カテゴリーアーカイブ:著作

連載「公共を創る」第179回

2024年3月8日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第179回「政府の役割の再定義ー公務員の「身分」を巡る考察」が、発行されました。前回では、職務の専門性について議論しました。そこには、政策分野の専門性とともに、どの分野にも共通する定型的な専門性があることを指摘しました。
今回は、原点に戻って、公務員と民間企業の会社員や非営利団体の職員との違いを考えてみます。

国家公務員と地方公務員は採用と法的身分に特徴があります。国家公務員法は「身分」という言葉も使っています。また企業活動から隔離することがうたわれています。しかし、民営化や民間委託が進むことで、公務員と会社員の業務がさほど異なったものではないことが明らかになりました。また、非常勤職員や任期付き任用職員が増えました。民間企業に勤めながら非常勤職員として採用されている人もいます。逆に、企業や非営利団体に派遣される公務員も増えています。
公務員への労働基本権の一律制限も、おかしなことです。企画部門や調査統計部門の職員がストをしても、国民生活に直ちに重大な支障がありません。コロナ禍で分かったことは、保育所、介護施設、学童保育施設職員がストをしたら、大きな影響があります。電気、ガス、通信、金融が止まると生活と経済活動に支障を来します。公務員だからという規制ではなく、業務に応じた規制をすべきです。

公務員と民間人を分ける考えは、公私二元論に引きずられた、古い思想です。

朝日新聞、論壇時評で取り上げられました

2024年2月29日   岡本全勝

今朝2月29日の朝日新聞「論壇時評」、「能登地震から考える 人口減少、持続可能な社会とは」で、宇野重規・東大教授が、先日のヤフーニュースでの発言を取り上げてくださいした。ありがとうございます。

・・・復興庁の元事務次官である岡本全勝の「能登地震の復興は東日本に学べ」も考えさせられる(〈3〉)。東日本大震災からの復興に約10年にわたり取り組んだ岡本は、「地元から離れたくない」という住民の気持ちと、現実の生活環境の水準との間でいかに折り合いをつけるかがポイントだとする。その際、「市街地」「中心集落」「周辺集落」を区別し、それぞれの持続可能性を考慮した上で、ある程度の選択と集中も必要だという。街を復旧したものの住民が戻らなかったことがあった東日本の経験も踏まえ、住民の議論と合意によって復興計画を策定してほしいとする・・・

〈3〉小川匡則「『能登地震の復興は東日本に学べ』元復興庁・岡本全勝さんの提言 町を元に戻しても人は戻らず」(Yahoo!ニュース オリジナル 特集、2月9日)*

コメントライナー寄稿第16回

2024年2月27日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第16回「工程表のない政治」が2月22日に配信され、27日のiJAMPにも転載されました。
今回は、昨年秋に、岸田文雄首相が打ち出した所得税減税を取り上げ、政治手法のあり方を議論しました。

首相が政策を打ち出す際には、「突然に」と「議論を経て」の二種類があります。前者は、国民が想定していない政策を打ち出すことで、首相の指導力を見せる演出効果があります。後者は、首相が課題と方向を提示しますが、議論を積み重ね、最後に首相が決断します。

民主主義は有権者の意見に基づく政治であり、その意見を集約する手続きを経る仕組みです。審議会や政党内、議会での議論を通じて、国民に争点を示していく過程が重要です。これによって、すべての国民が賛成しないまでも、国民の間に納得が生じます。難しい課題であるほど、国民の間には意見の相違があります。
首相は突然に指導力を見せることにではなく、国民に納得してもらうためにこそ、戦略を考える必要があります。中曽根行革では、「工程表」という言葉が使われました。

首相の役割は、政治課題を選び、解決していくことです。人を動かして、それを実現することが腕の見せ所です。政治力とは、人を動かすことです。
首相が打ち出す政策には、全体の目標と体系が必要です。各政策に工程表が必要なのと同様に、首相が目指す日本に向けての工程表が必要です。

