カテゴリー別アーカイブ: 主な著作

著作の解説2 日本の政治と行政

1 今後の日本の政治と行政
①「地方自治50年私たちの得たもの忘れてきたもの」(1997年、富山県職員研修所)と、「失われた10年と改革の10年-最近の地方行財政の成果」月刊『地方自治』(ぎょうせい)2001年5月号は、これまでの行政を、長期的な視点から論じたものです。
また、「豊かな社会の地方行政-工業化社会からポストモダンへ」月刊『地方自治』2002年5月号は、社会の変化に応じたこれからの地方行政の在り方について論じたものです。
それらを発展させて、東大で講義をしました。講義内容は加筆して、「地方自治50年の成果と課題」として『地方行政』に連載しました(2002年7月~2003年4月)。
②それを単行本にまとめたのが、「新地方自治入門-行政の現在と未来」(時事通信社、2003年10月)です。

③「予算編成の変化」月刊『地方財務』2003年12月号は、右肩上がりの時代と現在とで、大蔵省の査定・各県や市町村財政課の査定が、どのように変わったか。私の体験を踏まえて、論じてみました。
若い職員には信じられないでしょうが、かつては「要求基準前年度比150%」という時代があったのです。プラス50%ですよ。財政課のステイタスも高く、「財政課にあらずんば人にあらず」というような風潮もありました。中央政府においては、もっと極端だったそうですが。今なお、そんな俗説を信じている人(マスコミ)もたくさんいます。その「神話」を検証してみました。各地方団体の財政課員の皆さん、財政課に頭を下げている要求側の皆さん、一読してください。批判も、お待ちしています。予算査定の在り方を論じました。財政担当の方、ご一読ください。(東大での研究会では、これを基に、大蔵省や財政課の「予算を通じた権力」を議論しました。いつか、別にまとめたいと考えています。)(2003年11月28日)

「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」月刊『地方財務』(ぎょうせい2007年8月号
『地方財務』今月号に、再チャレンジ特集を組んでもらいました。私の他は、「再チャレンジ支援策の概要」(黒田岳士・再チャレンジ室企画官、旧経企庁)、「地域における若者の自立支援」(美濃芳郎・再チャレンジ室企画官、旧労働省)、「暮らしの複線化の推進」(森山誠二・再チャレンジ室企画官、旧建設省)、「交流居住、移住促進政策の推進」(菊地健太郎・総務省補佐、旧自治省)、「ささやかですが、北海道から新たな『日本の笑顔』を創ります」(大山慎介・北海道庁主幹)です。すごい執筆陣だと、思いませんか(自画自賛)。
なぜ『地方財務』で再チャレンジを、という疑問をもたれた方もおられるでしょう。しかし、私は、出納簿の計算を合わせることや、歳出を削ることが、財政ではないと考えています。財政は手段であって、目的ではありません。数字合わせなら、電卓に0.9を定数として入れて、すべての支出にかければいいのです。
今の職場で、行政の新しい形を考える機会をいただきました。中でも、地域の若者を育てること(美濃論文)は、地域と自治体の最大の使命です。「新地方自治入門」に書いた、「モノの20世紀から関係の21世紀へ」の代表例です。しかも、そんなに多額のお金は、必要ありません。市町村の財政担当者や企画担当者に、一緒にこれからの自治体を考えて欲しいのです。「?」とお思いの方は、拙稿をお読みください。次のような内容です。
1 再チャレンジ支援策の目的
2 行政の変化
(1)対象、(2)手段、(3)評価、(4)手法、(5)役割
3 再チャレンジ支援があぶり出したもの
(1)単線型社会、(2)外部に冷たいムラ社会、(3)仕事優先
4 地方団体の役割
(1)社会の大転換と行政、(2)地方団体への期待
なお、これまでの行政とこれからの行政の違いを、簡単な表行政の変化にしてあります。
(2007年8月3日、12月31日)

