カテゴリーアーカイブ:社会の見方

産業支援のジレンマ

2021年11月26日   岡本全勝

11月14日の日経新聞に「中小支援拡充、もろ刃の剣 倒産少なく、革新には足かせ 専門人材の育成課題に」が載っていました。

・・・中小企業の経営が正念場を迎えている。倒産件数は50年ぶりの低水準で推移するが、長引く新型コロナウイルス禍で稼ぐ力が衰えている。政府が19日にまとめる経済対策にも3兆円程度の給付金が盛り込まれる見通し。手厚い支援策はイノベーション(革新)を阻害する副作用もあるだけに、コロナ後を見据えて中小支援のあり方も軌道修正する時期に来ている。
「給付金はないよりはありがたいが、経営を浮上させる効果は期待できない」。富士国際旅行社(横浜市)の太田正一社長は話す・・・

コロナの影響で大幅な減収となった事業者に、政府は給付金を配って支援をしています。これによって、企業の倒産、失業者の増加を抑制しています。企業倒産件数は、1972年以来最小です。
ところが、このような支援は、競争に生き残ることができない企業を存続させる、革新や新陳代謝を阻害する場合もあります。すると、平時に戻った際に、これらの企業は生き残ることができません。難しいところです。

休日夜間の電話受付、訪問診療

2021年11月25日   岡本全勝

日経新聞夕刊「人間発見」11月15日の週は、ファストドクター代表 菊池亮さんの「夜間・休日の患者に安心を」でした。
・・・医師の菊池亮さんが2016年に創業したファストドクターは地域医療機関と連携し、夜間・休日といった時間外診療の総合窓口サービスを手掛ける異形のスタートアップ企業だ。新型コロナウイルス感染症が拡大してからは自宅療養の患者を24時間体制で往診し、地域医療を守る最後の砦として奮闘した・・・

16日の「軽傷者搬送に疑問 往診で問題解決図る」から。
・・・帝京大病院は外傷センター、高度救命救急センター、総合診療ERセンターが連携して救急医療を行っていました。夜間当直のある日は36時間労働です。非常に忙しかったですが、運ばれてくるのは軽症の患者も多かった。お年寄りが深夜に出たゴキブリに驚いてひざかどこかを打ってしまったとか。

全国で救急搬送される患者の5割は軽症者。この数の多さが気になった。
救急車で搬送される人の約6割は高齢者です。このうち95%は在宅医療を受けておらず、ふだんは外来で医療機関を受診している人が、休日や夜間だと本来必要がないのに救急車を活用している。
高齢者は人数が増えるだけではなく、世帯構成も変わってきています。昔は2世帯3世帯の同居が多かったですが今は独居や高齢者2人の「老々世帯」が当たり前です。頼れる人が身近にいなくて、夜間や休日は日ごろ受診しているかかりつけ医も機能していない。だから救急車を呼ぶしかない。こうした人たちへのケアが必要なんじゃないかと思うようになりました。
軽症者の救急車利用を減らすため、自治体は「#7119」という番号で医療の緊急度を判定する電話相談を実施しています。でもそこで多くの人に外来受診を薦めているのに、救急車の搬送件数は増える一方です。
不要不急の救急搬送をぐっと減らすには、夜間や休日に医師が患者のところに行く往診で問題を解決してしまえばいい。そう思い、14年ごろから診療所の設立方法や在宅医療について考え始めました。そして東京・世田谷を拠点に、医師の名倉義人さん(現・新宿ホームクリニック院長)と2人で在宅診療所を始めました・・・

世界で戦う選手を育てる

2021年11月24日   岡本全勝

11月14日の日経新聞、ザ・スタイルに、松岡修造さんの「テニス選手育成 挑戦の旅」が載っていました。
松岡さん(1967年生まれ)が選手だった頃、日本男子は世界の100位に入るのが夢でした。彼がその壁を破り、1996年にウィンブルドンセンターコートで戦い、「こんなすばらしい場所で戦える日本男子を作り上げたい」と叫びます。
しかし、世界で戦うということは、テニスがうまくなればいいだけではありません。日本人が苦手な表現力、自立心、決断力を養わなければなりません。年間10か月を毎週違う国で過ごすために必要な心技体を養う必要があります。その方法を低年齢から教えることができれば、世界の舞台に導けると考え、10歳から18歳までの選手の強化プログラムを実施します。メンタル、技術、フィットネス、医療ケアの専門スタッフがつきます。

平成の30年が、日本にとって失われた30年と評価されています。産業経済面では、そうでしょう。しかし、テニスに限らず、サッカーや野球など、世界で活躍する日本選手が増えました。そこには、プロリーグにして鍛えること、世界に挑戦することなど、挑戦する人を育てる仕組みと支援する仕組みを作ったからです。一人の天才が出てくるだけでは、後が続きません。
他方で、産業や学問などでの停滞は、日本の中で満足し、世界で戦わなかったことによると、私は考えています。

異分野の合作で新しい知見が生まれる

2021年11月22日   岡本全勝

11月2日の日経新聞「変わる地方国立大学」、斎藤滋・富山大学長の「革新創出へ文理融合」に次のような指摘があります。

・・・今日、トップ論文が載る研究雑誌では単一大学の単一講座(教室)からの報告は皆無となっている。複数の大学、講座、専門分野の異なる研究者の合作で新しい知見が生まれてきているのだ。
日本の大学では単一講座(教員)の指導で研究が行われてきたが、学問の進歩は複合的な解析を不可欠とし、異分野の学問領域の融合が世界的に行われている。日本の国際的な遅れは、この融合するという意識の低さが原因の一つである・・・

政権の自己評価、中国共産党

2021年11月21日   岡本全勝

中国共産党が、11月11日、第19期中央委員会第6回全体会議で、毛沢東、鄧小平の時代に続く第3の「歴史決議」を採択しました。各紙は、習近平総書記(国家主席)は両者に並ぶ権威を確立したと伝えています。

これについて、12日の朝日新聞は「歴史決議は毛沢東時代の45年、鄧小平時代の81年に続き3回目。45年は結党以来の主導権争いに決着をつけて毛の権威を決定づけ、81年は文化大革命を否定し改革開放への道を開いた」と書き、林望・中国総局長が「政権の自己肯定、にじむ不安」に次のように書いています。
・・・過去の歴史決議が共産党内の主導権争いや路線の過ちをただす自己否定の作業だったとすれば、新決議は習近平氏の権威を高めるための自己肯定の試みである・・・
・・・一方で、強さと正しさを内外に証明し続けなければ今の地位は保てないという政権の不安があることも見逃すべきではない・・・

「歴史決議」には、次のような文章もあります(日経新聞による)。
・・・全会は次のように指摘した・・・中国共産党は中華民族の千秋の偉業を志してから100年で、まさに最盛期を迎えている。過去の100年、党は人民、歴史に優れた答案を出した。今、党は国民を団結させてリードし、第2の100年の奮闘目標を実現する新たな試験に向かう道に踏み出した・・・