カテゴリーアーカイブ:社会の見方

学校での同調圧力

2021年11月18日   岡本全勝

11月10日の日経新聞「教育岩盤」は、太田肇・同志社大教授の「学校の同調圧力、創造性を阻害」でした。

・・・日本の学校には、子どもを枠にはめ、はみ出しを許さない風潮が根強く残る。同調圧力の研究で知られる同志社大の太田肇教授は「厳しいルールの下では子どもが自由なアイデアを考える余地がなくなる」と危ぶむ。

――子どもに同じ服装や行動を求める学校が多いのはなぜでしょう。
「服装や持ち物などを画一化した方が子どもを管理しやすい。授業も1クラス数十人の児童生徒に手際よく教えるには例外を認めずに同じ解法を教えた方が効率的と考えているのではないか」
「『他の子と一緒でなければいけない』という同調圧力は理不尽な指導につながる。日本の学校は親の転勤以外で子どもの転校は珍しく、教師も学校関係者以外との交流が少ない。人の流動性が低いため多様な意見に触れる機会が乏しく、理不尽さに気づきにくいのも特徴だ」

――規則重視の指導の弊害は何でしょう。
「厳しいルールの下では子どもが自由なアイデアを考える余地がない。技術革新で世界が急速に変化する中で、日本の教育を受けた人材が世界の潮流についていけなくなると懸念している」
「高度経済成長期のように大量生産型の産業が中心だった時は、規則を守り正確な手順で作業できる人材が必要だった。現代はコンピューターや機械がその役割を担う。いま求められているのは高度な思考や自由な発想ができる人だ。厳しい規則で子どもを管理しても、創造性は生まれない」・・・

理想のリーダー像の変遷

2021年11月17日   岡本全勝

11月10日の読売新聞文化欄「リーダー論 中」「求める姿 強さから優しさへ」から。

・・・出版文化史の横手拓治・淑徳大教授は、ベストセラーを通して「大衆の心性」を探る研究をしてきた。横手教授によると、理想のリーダー像は、20世紀と21世紀とで大きく変化した。それは、〈1〉指示型から支援型へ〈2〉垂直目線から水平目線へ〈3〉クリティカル(批判・批評的)から温容へ——の三つに特徴づけられる。
つまり、上から目線でダメ出しして指示を出すようなリーダーは、いまや求められていない。21世紀は相手に共感し、そっと背中を押すようなリーダーが理想視されているというのだ。

年間ベストセラーを振り返ると、1964年の東京五輪で日本女子バレーボールチームの監督を務めた大松博文の『おれについてこい!』が、同年の5位、翌年の3位を記録した。作家・石原慎太郎の『スパルタ教育』は、70年の9位だった。横手教授は「戦後から90年代までは、必死に頑張れば幸せになれる時代。だから人々は、自分を引っ張ってくれるようなリーダーを求めていた」と説明する。

その理想のリーダー像は、21世紀になると変わり始め、10年代にはよりはっきりする。ベストセラーには、自己啓発の要素が入った本が激増した。『チーズはどこへ消えた?』(2001年1位)、『夢をかなえるゾウ』(08年2位)など、読者自らが、内面の困難解決能力などを引き出すことを、著者が優しく見守るようなつくりだ。横手教授は「このスタンスこそ、今の大衆が求めるリーダーシップ。『リーダーシップのないリーダー』が求められている」と強調する

長引く経済成長の停滞や少子高齢化などによる閉塞感の中、多くの人は疲れ果てている。「そんな時に上から指示されてもついていけない。エリートがいくら現状を批判し変革を訴えても、心に響かない」。さらに農村社会の日本は、「優しい」リーダーこそ、元々理想視されていたとみる。「今後、強いリーダーが求められることは、かなり減るだろう」・・・

嘆く前に、リーダーを育てる

2021年11月16日   岡本全勝

11月9日の読売新聞文化欄「リーダー論 上」「作る、育てる。「日本人は…」と嘆く前に」から。
・・・日本には、華のある魅力的な「リーダー」がいないと言われる。でも、それは本当か。優れたリーダーを生むには、何が必要なのか。岸田首相が率いる自民党が、議席数を減らしながらも絶対安定多数を得た衆議院選から1週間余り過ぎたのを機に、考えてみたい・・・

・・・そもそも日本は、優れたリーダーを生む取り組みをしてきたのか。各種の調査は、若い世代が指導的な立場につくことを拒む内向きな傾向を示す。内閣府が13歳から29歳の男女を対象に行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(2018年度)」によると、「将来の国や地域の担い手として積極的に政策決定に参加したい」の問いに対し、「そう思う」などと肯定的に答えたのは33・2%。米国の69・6%や韓国の60・0%より極めて低い。
40歳くらいの頃、「世界で活躍している」と思うかの問いに、日本で「そう思う」などと答えたのは14・1%。米国59・5%、スウェーデン56・0%だった。