2 省庁改革
①平成10年から3年間、内閣に出向し、省庁再編を担当しました。その内容を「省庁改革の現場から」にまとめました。2001年に行われた省庁改革の概要のほか、国家行政機構のあらまし、政治と行政(政と官)の在り方などを解説しています。
②「中央省庁改革における審議会の整理」は、2001年の省庁改革に併せ、審議会を大幅に整理した際の考え方をまとめたものです。
永年批判があった審議会を、211から90に半減しました。そのほか、審議会についての問題点や論点も、網羅してあります。審議会を考える際には、役に立つと思います。これも、類書が無いと思います。

3 行政構造改革
連載「行政構造改革-日本の行政と官僚の未来」月刊『地方財務』(ぎょうせい2007年9月号から

行政改革の現在位置~その進化と課題」年報『公共政策学』第5号(2011年3月、北海道大学公共政策大学院)
北海道大学公共政策大学院の年報『公共政策学』に、拙稿「行政改革の現在位置~その進化と課題」が載りました。抜き刷りも送っていただいたので、関係者に送る準備をしているのですが。インターネットでも読めるのは、便利なものですね。宮脇淳先生から執筆依頼を受け、長年温めていたテーマを論文にしました。詳しくは、「行政改革の分類」のページへ。(2011年4月29日)

連載社会のリスクの変化と行政の役割月刊『地方財務』(ぎょうせい)2010年10月号から2011年4月号。中断中。

4 大震災と復興
東日本大震災 復興が日本を変える2016年、ぎょうせい

「地震・原発災害からの復興と地方自治」
日本地方財政学会編『地方分権の10年と沖縄、震災復興』(2012年、勁草書房。地方財政学会年報)
2011年9月に行われた、地方財政学会のシンポジウムの記録です。私も、パネリストを務めました。(2012年3月15日)

「被災地で考える「町とは何か」~NPOなどと連携した地域経営へ~」
(共同通信社のサイト「47ニュース、ふるさと発信」2012年8月31日)
「NPOと行政の関係を、書いてください」という注文でしたので、いま携わっている復興の仕事を通じて、考えていたことを書きました。
今回の大震災では、津波によって、町そのものが流された地域が多くあります。すると、ほぼゼロの状態から町を復旧しなければなりません。その過程を通じて、町には何が必要かがわかります。すなわち、町は何から成り立っているかが、見えてくるのです。そして、阪神淡路大震災と今回の大震災で、復興のために何が違うかが、見えます。道路や住宅を再建しただけでは、住民の暮らしや町の賑わいは、戻らないのです(第1章)。
第2章では、その観点から、行政学や財政学に議論を広げて、行政の役割の変化を論じました。最近書いていた関係する文章を再考してまとめたので、近年のいくつかの拙稿が基になっています。これらを読み返してみて、近年は同じようなことを、一つの共通する視点で考えていたことに気づきました、
第4章では、被災地での、NPOの活躍を紹介しました。リンクを張ってあるので、詳しく見る際には、便利ですよ。少ししか事例を紹介できなくて、申し訳ありません。いずれ、体系だって整理するように、NPO連携班の諸君が努力中です。
ディスプレイ上で読むには、結構な分量です。印刷して、ゆっくりお読みください。(2012年8月31日)

「東日本大震災からの復興―試される政府の能力」、日本行政学会年報
拙稿「東日本大震災からの復興―試される政府の能力」が載った日本行政学会編『東日本大震災における行政の役割』(年報行政研究48、2013年5月、ぎょうせい)が発行されました。この本は、日本行政学会の年報です。2012年の総会・研究会での発表を基に特集が組まれ、冒頭に拙稿を載せていただきました。行政学の大家と並べてもらい、とても光栄なことです。
発災以来2年間の取り組みと、それから得られた教訓を整理しました。行政学会なので、政府が何をしたか、何が変わったか、何を変えなければいけないかの視点を盛り込んであります。
副題も、千年に一度の津波と過去に例のない規模の原発事故災害を踏まえ、「試される政府の能力」としました。このような報告も、実務に携わり責任を担った官僚の務めだと考えています。
A5判で18ページの小論ですが、短いが故に執筆には苦労しました。書きたいことをたくさん削除し、かつ全体像をバランスよく書く必要がありました。他方、全体像をつかむには、読みやすいと思います。
目次は、次の通りです。
1 災害の特徴と復旧の現状
(1)被害の特徴、(2)効果的な救助と早い復旧、(3)復興への課題
2 政府の取り組みと民間の貢献
(1)生かされた経験と経験のない取り組み、(2)地方自治体による応援、(3)民間の活動
3 救助と復旧から見える日本の行政
(1)国土の復旧から生活の再建支援へ、(2)試される政府の能力、(3)大震災によって見えた日本社会

