カテゴリーアーカイブ:社会の見方

スーパーマーケットで考えるマイケル・サンデル

2012年4月23日   岡本全勝

食品の安全を確保するため、食品中の放射性物質の基準が、4月1日から改められました。簡単に言うと、これまで1キログラム当たり500ベクレル以下であったものを、100ベクレル以下にと厳しくしました。すなわち、200ベクレルの魚は、売ってはいけなくなりました。
ところが、より高い安全を売り物にする商店にあっては、国の基準よりさらに厳しい基準で品揃えをしています。たとえば「我が店では、国の基準の半分である50ベクレル以下の商品しか扱いません」と宣伝するのです。
これは、より安心を求める消費者の求めに応じようとするものです。

排気ガスの少ない自動車や消費電力の少ないテレビが、消費者に喜ばれるのと同じです。これはよいことですよね。
ところが、農水産物の場合は、少し事情が異なります。水揚げされた80ベクレルの魚は、スーパーに引き取ってもらえなくなります。水産業としては困るのです。

さて、ここからがマイケル・サンデル教授の出番です。
あなたが、スーパーの店長だとします。あなたの弟が被災地で漁師をしていて、「兄貴、80ベクレルの魚を買ってくれ」と売り込んできたらどうしますか。もちろん、原発事故以前は、その魚を買い付けていました。
さらに、隣のライバル商店が、「国の基準より厳しい自主基準」を売りにしている場合は、どうですか。

(注)大手スーパーのイオンでは、主な食品を50ベクレルとしています。農林水産省では、業者が自主検査する場合も、国の基準に従うことを求めています(平成24年4月20日通知)。

日本の未来

2012年4月7日   岡本全勝

経団連の研究機関である「21世紀政策研究所」が、2050年までの長期経済予測を発表しました。それによると、日本の総人口は9,700万人まで減り、経済規模は世界第4位、悲観シナリオでは9位になります。
また、総務省は、2011年10月の人口推計を発表しました。1年間で、26万人の減です。自然減が18万人、出入国の差が8万人で、うち外国人が5万人減っています。

記者会見、記者の役割

2012年3月31日   岡本全勝

大臣の記者会見に同席していて、気になることがあります。記者の皆さんが、下を向いて一心不乱にパソコンを打っているのです。大臣の発言を、直ちに記事にしているのでしょう。
でも、記者会見の場は、テープ起こしの場ではないですよね。質問をして、その答えに対して次の質問をする(再質問、突っ込みを入れる)。そして政治家の考えや、まだ公表されていない将来に向けての課題や方向を探る貴重な場です。
大臣秘書官や総理秘書官、さらには県の総務部長を務めて、「次はどのような質問が来るかな」「こう答えたら、次はどのように突っ込みが来るかな」と、考える癖が付きました。もちろんこれは、記者会見だけでなく、国会答弁や講演会での質疑応答でも同じです。
記者さんたちが、質問をしない、ありきたりの質問しかしない、答があったらそれで納得して再質問をしない。この状況を見ていると、「おいおい、そんな答弁で納得していてよいのかい」「もっと、こんな質問をしてくれよ」と、がっかりします。
当局側からすると、その方が楽なのですが。一国民としては、「もっと鋭い質問をしてくれ」と思います。それが、政治家の力量を明らかにすることであり、記者の力量を明らかにする場です。会話を通じた「真剣勝負の場」でしょう。国民代表として会見に出席し質問の機会を与えられているのですから、それにふさわしいやりとりをしてほしいですね。もちろん、事前に質問とさらには再質問を、考えておく必要があります。
視線がパソコン画面に向かっている限りは、鋭い質問や再質問はできないでしょう。政治家の表情を読むことも重要です。マイクの横には、ボイスレコーダーを置いているのですから。テープ起こしは後にして、政治家の表情を読み、次の質問を考えた方がよいと思うのですが。どうかな、H記者、H記者、K記者。

日本男児の引っ込み思案

2012年3月27日   岡本全勝

3月22日の朝日新聞オピニオン欄「秋入学は日本を救うか」、志賀俊之・日産自動車最高執行責任者の発言から。
・・就職内定者の懇談会で、私のテーブルに最初に集まってくるのは、外国籍の人か日本人の女性です。10秒でいいから自分をアピールしたい、と。一方、日本人男性の多くは隅っこの方で固まっています・・・
中国や韓国、インドの若者は「私はこういうことをやりたい。やらせてくれるのか」と迫ってきます。目標が明確で、達成のためには努力を惜しみません。新興国の勢いの源は、そこにあるのです・・

努力と付加価値の違い

2012年3月26日   岡本全勝

3月16日の朝日新聞「沼上幹の組織の読み筋」から。
半導体のDRAM製造で世界第3位のエルピーダメモリが、経営破綻したことを取り上げて。
・・つい1年前に1個2ドルだったパソコン用2ギガビットのDRAMが、昨年11月には70~80セントにまで低下した。円にすると60円くらいという感覚だろうか。
「最先端の技術を使っているのに、おにぎり半分の値段にしかならない」。エルピーダの坂本幸雄社長もこう嘆く。国内の最優秀層の人材を投入し、しかもその優秀な技術者たちが人一倍精力的に日夜知恵を絞って「付加価値」を生んできたつもりなのに、その血と汗と涙の行き着いた先が「おにぎり半分」なのである。このやるせなさを経験すると、「ハイテクになるほどもうからないのだ」とぼやきたくもなる。
しかし、当たり前のことだが、もうかるかどうかは、製品に盛り込まれた技術が高度か否かで決まるのではない。自社以外に、同等品を提供できる会社が何社あるかで決まっている。たとえ盛り込まれている技術が高度であっても、同じくらい高度な知識を製品に盛り込める会社が世界中に何社も存在するなら、残念ながら利益は手に入らない。
・・「付加価値」は、自分が努力した量に基づいて判断するものではなく、買い手の立場に立って自分がどれほど取り換えのきかない存在なのか、自分がいなくなったらどれほど周りが困るか、という観点から考えなければならない・・
冷酷ですが、その通りですね。行政組織も、いえ、私たちサラリーマン個人も、同じです。