カテゴリーアーカイブ:著作

コメントライナー寄稿第16回

2024年2月27日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第16回「工程表のない政治」が2月22日に配信され、27日のiJAMPにも転載されました。
今回は、昨年秋に、岸田文雄首相が打ち出した所得税減税を取り上げ、政治手法のあり方を議論しました。

首相が政策を打ち出す際には、「突然に」と「議論を経て」の二種類があります。前者は、国民が想定していない政策を打ち出すことで、首相の指導力を見せる演出効果があります。後者は、首相が課題と方向を提示しますが、議論を積み重ね、最後に首相が決断します。

民主主義は有権者の意見に基づく政治であり、その意見を集約する手続きを経る仕組みです。審議会や政党内、議会での議論を通じて、国民に争点を示していく過程が重要です。これによって、すべての国民が賛成しないまでも、国民の間に納得が生じます。難しい課題であるほど、国民の間には意見の相違があります。
首相は突然に指導力を見せることにではなく、国民に納得してもらうためにこそ、戦略を考える必要があります。中曽根行革では、「工程表」という言葉が使われました。

首相の役割は、政治課題を選び、解決していくことです。人を動かして、それを実現することが腕の見せ所です。政治力とは、人を動かすことです。
首相が打ち出す政策には、全体の目標と体系が必要です。各政策に工程表が必要なのと同様に、首相が目指す日本に向けての工程表が必要です。

東奥日報に載りました

2024年2月26日   岡本全勝

2月18日の東奥日報(青森県の地方紙)「大島理森の道8 東日本大震災」に、私の発言「官邸と役人の能力引き出す」が載りました。大島理森・元衆議院議長を取り上げた連載です。今号は、大島先生が自民党の東日本大震災復興加速化本部長時代です。

自民党が政権に復帰したのは、2012年12月。大島先生が自民党復興加速化本部長に就任され、直ちに党本部の本部長室に呼ばれました。「復興を進めるために何をしなければならないか」と問われ、私が「あれも、これも、それも・・・」と列挙すると、バーンと机をたたいて、「急ぐものはどれだ」と一喝されました。
そこで、住宅建設を最優先にすることが決まりました。当時の私は、取り組むべき課題はそれぞれ重要で、どれもこれも急がなければならないと悩んでいました。それを整理して、優先順位をつけてくださいました。これは、官僚にはできないことです。

次に、復興の大まかな方針を決めてくださいました。各省や東電を呼んで、ご自身で論点を整理されたのです。もちろん、お手伝いはしましたが。そしてそれを紙にして、「政府への提言とする」とおっしゃいました。
私は、面倒なことになるなあと思いつつ、大島先生の指示で官邸に向かい、菅官房長官と安倍首相に説明しました。お二人は「どうすればよいのか」と聞かれたので、「この提言を総理と官房長官が受け取っていただき、横にいる復興大臣に『このように進めるように』と指示を出していただければ」と答えました。大島先生は、連立与党である公明党の加速化本部長である井上義久先生に連絡を取られ、井上先生にも説明に行きました。そして、両党の提言として、段取り通り進みました。その後、定期的に与党提言を使って、難題を進めることができました。

官僚を使いこなす政治主導、そして官邸を動かして実現する素晴らしい実例でした。

連載「公共を創る」第178回

2024年2月16日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第178回「政府の役割の再定義ー職員育成の見直しに向けて」が、発行されました。前回から、官僚の「やりがい」を議論しています。

霞が関全体の政策を見てみると、重要な課題が変わってきたことも挙げられます。例えば、発展途上期は、道路整備や義務教育に当たる教職員の確保は国家にとって大きな課題でした。しかしそれらの仕組みが確立し、定着しました。国が基準と計画をつくり、財源を確保しておけば、自治体に任せても問題なく運営されるでしょう。国民は官僚に対し、いつまでも補助金配分作業を続けることを期待していません。官僚には、そのような作業を手放し、能力を新しい企画に使ってほしいです。