私の他に、飯尾潤先生が「東日本大震災に対する復興政策:構想と論点」、室崎益輝先生が「東日本大震災から見えてきた減災行政の課題」、森田朗先生が「東日本大震災の教訓と市民社会の安全確保」を、執筆しておられます。筆者の立場と視角が異なると、違ったものが見えてきます。これだけの大きな災害であり、いろんな観点からの考察が必要です。拙稿と合わせて読まれることを、お勧めします。(2013年5月14日)

(地方財政学会年報)
日本地方財政学会編『原子力災害と地方自治体の財政運営日本地方財政学会研究叢書)』(2015年、勁草書房)が出版されました。2014年5月に福島大学で開かれた、日本地方財政学会第22回大会の特集です。シンポジウム「原子力災害と地方自治体」には、私も参加したので、少しだけ発言が載っています。(2015年2月28日)

「復興の現状と課題―未曾有の事態へどのように対応してきたのか」
地方自治体向けの月刊誌『地方財務』(ぎょうせい)2015年4月号に、「東日本大震災から4年―復興へのあゆみと地方創生のヒント」を、特集してもらいました。次のような内容です。
1 復興の現状と課題―未曾有の事態へどのように対応してきたのか 小生執筆
2 福島復興の加速化―地震、津波、原子力発電所事故の三重災害からの復興 田谷聡・福島復興局長執筆
3 被災自治体への財政支援及び人的応援 海老原諭・復興庁参事官執筆
4 「新しい東北」の創造―産業・生業の再生、コミュニティ形成への新手法 小川善之・復興庁参事官補佐執筆
5 企業の力で産業・コミュニティを復興する 藤沢烈さん執筆
長尾編集長の指示により、自治体職員向けに構成しました。そこで、4年経った時点での復興の現状と課題だけでなく、私の原稿では、これまでにない課題にどのように対応したか、そしてどのように組織を作ったかを書きました。岡本全勝と職員たちの、この4年間の努力=技と作品=苦労の記録です。これは今後、霞が関で新しい課題について新しい組織を作る際の教科書になるでしょう。同様に、地方自治体の幹部にも、参考になると思います。また、地方での現在の第一の課題である地方創生に関して、被災地で進めている「新しい東北」という地域振興の取り組みを紹介するとともに、行政だけではできない部分を民間の力をどのように活用するかを書いてもらいました。
拙稿は、次のような構成になっています。
「第一章 5年目を迎える復興」は、復興庁資料でも公表しているとおりです。「第二章 復興庁をつくる」が、これまでにない課題にどのように対応したか、そしてそのためにどのように組織を作ったかです。
それを、「明快な目標」「効率的な組織」「関係者の理解」の3つに分けて解説しました。私の苦労の整理です。「明るい官房長講座」あるいは「明るい総務部長講座」です。新しい組織作りに悩んでおられる方や、これまでにない課題に取り組む方に、お役に立つと思います。
一 5年目を迎える復興
1 天災と原発事故、異なる復興
2 現状と課題
(1)住宅再建とまちづくり (2)産業と生業の再生 (3)被災者の健康と生活の支援 (4)原発事故からの復興 (5)新しい東北の創造
3 今後の見通し
(1)復興の完了を目指して (2)原発事故処理
二 復興庁をつくる
1 これまでにない課題にどう取り組んだか
(1)明快な目標=優先順位の設定と工程表の作成 (2)効率的な組織=組織作りと社風作り (3)関係者の理解=意思統一と国民の理解
2 新しい取り組み、新しい手法
(1)政府が行った新しい取り組み (2)企業やNPOとの協働
(2015年4月3日)

