失敗学

知人に教えてもらって、森谷正規著「戦略の失敗学― 経営判断に潜む「落とし穴」をどう避けるか」(2009年、東洋経済新報社)を読みました。「組織の失敗」は、私のライフワーク?の一つです。経営学の教科書や成功した人の伝記も参考になるのですが、失敗事例も勉強になります。先輩の成功談や武勇伝とともに、失敗談は、後輩には役に立ちます。
有名なものでは、戸部 良一ほか著「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」(1984年、ダイヤモンド社。中公文庫に再録) があり、日本軍の失敗についてはいくつもの本が出ています。しかし、これは軍隊での話であり、また半世紀以上も前のことです。最近では、畑村洋太郎先生が、「失敗学のすすめ」(2000年、講談社。講談社文庫に再録)などで、失敗学を唱ておられます。ただし、主に工学の分野です。
「戦略の失敗学」は、戦略の失敗という観点から、いくつもの具体事例を取り上げています。良い製品なのに売れなかった、成功していた分野で負けてしまった、というような例です。薄型テレビ、半導体、携帯電話など。そして、企業の失敗や、政治での失敗も取り上げています。
かつて、NHKに「プロジェクトX(エックス)」という、好評番組がありました。困難な課題に打ち勝って、成功した物語を取り上げた番組です。本にもなっています。当時、成功だけでなく、失敗した事例を取り上げる「プロジェクト×(ペケ)」があればと、思ったものです。しかし、失敗事例は、関係者もしゃべりたくないでしょうから、番組や本にするのは難しいでしょうね。成功談は読んでいても楽しく、失敗談は元気が出ません。しかし、リーダーにとっては、失敗事例こそ勉強しておかなければならないことです。行政の世界でも、事故の原因調査報告書は出されますが、自らの組織がやった施策の失敗は、調査報告書が出されることは希です。
具体事例が、わかりやすいです。しかし、そこから教訓を引き出す必要があります。ところが、あまりに一般化すると抽象的で、これまた役に立たなくなります。