カテゴリーアーカイブ:社会の見方

声を上げない社風

2021年12月6日   岡本全勝

11月30日の朝日新聞経済面、堀篭俊材・編集委員の「形ばかりのガバナンス改革 社外取締役、機能せず「お飾り」 相次ぐ企業不祥事」から。
・・・みずほフィナンシャルグループ(FG)が繰り返したシステム障害をめぐり、金融庁は26日、経営責任を明確にするように業務改善命令を出した。みずほFG以外にも、三菱電機、東芝と最近不祥事が発覚した大手企業は、いずれも見た目は先進的なガバナンス(企業統治)体制だが、その中身が伴っていなかったことを露呈した。形だけのガバナンス改革はもう限界なのではないか・・・

・・・今回のシステム障害は事後処理のまずさを考えると「人災」といえる。その原因について、6月に出た第三者委員会の報告書は「危機対応や顧客目線の弱さ」などをあげ、それが改善されない背景に「失点を恐れ自発的な行動をとらない企業風土があった」と指摘している。みずほは2002年と11年にも大規模なシステム障害を起こしているが、顧客よりも身内の論理や自分の立場を優先する体質は改まらなかった。

声をあげようとしない企業風土は、各地の製作所や工場で検査不正が発覚した三菱電機でも同じだ。
「『言ったもん負け』の文化がある」。鉄道向け空調機器などで30年以上も不正が続いた長崎製作所では調査委員会の報告書に従業員が証言した。社内で改善を提案すると、言い出した者が取りまとめ役になるために公の場では沈黙することが当たり前だったという。
東芝の場合は「お上頼み」の体質が明らかになり、取締役会の独立性そのものが問われた。株主総会の運営をめぐり経営陣が株主に圧力をかけた問題で、経済産業省の関与が指摘された。調査委の報告書は「行政に過度に依存せず自戒して行動することが極めて重要だ」としている・・・
この項続く。

業界が阻む中古住宅取引の電子化

2021年12月5日   岡本全勝

11月29日の日経新聞に「中古住宅、データは伏魔殿 不動産IDに既得権の壁」という記事が載っていました。詳しくは記事を読んでもらうとして。「電子化が進まないのは政府が悪い」というのが批判の定番ですが。ここでは業界が既得権を守るために、手続きの電子化と透明化が進んでいないようです。

・・・中古住宅の売買取引を透明化する官民プロジェクトが10年以上も迷走している。不動産業界がオープンな情報システムによって既得権を脅かされると警戒しているからだ。建物や土地を登記簿の番号で管理する「不動産ID」の構想も骨抜きの様相。閉鎖的な「伏魔殿」は改革されず、DX(デジタルトランスフォーメーション)の機会損失はふくらむ・・・

・・・実は不動産IDの構想は、08年の国交省研究会の提言にさかのぼる。このときは個人のプライバシー保護などを理由に不動産業界が賛同しなかった。都市計画や防災といった行政情報と、不動産業界の業者間データベース「レインズ」を連携させる「不動産総合データベース」も初歩的な試験運用をしただけで立ち消えになった。
中古住宅の取引データベースとして国交省が手本にしてきたのが米国の「MLS」だ。全米の約600の民間データベースで構成され、売り出された物件は不動産業者との契約から原則24~48時間以内に掲載されるルールになっている。過去の成約価格やリフォーム履歴、税金関係の公的情報も網羅され、掲載ルール違反には除名など厳しい罰則がある。
一方、日本のレインズはどうか。建設省OBで不動産流通に詳しい中川雅之・日大教授は「データの量や質が不十分だ」と指摘する。売主と一対一の専任契約をした不動産会社は5~7日以内にレインズに物件情報を登録する義務があるが、違反が少なくない。自社で買主も見つけ、売主と買主それぞれから仲介手数料が取れる「両手取引」につなげたいからだ・・・