続・進む三位一体改革

「進む三位一体改革(3)」月刊『地方財務』2005年6月号所収
進む三位一体改革-評価と課題(月刊『地方財務』2004年8月号、9月号)の続きです。16年度中の動きを解説してあります。訂正です。p121上段7行目「同等部会」は「合同部会」の間違いです。(6月2日)

  目次
はじめに
第六章 平成一七、一八年度の「全体像」決定
1 地方案の決定
(1)経過 (2)戦う知事会 (3)概要
2 政府での協議
(1)国と地方との協議 (2)各省の抵抗 (3)財務省による「攪乱」 (4)総務省の提言 (5)与党との協議
3 政府案決定
(1)概要 (2)地方案との違いと残されたこと
4 平成一七年度分
(1)国庫補助金改革 (2)税源移譲 (3)地方交付税 (4)その他 (5)累計
5 評価
(1)地方団体の反応 (2)新聞の論調 (3)評価その一ー実現度 (4)評価その二ー過程 (5)一六年度予算への反省の成果
第七章 三位一体改革の位置付け
1 地方分権としての評価
(1)短期 (2)中期 (3)戦略論
2 政治改革としての評価
(1)政治権力論 (2)政治構造論
第八章 これから
1 三位一体改革に残されたこと
(1)平成一七年の動き (2)中長期課題
2 その次の地方行政
(1)自治の運用の充実 (2)地方財政の新たな地平
あとがき

「進む三位一体改革(4)完」月刊『地方財務』2006年7月号
17年度中の動きと成果、4年間の成果と評価、これからの課題を書いてあります。82ページにわたる大作です。これで、三位一体改革第1期の解説と、アジテーションはひとまず完結です。
今回も、財政改革だけでなく、政治改革として分析しました。三位一体改革がなぜ進んだか、なぜ進まなかったか。他の改革や、現在の進行状況と比べて、要因を分析してあります。この間、いろんな方と議論しました。また意見を聞いてもらいました。その点では私の論文というより、私に論戦を挑んだ記者さん、学者の皆さんや国会議員さんとの合作です。私としては、類例のない論文と自負しています。ぜひ、お読みください。
早速訂正です。p114資料37の注4で「30.094億円」とあるのは「30,094億円」の間違い、注5で「7.393億円」とあるのは「7,393億円」の間違いです。(7月4日)

 目次
はじめに
第九章 三位一体改革の達成
1 平成一七年度の経過
(1)骨太の方針2005 (2)地方案の決定 (3)義務教育国庫負担金の扱い (4)生活保護の扱い (5)施設費の扱い (6)政府案の決定へ
2 政府案
(1)概要 (2)地方案との違い (3)評価
第一〇章 三位一体改革の成果
1 過程
(1)経過 (2)なぜ進んだか
2 成果の全体像
(1)補助金改革 (2)税源移譲 (3)交付税改革 (4)その他の項目 (5)波及効果
3 評価
(1)個別目標について (2)目的に照らして (3)政治へのインパクト (4)見えてきたこと (5)全体像についての評
第一一章 今後の課題
1 第二期改革にむけて
(1)第二期の課題 (2)現在の動き (3)どこへ向かうのか
2 地方財政改革の将来
(1)財政再建 (2)分権と自律 (3)戦略
あとがき

(その後)
この連載を1冊の本にしようと作業をしていましたが、挫折しました。時機を失してしまったのです。
その代わりとして、次の2論文に要約してあります。そちらをご覧ください。(2007.9,22)