東奥日報に載りました

2024年2月26日   岡本全勝

2月18日の東奥日報(青森県の地方紙)「大島理森の道8 東日本大震災」に、私の発言「官邸と役人の能力引き出す」が載りました。大島理森・元衆議院議長を取り上げた連載です。今号は、大島先生が自民党の東日本大震災復興加速化本部長時代です。

自民党が政権に復帰したのは、2012年12月。大島先生が自民党復興加速化本部長に就任され、直ちに党本部の本部長室に呼ばれました。「復興を進めるために何をしなければならないか」と問われ、私が「あれも、これも、それも・・・」と列挙すると、バーンと机をたたいて、「急ぐものはどれだ」と一喝されました。
そこで、住宅建設を最優先にすることが決まりました。当時の私は、取り組むべき課題はそれぞれ重要で、どれもこれも急がなければならないと悩んでいました。それを整理して、優先順位をつけてくださいました。これは、官僚にはできないことです。

次に、復興の大まかな方針を決めてくださいました。各省や東電を呼んで、ご自身で論点を整理されたのです。もちろん、お手伝いはしましたが。そしてそれを紙にして、「政府への提言とする」とおっしゃいました。
私は、面倒なことになるなあと思いつつ、大島先生の指示で官邸に向かい、菅官房長官と安倍首相に説明しました。お二人は「どうすればよいのか」と聞かれたので、「この提言を総理と官房長官が受け取っていただき、横にいる復興大臣に『このように進めるように』と指示を出していただければ」と答えました。大島先生は、連立与党である公明党の加速化本部長である井上義久先生に連絡を取られ、井上先生にも説明に行きました。そして、両党の提言として、段取り通り進みました。その後、定期的に与党提言を使って、難題を進めることができました。

官僚を使いこなす政治主導、そして官邸を動かして実現する素晴らしい実例でした。

連載「公共を創る」第178回

2024年2月16日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第178回「政府の役割の再定義ー職員育成の見直しに向けて」が、発行されました。前回から、官僚の「やりがい」を議論しています。

霞が関全体の政策を見てみると、重要な課題が変わってきたことも挙げられます。例えば、発展途上期は、道路整備や義務教育に当たる教職員の確保は国家にとって大きな課題でした。しかしそれらの仕組みが確立し、定着しました。国が基準と計画をつくり、財源を確保しておけば、自治体に任せても問題なく運営されるでしょう。国民は官僚に対し、いつまでも補助金配分作業を続けることを期待していません。官僚には、そのような作業を手放し、能力を新しい企画に使ってほしいです。

次に雇用者側が取り組むべきは、育成の見直しです。かつては意識しなくても、適当な競争と職場での研鑽によって組織にとって必要な人材は得られると考えられ、実際にそれでほとんどの組織は対応できてきたのです。しかし、雇用者側にとっても働く側にとってもうまくいかなくなり、このままではだめだという意識が広がっています。

一言で言うと、これまでの技能の習得は「周囲の先輩を見て覚えよ」であり、育成手法は「ところてん式の人事異動」でした。それは典型的なオン・ザ・ジョブ型研修と画一的な登用方式ですが、実際には本人の適性や希望はあまり意識せず、能力開発は本人任せで、要領よく前例通りの仕事を覚えることを求めていただけでした。雇用側としての戦略や配慮より、人事担当の効率性を重視した人事行政だったと言わざるを得ません。
さらに、人材育成だけでなく、「人材確保」と「職場環境の整備」にも問題は拡大しています。

職場で求められる専門性について、政策分野別専門性とともに、機能別専門性についても指摘しました。すなわち前者を縦割りとすると、後者は横割りです。会計、発注、公金徴収、調査・統計、文書管理など、どの分野にも共通する定型的な業務です。これらの業務が民間委託できないのは、本来事務と一体をなしているからです。
これまでは、その席に長く座った職員が専門家となっていたようです。それではすまなくなりました。特に技能の習得が必要となっているものに、電算化、文書管理、検査監督業務などがあります。