カテゴリーアーカイブ:社会の見方

日本の幹部教育の失敗。初中等教育への賞賛と、大学教育の凡庸さ

2011年5月25日   岡本全勝

4月20日の日経新聞経済教室に、苅谷剛彦オックスフォード大学教授が、「学歴インフレ脱却急げ」を書いておられました。
今回の大震災と原発事故に際し、社会の土台や現場を支える一般ないし中堅の人たちの、整然とした助け合いと献身的な救助活動と事故処理に比べ、指導力を発揮し責任を負うべき「幹部」たち(政治家、官僚、電力会社のトップ)の対応に疑問符がつけられたこと。予想を超えた緊急事態とはいえ、いや、まさにそういうときだからこそ、指導的立場にある人々の「底」が見えたことを指摘し、これは日本の教育の国際的な評価、すなわち初中等教育への賞賛と、大学教育の凡庸さという見方とも符合すると主張されます。そして、次のように述べておられます。
・・1998年以後、新卒就職者に占める4年制大学卒業者の割合が高卒者を抜き、学校を終え仕事に就く若者の主流が大卒者になった。ところが、大卒者の就職の仕組みは、実質的にはいまだに「大学教育無用論」と呼べる状態が続いている。大卒者の大半を占める文系就職の場合、大学で何を学んだかが就職の際に問われない。どの学部を出たのかもどんな成績を取ったかもである。他方で、大企業や有名企業への就職のチャンスは、実態としては今でも大学の偏差値ランクの影響を受ける。
こういう状態が続いてきたのには理由がある。90年代半ばまでは、長期雇用と長時間労働を前提とした、仕事に就いてからの職業訓練の仕組みが、良くも悪くも機能した・・
・・他の先進国で学歴インフレという場合、ある企業に就くために有利となる学歴が、学部卒から大学院修了と変化するように、より高い段階への学歴へのシフトを意味する。知識経済化の下では、教育年数といった量の増加だけではなく、そこで行われる教育内容の高度化の面からも、人的資本の向上が求められる。高学歴化の一層の進展はその反映といわれる。
それに対し、日本で生じている学歴インフレは(理工系を除き)、大学入学時の偏差値ランクの上昇による選抜基準の上方シフトという、ふるい分けの面での変化であり、教育内容の高度化や教育年数の増加を伴わない・・
・・様々な比較調査が示すように、国際的にみても日本の大学生は大学外での学習時間が相当に短い。授業に予習が課されることもほとんどない。それは選抜度の高い大学でも変わりない。たくさんの文献を読みこなし、自分の考えを論理的に表現することが求められるリポートを書き、議論の仕方を身につけ、良い成績を収めてされに大学院で専門教育を受けるー米国の有力大学や筆者が勤務する大学では当たり前に行われていることに比べると、日本の大学はアルバイトと就職活動のための期間に見えてしまう・・
詳しくは、原文をお読み下さい。

続、強い現場・弱い本部

2011年5月13日   岡本全勝

先日、藤本隆宏先生の「強い現場・弱い本部」を紹介しました(2011年5月19日の記事)。新聞切り抜きを整理していたら、3月29日の日経新聞経済教室に、先生が今回の大震災に関して、「現場重視を復興の起点に」を書いておられるのに気づきました。それにしても、長く放置してあったものです。ようやく、整理する時間ができました(反省)。重複する部分は省略するとして、いくつかを引用します。
・・こうした日本の組織は「緩慢に来る危機」には概して弱い。目標が定まらず、互いに見合って責任が曖昧になる。幕末の幕府、戦前・戦中の軍部ほか(丸山真男説)、バブル崩壊後の政府・金融界、等々。しかし「復興」局面には強い。目標が定まれば、互いの配慮と幅広い分業が協働効果をもたらすからだ・・
・・今は被災地の現場の復旧に関心が集中するが、より長期的には、日本に「良いものづくり現場」を残していくことが、経済社会の復活にとり必須だ。「広義のものづくり」はサービス業や農業も含むが、特に貿易財において「良い現場」を残すことが「強い日本の復興」の起点となる・・国内に良い現場を残すことは、もはや国家の経済安全保障上の重要事項である・・

日本がくしゃみをすると

2011年5月1日   岡本全勝

4月30日の日経新聞「世界景気、回復は続くか」に、次のような記述がありました。
・・みずほ証券リサーチ&コンサルティングの試算によれば、日本の名目経済成長率が1.5ポイント低下した場合、東南アジア諸国連合(ASEAN)の成長率を0.43ポイント押し下げる・・
かつて日本の経済がアメリカに依存していた頃、「アメリカがくしゃみをすると、日本が風邪を引く」といった表現がありました。確かに、日本経済の規模が大きくなり、海外との交易が多くなると、日本経済が世界経済に及ぼす影響も大きいのですね。
今回の大震災で、日本の部品メーカーが生産を中断することで、日本国内だけでなくアジアやアメリカの会社や工場が、部品が調達できず、減産に追い込まれた例も多かったとのことです。

世代間の負担と受益の差

2011年3月14日   岡本全勝

地震のような瞬間的衝撃的なリスクの他に、緩慢なリスクがあります。日々のリスクの高まりは少しずつで目立たないのですが、長期間でその結果を見ると、大変な「被害」が生じるものです。
3月14日の日経新聞経済教室は、島澤諭准教授の「人口減少と世代間格差。主要国で最悪、改革が急務」でした。既に指摘されていることですが、世代別の数字を表にしてみると、改めて、とんでもないことをしていることがわかります。
政府への負担と政府からの受益の差を見ると、70歳の人は1,500万円の受益超過、50歳の人は700万円の負担超過、20歳の若者は2,700万円の負担超過です。少子高齢化、経済成長の鈍化で、高齢者は年金負担が少なくても、たくさんの年金をもらえます。
若者は、少ない人数で高齢者の年金を負担します。日々の暮らしやニュースでは見えにくいので、若者はこの事実に「衝撃」を受けていません。

男女雇用機会均等法25年

2011年3月13日   岡本全勝

3月10日の朝日新聞オピニオン欄が、「女たちの25年」として、男女雇用機会均等法施行25年を取り上げていました。まだ25年なのですね。
岩田喜美枝さんは、次のように述べておられます。
・・男女でまったく別だった雇用管理、二分化されていた女性の雇用管理がだんだんと一本化され、短時間勤務だとか、勤務時間の柔軟な選択だとか、多様な働き方を認める制度とともに、女性がどんどん活躍するようになったことは感慨を覚えます。
でも、この25年間でほとんど変わっていないこと、むしろ悪化したことが目について、均等法にかかわった私としては情けない、という気持ちにもなります。
ほとんど変わらないこと。それは女性が育児をきっかけに仕事を辞めてしまうことです。・・むしろ悪化したこと。それは、非正規労働者が増えたことです。働く女性の5割以上が非正規で、男女の賃金格差がまだ大きい原因でもあります・・