「地方財政の将来」神野直彦編『三位一体改革と地方税財政-到達点と今後の課題』(2006年11月、学陽書房)所収は、三位一体改革の到達点を踏まえ、今後の課題と進め方を解説しました。
構成と執筆者は、次の通りです。意義と課題(神野先生)、経緯(佐藤文俊総務省自治財政局財政課長)、到達点・国庫補助負担金の改革(務台俊介前調整課長)、同・地方税の改革(株丹達也前自治税務局企画課長)、同・地方交付税の改革(黒田武一郎交付税課長)、地方財政の将来(私)です。

「三位一体改革の意義」「今後の課題と展望」『三位一体の改革と将来像』(ぎょうせい、2007年5月)所収
第1章総説の第1節「三位一体改革の意義」と第4節「今後の課題と展望」を、私が執筆しました。一部、「地方財政の将来」(神野直彦編『三位一体改革と地方税財政』学陽書房所収)と、重複している部分があります。ただし、今度の論文には、年表(目標の設定と達成度)や税目別税源配分の表なども、つけることができました。早速訂正です。p6の11行目、「その要因の2つは」とあるのは、「その要因の1つは」の間違いです。

先日、行政学の泰斗(私の行政学のお師匠様)とお話ししていたら、「必要があって、岡本君が書いた「進む三位一体改革」(月刊『地方財務』連載)を読んだけど、やたらと長かったね」とのお言葉。
「先生、すみません。あれは、関係者向けの実況中継だったんです。一冊の本にまとめるときは、そぎ落とそうと考えていたんですが、時機を失してしまいました」とお詫びしました。その代わりと言ってはなんですが、今回の論文が、要約になっています。短くすると、本当に言いたいことだけになって、わかりやすくなっています、自画自賛です、はい。(2007年6月1日、3日)

(祝『地方財務』700号)
月刊『地方財務』(ぎょうせい)が、700号を達成しました。昭和29年(1954年)6月から、58年かけてです。
私が昭和30年1月生まれですから、その半年前ですね。それは全く関係ないとして、地方財政では、昭和29年度から地方交付税制度が始まっています。私が交付税課長の時(2001~2003年)に、「50周年記念をしなければ」と職員と議論していたことを、思い出しました。
記念論文として、小西砂千夫先生が、10編の論考を選んで、概要を紹介しておられます。半世紀以上の歴史を振り返り、代表的論文を選ぶことは、大変な作業だったと思います。小西先生、ありがとうございます。私にもう少し暇があれば、お手伝いできたのですが。
しかも、10編の中に、私の文章も選んでくださっています。「進む三位一体改革―その評価と課題」(2004年8月、9月、2005年1月、6月号)です。身に余る紹介をいただいて、恐縮です。その中で、小西先生は次のようなことも書いておられます。
・・できごとに対して、当事者がどのように反応したかを直接話法で表現しているところも、現役官僚の文章とは思えない斬新さを感じさせる。
論文の中で、「・・・と私は考えた」といった表現が散見される。それは、筆者が目の前の事象をどのようにみたか、何が論点であり、制度改正が実現するうえでどこが転換点であったかなどを、一人称でリアルに書こうとしているからである。そのような鋭い論評がちりばめられていることが、他の岡本論文にも通じる魅力である・・
この原稿は、交付税課長を終え、官房総務課長で国会を走り回っている頃に書いたものです。当時は、このホームページで、毎日実況中継していました(6 三位一体改革の記録)。振り返ると、懐かしいですね。書いておけば残ります。
後に、西尾勝先生から、「必要があって、岡本君が書いた『進む三位一体改革』を読んだけど、やたらと長かったね」との「おしかり」をいただきました。たぶん、先生が『地方分権改革』(2007年、東大出版会)を書かれる際のことだと思います。私は、「先生、すみません。あれは、関係者向けの実況中継だったんです。一冊の本にまとめるときは、そぎ落とそうと考えていたんですが、時機を失してしまいました」とお詫びしました。そんな思い出もあります。
さらにその後、私は内閣官房や官邸の仕事が主になって、地方財政から離れました。
(2012年10月3日)