・・・不動産サービス大手ジョーンズラングラサール(JLL)の20年の調査によると、日本の不動産市場の取引プロセスの透明度は世界38位と先進国では最低レベルに沈む。業界の利害調整にとどまらず、不動産40兆円市場の構造改革を議論すべき時期にきている・・・

日本はやさしくない国

2021年12月4日   岡本全勝

11月27日の朝日新聞夕刊、田中世紀・オランダのフローニンゲン大助教授へのインタビュー「日本は「やさしくない国」ですか」から。
・・・日本は、他人にやさしくない国――。海外で暮らした人たちが、比較してこう語ることがある。でもそれって本当かと思っていたとき、その点を論考した本に出会った。著者でオランダ在住の研究者、田中世紀さんの話に耳を傾けた。(宮地ゆう)

「日本の多くの政治家や国民は、この社会のあり方が当たり前だと思っている。でも、一歩国の外に出れば違う価値観があるという視点で、社会を見るきっかけになれば」
10月に「やさしくない国ニッポンの政治経済学 日本人は困っている人を助けないのか」を出版した田中さんは、執筆の理由をそう語る。
田中さんは英国や米国で暮らし、オランダの大学で政治学を教えている。日本を離れたとき、「人と人との距離がもっと近い社会があるんだと気付かされた」。町で見知らぬ人同士がよく会話し、気軽に助け合う。
私も海外で暮らした人から「困っていると、知らない人が声をかけて助けてくれた」という話をよく聞いた。米国、ドイツ、カナダ、ブラジル、シンガポール、ベトナム……。比較に挙がった国はさまざまだ。

実は、こうした話を裏付けるようなデータがあると、田中さんはいう。英国の慈善機関が2009年からほぼ毎年行ってきた「人助け」に関するものだ。新型コロナウイルス禍前までは各国で調査をし、これまでに約160万人から回答を得た。
その質問は、「過去1カ月に、(1)見知らぬ人を助けたか(2)慈善活動に寄付をしたか(3)ボランティア活動をしたか」。
21年6月発表の調査結果では、日本は114カ国中、(1)「人助け」が114位(最下位)(2)「寄付」が107位(3)「ボランティア」は91位。これらを総合した結果でも、114位で最下位となっていた。
09~18年の10年間でみても、日本は126カ国中107位で、先進国で最下位。この慈善機関は「日本は歴史的にも、先進国の中で市民社会が非常に脆弱(ぜいじゃく)な国だ」と指摘している。
この調査には社会制度や文化の差なども影響しているだろう。田中さんも、この結果がすべてを物語っているわけではないとしつつ、「残念ながら、日本人は他人に冷たいという傾向は、他の調査でもみられます」。
米・調査会社が07年に実施したものでは、「政府は貧しい人々の面倒を見るべきだ」という項目に「同意する」と答えた人は日本では59%。47カ国中、最下位だった。英国は91%、中国は90%、韓国が87%だった・・・
・・・田中さんが注目するのは、日本は他の国に比べ、慈善団体、宗教団体、政治団体、スポーツや余暇の団体など、社会参加をしている人の割合が低いという調査結果だ。仕事関係以外に、社会と関わりを持つ活動の場がないというのは、いまも珍しいことではない・・・

連載「公共を創る」で議論している点の一つです。ムラ社会ではムラビト同士の助け合いや信頼は高いのに、よそ者には冷たい。組織外の人との付き合い方に慣れていないことが、背景にあります。「この国のかたち」を、どのようにして変えていくか。

進んでいる移民の受け入れ

2021年12月2日   岡本全勝

11月26日の朝日新聞オピニオン欄、社会人口学者・是川夕さんへのインタビュー「「移民国家」になる日本」から。

――日本に働きに来ている外国人は「移民」なのでしょうか。
「国連は移民を『1年以上外国に居住する人』と定義しており、経済協力開発機構(OECD)は『上限の定めなく更新可能な在留資格を持つ人』としていますが、どちらにしても、事実として日本は移民を受け入れています。コロナ禍の直前で毎年約17万人の技能実習生、約6万人のハイスキル層、約12万人の留学生など、年間約54万人の外国人が新たに来日している。今後は、日本への永住も可能な特定技能2号の対象業種拡大も見込まれています」