次に雇用者側が取り組むべきは、育成の見直しです。かつては意識しなくても、適当な競争と職場での研鑽によって組織にとって必要な人材は得られると考えられ、実際にそれでほとんどの組織は対応できてきたのです。しかし、雇用者側にとっても働く側にとってもうまくいかなくなり、このままではだめだという意識が広がっています。

一言で言うと、これまでの技能の習得は「周囲の先輩を見て覚えよ」であり、育成手法は「ところてん式の人事異動」でした。それは典型的なオン・ザ・ジョブ型研修と画一的な登用方式ですが、実際には本人の適性や希望はあまり意識せず、能力開発は本人任せで、要領よく前例通りの仕事を覚えることを求めていただけでした。雇用側としての戦略や配慮より、人事担当の効率性を重視した人事行政だったと言わざるを得ません。
さらに、人材育成だけでなく、「人材確保」と「職場環境の整備」にも問題は拡大しています。

職場で求められる専門性について、政策分野別専門性とともに、機能別専門性についても指摘しました。すなわち前者を縦割りとすると、後者は横割りです。会計、発注、公金徴収、調査・統計、文書管理など、どの分野にも共通する定型的な業務です。これらの業務が民間委託できないのは、本来事務と一体をなしているからです。
これまでは、その席に長く座った職員が専門家となっていたようです。それではすまなくなりました。特に技能の習得が必要となっているものに、電算化、文書管理、検査監督業務などがあります。

ヤフーニュースでの発言「能登地震の復興は東日本に学べ」

2024年2月9日   岡本全勝

インターネットのヤフーニュースに、私の発言が載りました。「能登地震の復興は東日本に学べ」元復興庁・岡本全勝さんの提言 町を元に戻しても人は戻らず」(2月9日配信)。ヤフーニュースには、他紙からの転載記事のほか、このような独自の記事(オリジナル 特集)もあるようです。

先月中旬に、取材を受けました。私は能登の現場を見ていないため、あくまで報道で知り得た範囲での見解ですが、これから予想される復興の難しさについて、東日本大震災の経験を基にお話ししました。
東日本大震災では、それまでの復興哲学と同じように、元の街に復旧しようとしました。ところが、インフラや住宅を復旧しても、多くの集落で住民は戻らず、にぎわいも戻りませんでした。日本は人口減少に転じ、特にこの地域は以前から人口が減少し、高齢の方が多い地域だったのです。この条件は、能登半島も同じです。

街をどのように復旧するか。それを決めるのは地元の人たちです。多くの方は「元に戻したい」と思っておられるでしょうから、私の発言は厳しいものと受け取られるでしょうね。
どのようにしたら、住民の方は暮らしやすいか。
東日本大震災では、私たちは手探りで事業を進めましたが、今回は13年前に起き、そこから復興したという前例があるのです。住民の意見集約という過程と、どのように復旧するかという目標の二つにおいて、ぜひ東日本大震災からの復興を参考にしてください。

2月29日の朝日新聞「論壇時評」で、宇野重規先生に取り上げていただきました。「能登地震から考える 人口減少、持続可能な社会とは

連載「公共を創る」第177回

2024年2月8日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第177回「政府の役割の再定義ー官僚の「やりがい」を巡る考察」が、発行されました。

長時間労働を減らすためには、職員数も増やすべきだという主張の続きです。企業が社員と経費の削減を進めたと同じように、役所でも職員を減らし、一部は非正規職員に代えてきたことが、この30年間の経済の低迷を社会の不安を生み、それを長引かせたのでしょう。
そして削減だけでは企業は業績が伸びず、行革だけでは行政は社会の課題に対応できません。行政改革は必要ですが、私は行き過ぎたと考えています。私も、その旗を振った一員ですが。早く方向転換しなければなりません。

職場の問題として、長時間労働の次に、やりがいの問題を取り上げます。少々忙しくてもやっている仕事が国民の役に立っているなら、我慢できます。しかしその仕事がやりがいのないものだと、意欲はわきません。ここでは、国会待機、官邸指示の多用を取り上げました。