カテゴリーアーカイブ:社会の見方

個人で賃上げを求めない日本の社員

2021年10月29日   岡本全勝

経済停滞の30年」の続きです。10月20日の朝日新聞13面の「置き去り、米と339万円差 424万円、日本の平均賃金」には、次のような指摘もあります。

・・・そもそも、春闘による団体交渉と関係ない労働者は、ちゃんと賃上げ交渉ができているのだろうか。
リクルートワークス研究所の調査では、入社後に個人で賃上げを求めたことがある人は日本では3割だが、米国では7割だった。「日本には忍耐を美徳とする企業風土がある。個人が賃上げを主張すると『空気を読まない強欲なやつ』とみられがち」と話すのは、連合総研の中村天江主幹研究員。だが、労組が弱体化し、個人の賃金交渉が根付かない現状では、労働者は賃金の決定に関与できず、受け身の姿勢から抜け出せない。「働き方が多様になるなか、個人のボイス(声)を届ける環境づくりが重要だ」と訴える・・・

日本人の忍耐という美徳、企業に処遇を委ねる「会社人間」、転職しにくい労働慣行が、負の機能を果たしています。

経済停滞の30年

2021年10月25日   岡本全勝

各紙が、日本経済がこの30年間、成長していないことを取り上げています。

10月16日の日経新聞1面「データが問う衆院選の争点」「日本の年収、30年横ばい 新政権は分配へまず成長を
・・・OECDがまとめた年間賃金データを各国別に比べると、日本は30年間ほぼ横ばいだ。購買力平価ベース(20年米ドル換算)の実質系列で30年前と比べると、日本は4%増の3.9万ドル(440万円)どまりだったのに対し、米国は48%増の6.9万ドル、OECD平均が33%増の4.9万ドルと大きく伸びた・・・

10月20日の朝日新聞1面「日本経済の現在値」「30年増えぬ賃金、日本22位 上昇率は4.4% 米47%、英44%
・・・日本経済をどう立て直すのかは、衆院選の大きな争点だ。様々な指標を外国と比べると、低成長にあえぐ日本の姿が見えてくる。安倍政権が始めたアベノミクスも流れはほとんど変えられず、1990年代初めのバブル崩壊以来の「失われた30年」とも呼ばれる低迷が続いている。
国際通貨基金(IMF)の統計で、国の経済規模を示す名目国内総生産(GDP)をみると、日本は米国、中国に次ぐ世界3位と大きい。しかし、1990年の値と比べると、この30年間で米国は3・5倍、中国は37倍になったのに、日本は1・5倍にとどまる。世界4位のドイツも2・3倍で、日本の遅れが際立つ。国民1人当たりのGDPも、日本はコロナ禍前の19年で主要7カ国(G7)中6番目という低水準だ。
賃金も上がっていない。経済協力開発機構(OECD)によると、2020年の日本の平均賃金は、加盟35カ国中22位で3万8514ドル(1ドル=110円で424万円)。この30年で日本は4・4%増とほぼ横ばいだが、米国47・7%増、英国44・2%増などと差は大きい。賃金の額も、隣国の韓国に15年に抜かれた・・・

同じく13面の「置き去り、米と339万円差 424万円、日本の平均賃金
・・・まず、日本の現状を確認してみた。経済協力開発機構(OECD)の2020年の調査(物価水準を考慮した「購買力平価」ベース)によると、1ドル=110円とした場合の日本の平均賃金は424万円。35カ国中22位で、1位の米国(763万円)と339万円も差がある。1990年と比べると、日本が18万円しか増えていない間に、米国は247万円も増えていた。この間、韓国は1・9倍に急上昇。日本は15年に抜かれ、いまは38万円差だ・・・
・・・日本生産性本部によると、19年の1人あたりの労働生産性は37カ国中26位。70年以降では最も低い順位で、主要7カ国(G7)では93年以降、最下位が続く。自動車産業など、日本経済の稼ぎ頭だった製造業でさえ、直近の18年は16位。95年、00年は1位だったのに、他の国に次々に抜かれていった。
中小企業庁による21年版中小企業白書には衝撃的なグラフが載っていた。従業員1人あたりの労働生産性が03年度以降、ほぼ横ばいで上昇がみられないのだ。企業の数で99%以上、従業員で7割を占める中小企業が伸びないのは、日本の成長力にとっては痛い・・・
記事についているグラフを見ると、日本の負け方が鮮明です。

同じく10月20日の読売新聞経済面「過去30年 賃金上昇実感できず
・・・ただ、欧米各国に比べると、日本の賃上げは力強さに欠ける。経済協力開発機構(OECD)がまとめた平均賃金のデータによると、各国の物価水準を勘案して調整した「購買力平価」ベースでは、20年の日本は3・9万ドル(約440万円)。30年前に比べると、わずか4%増に過ぎない。
この間に米国の賃金は48%、英国も44%増えた。30年前に日本よりも低かった韓国には追い抜かれた。
企業の業績は好調で、利益の蓄積である内部留保は積み上がり、20年度末は484兆円と9年連続で過去最高だった・・・