――技能実習生の失踪が問題になり、出入国在留管理局では収容中にスリランカ国籍の女性が死亡しました。日本は「移民受け入れ後進国」なのではないですか。
「再発防止を徹底するべきですし、人権擁護の重要性は言うまでもありません。しかし、理想的な移民政策を採ったとしても不幸な事件は起きうるでしょう。外国人だという立場の弱さ、力の不均衡が事件の前提にあるからです」
「多くの外国人労働者が、働くための在留資格という正面玄関ではなく、研修目的の技能実習制度や留学生のアルバイトなどのバックドアから入っているという見方が主流です。ゆがんだ制度によって外国人労働者が来日し、それが故に人権侵害が一部で起きていることも否定できません。しかし、それだけでは大切なことを見落とすことに気付きました」
――何が見えなくなる、と?
「それでも、彼ら彼女らは日本を目的地として選んだという事実です。外国人労働者たちを『だまされて日本で働いている可哀想な人たち』と見ていると、なぜ日本に永住する人が増えているのか、説明がつかない。未知のリスクがあるにもかかわらず国境を越えることを選んだ人たちの視点に立つと、別の風景が見えてきます。『差別され、貧困に苦しむ人たち』としてしか見ない視線では、国境を越える熱量とダイナミズムは理解できません」

――雇用という面で見れば、外国人労働者、つまり移民は日本社会に溶け込みつつある、と?
「ええ、ゆるやかに社会統合されていると分析しています。私の研究では、在留外国人のうち、最大のカテゴリーである永住者の賃金水準は、日本人と大きく変わりません。専門職に就く割合も、日本人と変わらない。周囲を見回せば、私たちと同じような暮らしをしている外国人が近くにいる、という状況になっています」
「小学校入学前の子どもたちでは、外国籍、日本国籍取得者、親のいずれかが外国籍という『移民的背景を持つ人』は2015年で5・8%に上り、30年には10人に1人となるという推計があります。子ども世代にとっては、クラスに2、3人は外国ルーツの友だちがいることがリアルです」

――文化の違う出身国ごとのコミュニティーができているという話も聞きます。それでも日本社会に統合されていると言えますか。
「日本人同士でも、隣に住んでいる家族がどんな人たちなのか、分からないことがある。それが移民となると、地域に溶け込むべきだ、となるのはおかしいと思います。階層、雇用、教育、婚姻など公的な領域では、差別や分断はあってはなりません。一方で、文化的なものは私的な領域に属する部分も大きく、日本人も外国人もそれぞれが大切にすればいい」
「米国でも、移民たちは出身国の文化を守り、コミュニティーを形成しています。それでも学校や職場では価値観を共有し、同じ社会のメンバーという意識を持っている。文化的な統合まで求めるよりも、最低限押さえるべき共通部分について決め、それを守る方がいいのではないでしょうか」

政府の統計、民間の統計

2021年12月2日   岡本全勝

11月22日の日経新聞に「統計の主役交代、コロナで加速 急激な景気変動、政府追いつけず民頼み」という記事が載っていました。

・・・新型コロナウイルス禍をきっかけに民間データが政策現場に急速に普及している。代表格は携帯電話の位置情報やクレジットカードの決済情報など。いずれも経済の動きをリアルタイムでつかめるのが特長だ。国内総生産(GDP)をはじめ旧来の公的統計は集計・公表に時間がかかり、景気のめまぐるしい変化に追いつけなくなっている・・・

記事では、人流、カード決済、ネット消費額などの統計が、政府は取っていなかったり遅れるのに対し、民間がいち早く把握していることが取り上げられています。背景には、社会特に経済がデジタル化していることがあります。カード決済、スマートフォンの位置情報、レストランの予約やネット消費の動向です。
調査員が面接して調査票に記入し集計する調査統計と、このような情報通信技術を使った調査統計と。それぞれの長所があります。