これに対し、立教大の中原淳教授は、企業や組織の人材開発を研究する立場から、調査に対して日本人は謙虚に回答しがちだとしたうえで、「日本はリーダーを育てる訓練の機会が少ない」と指摘する。「学校でクラブ活動や合唱大会などの行事があるのに、体験を振り返ってリーダーが組織をどう運営するか深く考える場がない」
折に触れてリーダーに必要なものを具体的に考える機会を与えてこそ、「リーダーはカリスマ性が必要」など、漠然とした思い込みから脱却できるという・・・
・・・リーダーは作り、育てるもの。その意識が社会に大きく広がったとき、日本を牽引するリーダーは現れるのかもしれない・・・

原文をお読みください。

インド 西洋への遺恨

2021年11月15日   岡本全勝

11月7日の読売新聞言論欄、歴史家のサンジャイ・スブラマニヤムさんの発言「インド 西洋への遺恨と打算」から。

・・・国民会議派は80年代以降、長期政権の腐敗と疲弊、経済政策の失敗などで衰退し、90年代に入ると権力を掌握できなくなります。
権力の空白を埋めたのがポピュリズム(大衆迎合主義)をテコに伸長したインド人民党です。ヒンズー教の栄えた古代インドを理想郷とし、古代インドは飛行機を発明するなど全能だったという虚妄を吹聴している。同党によれば、インドの不幸は11世紀以降の中央アジアからのイスラム勢力の襲来で始まり、15世紀末のポルトガルの航海者バスコ・ダ・ガマ到来後の西欧列強の侵略で不幸が募り、18世紀半ば以降の英国の支配でどん底に落ちたのです。

ヒンズー至上主義には反ムスリム・反西洋という排他性がある。
インドは英国支配で歴史の断絶を被りました。古代インドは歴史をサンスクリット語やペルシャ語で記していた。英国はそれを「神話・空言」と断じ、インド社会に歴史の概念はないと決めつけた。統治を容易にするためでした。

大衆は過去との真のかかわりを失いました。そこから三つの反応が起きます。まず劣等感、その裏腹の過激な民族主義。次に歴史の忘却。そして冒頭で言及した、西洋に対する遺恨。ありもしない理想郷の再生を掲げるインド人民党が支持される社会心理です・・・

インターネットを使った授業での悪用

2021年11月14日   岡本全勝

11月7日の読売新聞「学習端末トラブル ネットモラル 悩む学校」から。

・・・閲覧制限の突破、アダルトサイトを視聴、不正にログイン——。政府の「GIGAスクール構想」により公立小中学校で1人1台の学習用端末の配備・活用が進む中、学校現場では、教員たちが想像しなかったようなトラブルが起きていた。

「インターネットを調べれば解除方法も出ているし、これ以上の規制は難しい……」。大津市の小学校で起きた事例について、同市教育委員会の担当者は困惑した様子で打ち明けた。
学習用端末には通常、不適切なサイトを閲覧できないようフィルタリングがかけられている。しかし、同市が9月に各学校に行った調査の中で、フィルタリングを突破して、児童がわいせつ動画を閲覧していたことが明らかになった。市教委担当者は「子供たちにはネットのモラル教育を進めたい」と話す。
九州のある自治体の小学校では今夏、友人のIDとパスワード(PW)を何らかの形で知り、無断でこの友人の学習ドリルにアクセスする事例があった。接続履歴をたどって、不正アクセスした児童を割り出した。教委担当者は「こうした行為は犯罪であることをしっかりと周知したい」と語気を強めた・・・

・・・文科省の2020年度「問題行動・不登校調査」によると、いじめの認知件数は小中高と特別支援学校で51万7163件と前年度比15・6%減だったが、ネットいじめは同5・3%増で過去最多の1万8870件。特に小学校は同32・1%増の7407件だった。
学習用端末の配備がほぼ完了し、文科省が先月、全国の教委に出した通知では、GIGAスクール構想が進む中、「1人1台端末等を使ったいじめが発生する可能性がある」との懸念も示された。
教育現場も対応に追われている。
教員や子供たちに端末の使い方を教えるICT支援員を派遣する企業の男性社員は「小学校低学年だと、アルファベットの入ったPWの入力は難しい。覚えられない子供のために、PWを書いた紙を子供の端末に貼り付けている教員もいるが、それは危険だ」と指摘する・・・