業界が阻む中古住宅取引の電子化

11月29日の日経新聞に「中古住宅、データは伏魔殿 不動産IDに既得権の壁」という記事が載っていました。詳しくは記事を読んでもらうとして。「電子化が進まないのは政府が悪い」というのが批判の定番ですが。ここでは業界が既得権を守るために、手続きの電子化と透明化が進んでいないようです。

・・・中古住宅の売買取引を透明化する官民プロジェクトが10年以上も迷走している。不動産業界がオープンな情報システムによって既得権を脅かされると警戒しているからだ。建物や土地を登記簿の番号で管理する「不動産ID」の構想も骨抜きの様相。閉鎖的な「伏魔殿」は改革されず、DX(デジタルトランスフォーメーション)の機会損失はふくらむ・・・

・・・実は不動産IDの構想は、08年の国交省研究会の提言にさかのぼる。このときは個人のプライバシー保護などを理由に不動産業界が賛同しなかった。都市計画や防災といった行政情報と、不動産業界の業者間データベース「レインズ」を連携させる「不動産総合データベース」も初歩的な試験運用をしただけで立ち消えになった。
中古住宅の取引データベースとして国交省が手本にしてきたのが米国の「MLS」だ。全米の約600の民間データベースで構成され、売り出された物件は不動産業者との契約から原則24~48時間以内に掲載されるルールになっている。過去の成約価格やリフォーム履歴、税金関係の公的情報も網羅され、掲載ルール違反には除名など厳しい罰則がある。
一方、日本のレインズはどうか。建設省OBで不動産流通に詳しい中川雅之・日大教授は「データの量や質が不十分だ」と指摘する。売主と一対一の専任契約をした不動産会社は5~7日以内にレインズに物件情報を登録する義務があるが、違反が少なくない。自社で買主も見つけ、売主と買主それぞれから仲介手数料が取れる「両手取引」につなげたいからだ・・・

・・・不動産サービス大手ジョーンズラングラサール(JLL)の20年の調査によると、日本の不動産市場の取引プロセスの透明度は世界38位と先進国では最低レベルに沈む。業界の利害調整にとどまらず、不動産40兆円市場の構造改革を議論すべき時期にきている・・・