インターネットに依存した社会への攻撃

リチャード・クラーク+ロバート・ネイク著『核を超える脅威 世界サイバー戦争  見えない軍拡が始まった』(2011年、徳間書店)が、勉強になりました。
ハッカーによるインターネットへの不正な侵入や、フィッシングなど、新しい犯罪が多発していることは、よく知られています。それが、国家や社会に対する大がかりな攻撃になったらどうなるか。
インターネットに依存する社会になったことから、ミサイルや爆撃機を使わなくても、また兵士を戦場に動員しなくても、相手国に多大な被害を与えることができます。すなわち、国防では防空システムや軍隊の運用システム、兵站補給などのコンピュータ・システムに侵入し、混乱させるあるいは無能力な状態におけばよいのです。
軍隊のシステムに侵入しなくても、大手のインターネット・プロバイダや基幹通信網に侵入し、混乱させることで、情報通信で成り立っている経済などを大混乱に陥れることができます。
また、航空機の航空管制、新幹線などの運行管理システム、電力の監視システム、銀行の決済システムを混乱させるだけで、大事故が起こり、日常生活はほぼ壊滅します。一発の爆弾を落とさなくても、原爆を落とした以上の、あるいは東日本大震災並みの大被害を、全国や全世界にもたらすことができます。

やっかいなのは、敵国の軍隊だけでなく、市井のハッカーでも、この攻撃ができることです。そして、世界のどこからでも、攻撃できます。これまでの戦争や大がかりな犯罪は、必ず大きな基地やアジトがあって、目に付きました。偵察衛星や偵察機で、発見できたのです。しかし、どこかのマンションの1室で「こつこつと」不正なプログラムを組んでいる犯人を見つけることは不可能ですし、彼はどこか他国のコンピュータを乗っ取って、攻撃してくるのでしょう。攻撃が「安価に」できるだけでなく、防御が大変なのです。
ご関心ある方は、ご一読ください。いわれてみればなるほどと思うことですが、驚愕の事実です。「想定外だった」という言い訳は、許されませんね。
私は、政府や社会のリスク論に関心があって、勉強していたので、読んでみました。うーん、この連載も、危機対応(大震災対応)の現場に駆り出されて、中断したままです。反省。