カテゴリーアーカイブ:社会の見方

インターネットに依存した社会への攻撃

2012年3月3日   岡本全勝

リチャード・クラーク+ロバート・ネイク著『核を超える脅威 世界サイバー戦争  見えない軍拡が始まった』(2011年、徳間書店)が、勉強になりました。
ハッカーによるインターネットへの不正な侵入や、フィッシングなど、新しい犯罪が多発していることは、よく知られています。それが、国家や社会に対する大がかりな攻撃になったらどうなるか。
インターネットに依存する社会になったことから、ミサイルや爆撃機を使わなくても、また兵士を戦場に動員しなくても、相手国に多大な被害を与えることができます。すなわち、国防では防空システムや軍隊の運用システム、兵站補給などのコンピュータ・システムに侵入し、混乱させるあるいは無能力な状態におけばよいのです。
軍隊のシステムに侵入しなくても、大手のインターネット・プロバイダや基幹通信網に侵入し、混乱させることで、情報通信で成り立っている経済などを大混乱に陥れることができます。
また、航空機の航空管制、新幹線などの運行管理システム、電力の監視システム、銀行の決済システムを混乱させるだけで、大事故が起こり、日常生活はほぼ壊滅します。一発の爆弾を落とさなくても、原爆を落とした以上の、あるいは東日本大震災並みの大被害を、全国や全世界にもたらすことができます。

やっかいなのは、敵国の軍隊だけでなく、市井のハッカーでも、この攻撃ができることです。そして、世界のどこからでも、攻撃できます。これまでの戦争や大がかりな犯罪は、必ず大きな基地やアジトがあって、目に付きました。偵察衛星や偵察機で、発見できたのです。しかし、どこかのマンションの1室で「こつこつと」不正なプログラムを組んでいる犯人を見つけることは不可能ですし、彼はどこか他国のコンピュータを乗っ取って、攻撃してくるのでしょう。攻撃が「安価に」できるだけでなく、防御が大変なのです。
ご関心ある方は、ご一読ください。いわれてみればなるほどと思うことですが、驚愕の事実です。「想定外だった」という言い訳は、許されませんね。
私は、政府や社会のリスク論に関心があって、勉強していたので、読んでみました。うーん、この連載も、危機対応(大震災対応)の現場に駆り出されて、中断したままです。反省。

空き屋対策

2012年2月29日   岡本全勝

「日経グローカル」1月23日号が、空き屋対策を特集していました。
総務省の調査では、人の住んでいない空き屋は、全国で757万戸、住宅全体に占める割合は13%だそうです。かつて土地と家屋は、第一の財産でした。しかし、地方では過疎化が進み、都会でも相続人がいなくて、空き屋が増えています。
今年の冬は積雪が多く、雪下ろしをしないと、積もった雪の重みで家が倒壊することも起きています。防犯や防火の観点からも、危険です。もちろん、景観も損ねます。
各地の自治体が、知恵を出して対策を講じています。土地を寄付してもらう代わりに、自治体が古家を取り壊すとか。時代が変わると、地域の課題も変化するという例の一つです。

送り出す際と受け入れる際の、使い分け

2012年2月22日   岡本全勝

2月18日の日経新聞夕刊、宮島喬お茶の水女子大名誉教授のインタビュー「築こう多文化社会」から。
・・バブル期の労働者不足を補うため、日系人の受け入れが決まった。受け入れるなら日本人労働者と平等にと思い、見守っていましたが、そうならなかった。多文化共生という言葉には、対等な関係を築くという響きがある。でも日本では、ほとんどの大企業が日系人を直接雇用しなかった。受け入れたのは、中小や下請け企業。それが対等の受け入れにならなかった原因です。日系人は、派遣や契約社員など非正規労働者になってしまった。ドイツのフォルクスワーゲンもフランスのルノーも、自社の生産ラインに移民を受け入れていました・・
・・日本は米国や南米などに、大量の移民を出してきた。それだけに戦前、米国で排日移民法が成立したときは、日本の世論が激高した。それなら日系人などが日本で働きたいと扉をたたくとき、自分たちの過去を思い、温かく迎えても良いのにと思います。送り出し国は、伝統的に受け入れの姿勢ができていない・・

ソフトウェアの働き

2012年2月14日   岡本全勝

玉井哲雄著『ソフトウェア社会のゆくえ』(2012年、岩波書店)が、勉強になりました。専門家向けでない、ソフトウェア、コンピュータやインターネットの社会への影響を解説した本です。よって、私のような文系の熟年社会人に、ぴったりでした。
「コンピュータ、ソフトなければただの箱」と言われるように、コンピュータを動かしているのも、携帯電話を動かしているのも、ソフトです。自動改札機も、銀行のATMが動くのも、新幹線が走るのも、ソフトがあるからです。冷蔵庫や炊飯器にも入っています。1台の自動車には、100個ものコンピュータが載っているとのことです。かつて、家庭に何個の時計があるかというクイズがあって、その多さに驚いたことがあります。しかし、今や1家庭にあるコンピュータの数は、すごいものでしょうね。

そして、携帯電話に書き込まれたプログラムは、1,000万行だそうです!
目に見えるモノではなく、符号ですから、素人にはつかみ所がありません。音楽で言えば楽譜でしょう。演奏され耳で聞けばわかりますが、オタマジャクシの行列では、なんのことやら。
本書は、ソフトウェアの言語としての機能、フリーなソフトがどうして成り立つか、ハッカー、ヒューマンエラー、産業としてのソフトウェア、著作権と特許権など。科学の解説書ではなく、社会への影響や産業としての視点など、多角的に分析してあります。
面白いです。ご一読をお勧めします。理科系でなくても、コンピュータがわからなくても、読みやすく理解できます。

日本経済の構造変化

2012年2月8日   岡本全勝

今日(2月8日)の夕刊各紙は、2011年の国際収支速報を取り上げていました。経常黒字が前年比44%減で、9.6兆円です。2007年には24兆円の黒字でしたから、この数年で、急激に減少しています。
貿易収支が48年ぶりに赤字になることは、すでにこのホームページでも、解説しました(31年ぶりと書きましたが、48年ぶりだそうです)。
また、朝日新聞朝刊の経済面「経済気象台」は、「日本の優良企業とは」でした。それによると、ソニーの従業員数は17万人。うち日本人は6万人で、海外での雇用者は11万人です。他方、保険会社のアフラックは、本社がアメリカですが、従業員の半分が日本人で、保険料総額の4分の3が日本だそうです。