで良かったのです。しかし、国内の問題を自ら拾い上げ、解決策を考えるということには、なれていません。その証拠の一つとして、日本が欧米に輸出した法律って、私が知る限り迷惑メール防止法だけです。輸入はしても輸出はしない、内弁慶です。アジア諸国には、輸出していますが。
また、このHPに何度か書いているように、これまで保護育成=業界相手の仕事だったのが、国民相手になりました。手法も、事前調整から、ルールを作って自由にし事後チェック型に転換しつつあります。ここに、官僚と法律の関係も、大きく変わりつつあります。このあたりを、お話ししました。もっとも院生さんは若くて、私がこの10年の実例を出しても、知らない人が多く、しゃべるのに少し苦労しました。