著作の解説3 行政管理

私の関心の3は、組織管理論・官僚論です。

1 人事管理・公務員
これまで、いろいろなところで、組織管理を経験しました。職場での部下の悩み、上司の悩みは尽きませんが、「経験者」から見ると案外簡単なことで悩んでいる場合が多いです。「明るい係長講座」は、富山県総務部長の時に作った小冊子です。
それを基に、時事通信社『地方行政』に明るい公務員講座を連載し、後に本にまとめました。
明るい公務員講座 管理職のオキテ』(2019年、時事通信社)
明るい公務員講座 仕事の達人編』(2018年、時事通信社)
明るい公務員講座(2017年、時事通信社)

デルクイ」は、富山県在職中に創った、県職員による政策情報誌です。市販しています。デルクイ発刊趣意(『デルクイ』創刊準備号1996年)に、私の意図を書いてあります。

インタビュー「官僚論」月刊『時評』2004年10月号は、現在の官僚の機能不全と解決策としてのスパーゼロ種官僚の創設を提言しました。提言・国家官僚養成のページに再録してあります。
月刊『時評』10月号に、小生のインタビューが載りました。「国家官僚の養成に向けて人事制度を改めよ」「省庁にとらわれないスーパーゼロ種官僚の創設を」という内容です。(2004年9月30日)
専門誌なのであまり読まれないと思っていたのですが、結構、反応がありました。霞が関の先輩からは、多くの励ましの言葉をもらいました。新聞記者さんからは「岡本さんのような人もいるんですねえ・・」とか「よく言った。もっと書け」と。もっとも、企業の知人からは「大丈夫ですか?」と心配の言葉も。(2004年10月月9日)

「不思議な公務員の世界ーガラパゴスゾウガメは生き残れるか」『地方自治』2008年5月号(ぎょうせい)
大連載を書くに当たって考えた官庁の問題を、3つにまとめてみました。1つは、職場の汚さです。2つめは、生産性の低さです。3つめは、転職できるかです。民間企業と比べ、その特殊性を論じてみました。
日本の技術が進化を遂げ、しかし世界では通用しないことを、ガラパゴス化と揶揄します。それで言うと、日本の官庁は、世界とは異なった日本社会で、さらに民間とも違う世界をつくりあげました。その意味では、2重のガラパゴス化です。公務員というガラパゴスゾウガメは、ガラパゴス諸島では王者ですが、隔離がなくなったら生きていけるのでしょうか。厳しすぎるという意見もあるでしょう。皆さんのご批判を待っています。
訂正です。p14注5で、「予算重視への転換」とあるのは、「予算重視から結果重視への転換」の間違いです。

「安心国家での地方公務員の役割」
月刊『地方公務員月報』2011年4月号(総務省自治行政局公務員課)。詳しくは「明るい課長講座」へ。(2011年5月7日)
私は、現代国家に求められるものが、福祉国家から安心国家へ変化していると、とらえています。そこでは、まず対象が、福祉から安心に変化します。そして、手段が、提供から保障へ転換します。すると、行政の役割や手法が大きく変化します。

2 行政改革
①「富山県庁の挑戦-私の行政改革論」は、富山県総務部長の時に、体験をもとに書いた実践的行革論です。
世の中、行革の理論編はたくさん書かれていますが、理論編だけで進むのなら苦労しません(年間4回、お詫びの記者会見をした部長の経験談です)。地方公共団体の管理職で行革に悩んでおられる方、ご一読下さい。もっとも、団体ごとに条件が違いますから、私の考えがすべての場合に役に立つわけではありませんが。

「行政改革の現在位置~その進化と課題」北海道大学公共政策大学院年報『公共政策学』(2011年3月)は、1990年代以降の行政改革を整理し、範囲と目的が広がってきたことを論じました。詳しくは、「行政改革の分類」のページをご覧下さい。(2011年4月29日)