日本の産業経済政策は、この30年間の失敗をどのように総括し、どのように転換していくのでしょうか。政府と経済界、そして企業の責任と役割が問われています。

外食市場の規模

2021年10月23日   岡本全勝

日経新聞夕刊「あすへの話題」10月18日は、磯崎功典・キリンホールディングス社長 の「外食文化を守りたい」でした。
「外食市場は26兆円とGDPであれば5%程度に相当し、そこに携わる人々は400万人以上と裾野が広い。日本経済を支える重要な産業のひとつだ」と書かれています。

もちろん経済だけでなく、社会や文化での機能も大きいです。新型コロナウイルス感染症が、改めて見せてくれた意義でした。

親ガチャという不平等

2021年10月20日   岡本全勝

10月14日の朝日新聞オピニオン欄は、「親ガチャという「不平等」」でした。
・・・「親は選べず、親次第で人生が決まってしまう」。そんな人生観を表す「親ガチャ」を巡り、論争がわき起こった。SNSのスラングとされるこの言葉になぜ人々は反応するのか・・・

土井隆義・筑波大学教授の発言「実は親でなく社会の問題」から。
・・・親ガチャを巡っては、「自分の努力不足を親のせいにするな」という中高年に対し、若い世代は「分かっていない」と反発しています。
私は、世代間の認識ギャップとして、この問題を理解する必要があると思います。
まず努力の認識が世代によって違います。日本経済が大きく成長していた1990年代までを体感した中高年は、進学・就職・昇進などで自分のなした努力以上のリターンを得ることができた。一方、30代以下は経済成長率が1%台の世界を生きてきた世代です。努力しても、そのリターンは小さなものになっている。「人生は努力する価値がある」と言われても、「努力して成果があるのか」と疑念が先に立ってしまうのです・・・
・・・私は、親ガチャという言葉で自分の境遇を憂える若者にも、認識上の錯誤があると考えます。格差は私たちが作る社会制度によって解消されるべきものだからです。社会の問題を、個々の家庭の問題にすり替えてはいけません。
若者自身も、この状況を改善するため、社会に対して声を上げてほしいと思います・・・

五十嵐衣里・東京都議会議員・弁護士の発言「「頑張れば」は呪いの言葉」から。
・・・自分の置かれた境遇を嘆く人に対し、「頑張れば成功できる」と説く人はたくさんいます。私はこの言葉は「呪いの言葉」だと思っています。貧困を生んでいるのは政治や社会なのに、個人に責任を押し付けているからです。
私はたまたま勉強が苦でなく、勉強できる環境も整っていました。でも、環境が整っていない人や、何を頑張ればいいかわからない人もいます。そんな人たちにも、あきらめを強要する言葉です・・・
・・・政治の役割は家庭に恵まれなかった人のために環境を整えることです。必要な知識や技術を身につける学びの場を増やし、金銭的支援もする。多様な経歴や背景を持つ人たちが政治に関わり、それぞれの視点で支援策を提案していければ、「親ガチャ社会」を変えられるはずです・・・

教科書を覚える教育

2021年10月20日   岡本全勝

10月12日の日経新聞教育欄、中山迅・宮崎大学教授の「理科教育の課題 「科学とは」授業で欠落」から。

・・・経済協力開発機構(OECD)が15年、高校1年生を対象に行った学習到達度調査(PISA)で「科学とは何か」に関する認識を調べた結果も気になる。
その内容はこうだ。科学の特徴には、観察や実験から得られた証拠に基づいて真偽が決定される「実証性」▽同じ条件で何度繰り返しても同じ結果が得られる「再現性」▽定説とされる理論や法則も新しい発見があれば覆される可能性があり、「正しさ」は当面のものであるという「暫定性」――などが含まれる。
「何が真実かを確かめるよい方法は、実験することだ」という見解への賛否を尋ねる形で実証性に関する認識を調べたところ、この見解に賛成した日本の高校生は80.6%だった。
同様に「発見したことを確認するために、実験は2度以上行った方がよい」(再現性)には81.2%、「科学の本に書かれている見解が変わることがある」(暫定性)には76.9%しか賛成していない。数値だけ見ると高い割合と感じるかもしれないが、他国と比べると実は日本は最も低いグループに位置している。

例えば米国は実証性には90.0%、再現性には91.7%、暫定性には86.8%がそれぞれ賛成している。教科書に書いてあっても新事実の発見で学説が変わりうることは自然科学では当たり前であり、それこそが科学の発展の一部なのに、そのことを認めない若者が無視できない割合でいることに驚かされる。
どうも教科書の内容を絶対視しすぎているようなのである。日本人は全体的に高い科学的知識があるが、科学の本質についての理解が十分かというと、そうでもない。
原因の一つは学校の教科書に「科学とは何か」を教える内容が乏しいことにある。学習指導要領に、学習すべき内容として明記されていないため、教科書でもほとんど触れられていない・・・