カテゴリーアーカイブ:社会の見方

消費増税は経済成長停滞とは別

2019年10月23日   岡本全勝

10月20日の読売新聞1面[地球を読む]、吉川洋・立正大学長の「消費税上げ 経済停滞の犯人にあらず」から。

・・・消費税と景気の関係については、問題をきちんと整理する必要がある。
まず、税率が上がる前に買っておこうという「駆け込み需要」と、その後の落ち込みである「反動減」がある。今回は駆け込み需要が比較的小さかったといわれるが、9月末に駅で定期券を買う人の行列ができているのを見た人もいるだろう。しかし、消費のタイミングを増税前に移動させるだけだから、1年を通してみれば総額は変わらず、大きな問題ではない。

消費税率引き上げの影響は、駆け込み需要と反動減にとどまらない。これはまさに増税である以上、家計が自由に使える所得は増税分だけ減少し、結果として消費が減る。
ただし、これは消費の「水準」を落とすだけで、消費の「成長」とは関係ない。もし増税後、落ちた消費が長らく回復しないようなことがあるとしたら、それは消費税に原因があるのではなく、他に理由があると考えなければならない。
消費税(付加価値税)によって景気が長期間低迷し、成長が阻害されるというなら、税率がおおむね20%ほどである欧州連合(EU)諸国の経済は、はるか昔に壊滅しているはずである。しかし、EU諸国は、多くの悩みを抱えながらも、世界を代表する「先進国」であり続けている。

1997年4月、橋本内閣により消費税率は3%から5%に引き上げられた。その後、日本経済は99年にかけて深刻な不況に陥った。主因は大型の金融機関が次々に破綻した金融危機だったが、今でもその時の記憶が一部の人々の間では「消費税のトラウマ」として残っている。2014年4月に安倍政権の下で税率が5%から8%に上がった後も、消費が長く低迷したことから、またもや消費税が犯人とされ、それが今回の過剰ともいえる「対策」を生み出した。だが、消費の伸び悩みは、主に賃金が十分に上がらないことや社会保障の将来不安によって生み出されたものだ。

実際、長期的にみると、消費税率が上がっても実質ベースの消費が増えたことが分かる。税率が3%だった96年度の258兆円から、8%だった昨年度は300兆円と、16%増加した。この間に国内総生産(GDP)は2割近く増えている。長期的に国全体の消費を増大させるのは、経済成長なのである・・・

即位礼正殿の儀

2019年10月22日   岡本全勝

今日10月22日は、天皇陛下の「即位礼正殿の儀」でした。あいにくの雨模様でしたが。皇居で、古式豊かな儀式が、行われました。
千年も昔の平安時代の装束は、当時の宮廷の文化を偲ばせてくれます。多くの子供たちは、雛人形を思い浮かべたでしょう。

日本が、天皇制(それは時代によって変わってきましたが)とともに、文化と伝統を受け継いできたことは、一つの誇りです。この国のかたちの一つです。
歴史と伝統は、科学が発達しても、お金を出しても作ることができないものです。理屈を超えたものがあります。日本列島に住まい、稲作を続け、日本語を生み出し、治安の良い社会をつくりました。
もちろん、時代にそぐわないものは、変えていく必要がありますが。

他国の政治的混乱を見るにつけても、日本国民統合の象徴としての機能は重要です。
立憲君主制は、人類が生み出した一つの智恵です。世襲の王様や皇帝が政治権力を握ると、失敗もあります。選挙で選ばれ、権力を持った大統領は、権力を手に入れそして維持するために、時に困ったことをしでかします。
政治権力を持たない「象徴的元首」を戴くのは、社会を安定させる一つの工夫です。

鉄道運転停止のお知らせ

2019年10月21日   岡本全勝

今日、電車に乗っていたら、車内の案内掲示に「××線は、台風のため運転を見合わせています」という趣旨のお知らせがありました。
???
「また台風が来ているのか」とも思いましたが、どうやら先日の台風19号による線路の被害で、運転を取りやめているようです。
「台風のため」ではなく、「台風による線路の被害で」といった趣旨の表現にするべきでしょうね。
もう一つ、「見合わせています」も、日本語の初心者にはわかりにくいですね。「不通」は、外国人には「普通」との違いがわかりにくいので、使っていないようです。

「電車が参ります」という放送も、「電車が来ます」の方がわかりやすいと思うのですが。
これからは、外国人も想定して、分かりやすい日本語を使うべきでしょう。「チャージ金額」「エリアマップ

増大する自然災害被害

2019年10月21日   岡本全勝

10月17日の日経新聞オピニオン欄、カーニー・イングランド銀行総裁へのインタビュー「新たなリスクに揺れる金融」から。

・・世界中で新たな金融リスクが台頭している。気候変動が企業業績に及ぼす影響が増し、情報開示や投資の見直しを求める声が強まっている。IT(情報技術)の進歩は既存金融の枠組みを揺さぶる・・・

・・・気候変動がもたらす金融リスクは主に二つある。一つは実際の災害発生に伴う経済損失だ。日本も近年、様々な自然災害に苦しんでいる。英保険業界によると、過去数十年で自然災害の発生件数は約3倍に、損失額は約5倍に膨らみ、今後も拡大し続けるだろう・・・

自然災害がどれくらい増加しているかを、数値化するのは難しいです。地球温暖化は数値化できますが。台風の大きさや豪雨の大きさは、足し算はできないでしょう。しかし、損失額は近似値として使えますね。

畑村洋太郎先生、失敗に学ぶ

2019年10月20日   岡本全勝

10月18日の朝日新聞オピニオン欄、畑村洋太郎・元政府事故調委員長・東京大学名誉教授へのインタビュー「失敗を直視せよ」から。

――失敗学を提唱されて30年になります。
「成長や進歩に失敗はつきものです。失敗が起きても結果が我慢できる程度に収まるように準備することがなによりも重要です」
「日本の国内総生産(GDP)はここ30年、ほとんど伸びていません。つまり明治維新、高度成長の『成功』の後、『失敗』が続いているのです。世界中の知識や科学を総動員して日本の行動様式や考え方にある欠陥、欠点を改めるべき時期だといえます。今こそ失敗学が求められていると思いますが、そうした論調は出てきません」

――なぜですか。
「日本社会は、失敗に向き合うことが苦手だからです。明治維新がうまくいったことが苦手の根底にあるように思います。世界中に手本になるモノを探しに行って、具合良くできあがったものがどこかにあれば、それを取り込むことにばかり一生懸命になった。技術を生んだ国はドイツもフランスも300年以上数々の失敗を重ねて、痛い目にあっています。日本は明治維新から150年しか経っていない。失敗の蓄積が少ないがために、技術の危うさに気づく人が少ないのです」・・・

――失敗学の成果の実例を一つ挙げるとしたら何ですか。
「2004年の新潟県中越地震で時速約200キロで走っていた上越新幹線『とき325号』が脱線しましたが、100人以上いた乗客・乗務員に死傷者は出ませんでした。1995年の阪神・淡路大震災で山陽新幹線の高架橋が落ちた『失敗』に学んだ結果でした」
「地震の揺れと軟弱な地盤が重なると新幹線の橋脚も壊れうると知って、JR東日本は約8万本の橋脚を全て調べ、一番危ないところから補強を始めていました。その補強した高架橋を『とき325号』は地震発生時に通過していました。現場では地盤の液状化が起こっていて、補強していなければ高架橋が落ちたところに新幹線が突っ込み、大惨事になっていたでしょう」

畑村先生は、このホームページで何度か紹介しています。「存在する答えに向かうことと、自分で答を探すこと」「失敗学