省庁改革については、著作の解説2 日本の政治と行政のページを見てください。

社会のリスクの変化と行政の役割2

社会のリスクの変化と行政の役割から続く

拙稿『社会のリスクの変化と行政の役割』第5回が載った、『地方財務』2月号が、発行されました。
今回は、第4章「政府の役割の変化」第1節「リスクに対する政府の役割」です。地震、交通事故、新型インフルエンザ、引きこもりといった典型的なリスクに対して、政府(中央、地方)がどのような役割を果たしているかを整理しました。このように対象を広げて社会のリスクを見た場合に、何が共通していて何が違うかです。このような横串的な視点は、これまでになかったと思います。
そして、政府の役割について、現場での対策とともに、対策全体の企画と管理が、重要であることを指摘しました。ご関心ある方は、お読みください。(2011年2月2日)

連載、社会のリスク論第6回が載った、月刊『地方財務』3月号が、発行されました。今回は、第4章「政府の役割の変化」第2節「個人の責任、政府の責任」です。
リスク対策が進み、政府による対策は拡大しました。それは、個人責任が社会の責任になる変化です。しかし、対策が拡大すると経費がかかり、それだけ国民の負担が大きくなります。また、阪神淡路大震災が示したのは、公助だけでは被災者を救えないということでした。そして、緊急性が少ないのに救急車を呼ぶ人がいます。本人は無料ですが、その費用は住民が負担しているのです。
各人が加入する保険ならば、給付・保障が増えれば、本人の掛金が多くなります。しかし、公助では、負担が不明確になります。自己責任と公助をどう組み合わせるか。これが課題になっています。これらの点を議論しました。(2011年3月2日)

連載「社会のリスクの変化と行政の役割」第7回が載った、月刊『地方財務』4月号が発行されました。異動の前に、校正まで終わっていたので、載せてもらいました。もっとも、肩書きは前のままになっています。
今回は、現代の「福祉国家」が、「安心国家」に転換しつつあることを論じました。そして、その社会的背景も、世界の先達の論考を参考に、議論してみました。自分では、力作だと思っているのですが。
続きは、しばらく書けそうもないので、いったん中断します。申し訳ありません。(2011年4月2日)

(拙稿、日本行政学会年報、その2。連載再開準備)
ところで、森田朗先生の「東日本大震災の教訓と市民社会の安全確保」では、フィンランドの総合的な危機管理体制「社会機能確保のための戦略」が、紹介されています。
そこに、政府が守るべき3つの価値、国家主権、社会の安全、市民生活が掲げられ、9つの脅威(リスク)が列挙されています。電力と通信網(社会インフラ)の障害、市民の健康と経済生活の障害(不況、大規模な感染症)、社会全体の経済危機、大規模な事故や自然災害、地球環境の変化、テロと組織犯罪、不法移民や禁制品の密輸、外国による政治的軍事的圧力、軍事的侵略です。

私は、連載「社会のリスクと行政の役割」(月刊『地方財務』2010年10月号~2011年4月号)で、私たちを取り巻く新しいリスクを、原因と被害の種類によって分類し、表(資料1-1)にしました。それは、武力・テロ、自然災害、事故、犯罪、環境問題、健康問題、経済社会活動の混乱、社会生活問題、経済問題の9つです。9つは偶然の一致ですが、私の取り上げた範囲と項目とほぼ同じことに、安心するとともに満足しました。
私はさらに、これら9つのリスクを対策の観点から、武力攻撃事態や災害への備え、事故や犯罪への対策、健康の危険への対策、社会生活の危険への対策の4つに大括りして、論じました。
連載は、私が大震災対応に招集され時間がなくなって、中断したままです。切りよく、第1部の「社会のリスク」を終えたところで中断しています。そこで、第2部の「行政組織のリスク」(かなり準備してあったのですが)を、大震災の経験を踏まえて、書きなおすことを計画中です。長尾編集長、もう少しお待ちください。

進む三位一体改革ーその評価と課題

月刊『地方財務』(ぎょうせい)2004年8月号、9月号
続きは、続・進む三位一体改革に書きました。

私が、月刊『地方財政』(地方財務協会)に「地方税財源充実強化の選択肢」という論文を書き、税源移譲などの選択肢を論じたのは、平成13年4月でした。その後、地方財政改革とも言うべき動きが動き出しました(もっとも、私が動かしたのではありませんが)。
経済財政諮問会議の提言等を踏まえ、交付税課長としていくつかの地方交付税改革に着手しました。その動きを取り入れて解説したのが、「地方財政改革論議ー地方交付税の将来像」(ぎょうせい、平成14年)です。その出版以来、約2年が経過しました。
正直言って、平成13年時点では、その後直ちに、これほど大きな交付税改革が進むとは考えていませんでした。14年の執筆時点でも、ここまで税源移譲が進むとは思っていませんでした。これは、関係者みんなの共通意見でしょう。三位一体改革が動き出し、かつ期限と数字目標が設定され、それに沿って進んでいることに、感慨無量のものがあります。

しかし、三位一体改革が進んでいることを、喜んでいるだけではいけないのでしょう。平成16年夏に、政府が地方団体に投げたボール「補助金改革案を取りまとめること」は、きちんと打ち返さなければなりません。いくつかの地方団体には、三位一体改革に対し不安もあります。今後の進め方について、理解を得る必要もあります。
今回の三位一体改革は、「走りながら考える」かたちをとってきました。確かに、地方税財源充実強化の方向性としては、関係者の間に共通理解はありました。「国庫補助金削減、税源移譲」です。しかし、具体策になると、十分まとまっていたとは言えません。
走りながら考え、考えながら走ってきました。問題点が見えるたびに、次の手を打ってきたのです。
三位一体改革が進みつつある今、われわれがしなければならないことは、これから2年間に残るノルマを達成することです。そして、「三位一体改革その一」が進んだ後の、次なる「三位一体改革その二」への道筋をつけることでしょう。克服しなければならない課題は、たくさんあります。

  目次
第一章 「三位一体改革」の設定
1 設定まで(平成一三年)
(1)第一次分権改革の成功 (2)予想外の展開ー経済財政諮問会議 (3)地方交付税の算定の見直し
2 「三位一体改革」方針の決定(平成一四年)
(1)「片山プラン」 (2)「骨太の方針二〇〇二」 (3)三位一体の意味 (4)一五年度の芽だし
3 数値目標の設定(平成一五年)
(1)協議不調 (2)分権改革推進会議の「迷走」 (3)「骨太の方針二〇〇三」 (4)その評価 (5)秋の動き

第二章 平成一六年度の成果と評価
1 経過
(1)総理指示 (2)麻生プラン (3)補助率カット案拒否 (4)幻のたばこ税移譲 (5)総理のリーダーシップ
2 初年度の成果
(1)概要 (2)成果
3 関係者の評価
(1)プラスの評価 (2)マイナスの評価 
4 いくつかの論点
5 評価
(1)平成一六年度分の評価 (2)三か年間の評価

第三章 一七年度に向けて
1 これまでの動き
(1)麻生プラン (2)「骨太の方針二〇〇四」 (3)評価一ー進む改革(4)評価二ー政治的意味
2 今後の予想
(1)残されたノルマ (2)対象補助金の選択 (3)地方団体の責任 (4)全体像の明示 (5)関係者の協力と国の決断

第四章 「三位一体改革」の次に来るもの
1 三位一体改革の続き
(1)三位一体改革その二、その三 (2)検討すべき課題一ーどこまで補助金を廃止するか (3)検討すべき課題二ー税源移譲の構想
2 ポスト三位一体改革
(1)財政再建 (2)規制の分権
3 地方財政の将来
(1)財政再建と歳出削減 (2)増税の準備 (3)交付税の将来像

第五章 見えてきたこと
1 地方財政の新展開
(1)理論と政治 (2)動き出した地方財政
2 構造改革
(1)新しい政治の形 (2)改革が進む条件 (3)この国のかたちを変える