カテゴリーアーカイブ:社会の見方

スポーツ選手への中傷と批判

2022年12月21日   岡本全勝

12月9日の朝日新聞スポーツ面「W杯を語ろう」「中傷と批判、選手守るには」から。

田中ウルヴェ京さんの発言
誹謗中傷のわかりやすい例は、人格、人種など「選手」としてではなく「人」として変えられないものについて悪く言い、その人を傷つけることでしょう。
批判とは、根拠をもとに、良いところと悪いところを分けて評価したり、検証して論じたりすることです。そして、批判にも「やり方」があります。目的が何なのか。目立ちたい、怒りをぶつけたいなど自己主張が目的だとすれば、それは“悪質な”批判、あるいは誹謗中傷でしょう。選手らと同じ立場で一緒に戦っていない人は、批判の前提である根拠がありません。

スポーツ選手が負けると、テレビなどを通じて表面的に見える部分だけで安易に判断し、中傷する人がいます。しかし、負けたからといって誰しもが中傷したくなるわけではありません。中傷をSNSに書く人は、その書き手自身に勝手な目的がある。書き手の心理背景が中傷の目的にある限り、そして、書き手が自身の課題に向き合うことから逃げる限り、中傷はなくなりません。

荒木香織さんの発言
五輪やサッカーW杯などのメジャーな大会であればあるほど、批判や誹謗中傷は多くなってきます。ファンが期待するものと、現実の結果との落差に腹が立ち、それをはき出したくなるのでしょう。
選手側から対策を考えていきます。
私が選手に伝えているのは「大会前後、レース前後は絶対にSNSは見ない」「自分の名前を検索しない」ということ。これが大前提です。書かれていたコメントをどう受け止めるかという以前に、一番必要なことです。
2015年のラグビーW杯のとき、私がメンタルコーチを務めた日本代表は「見ない」ということを決めていました。

大会に向けては、メディアコントロールが重要です。いい準備をするために必要なもの以外は、全てシャットダウンしていきます。一般の人が書き込むSNSもそうですが、新聞やテレビも例外ではありません。
記者との接触一つでも気を使います。たとえば、記者から「こういう風に思うのですが、どうですか」という質問があっただけでも、選手は不安になったり、動揺したり、いらだったりする可能性があります。
そのくらい選手も私たちと同じ「人間」です。中傷にさらされれば、心理的なダメージを受けます。

大会が終わってからも、ネット上に書き込まれたものは残ります。大会後も見ないと自分で決めるか、「反応しない」と決意して見るか、だと思います。
見たくて見るのであれば、選手も相応の覚悟をしないといけないと思います。そのくらい深刻に捉える必要があります。

黒田日銀10年、低金利なのに伸びない設備投資

2022年12月20日   岡本全勝

12月7日の朝日新聞経済欄「黒田日銀10年 異次元緩和の光と影:下」「低金利なのに、伸び悩む設備投資」から。

・・・日本銀行が金融緩和で狙ったのは、人々が財布のひもを緩めて消費を拡大させることに加え、企業がお金を使って投資を増やすことだった。緩和で企業の行動は変わったのか・・・
・・・緩和前に超円高に見舞われ、低迷していた企業業績は緩和下の円安もあって回復。上場企業全体の2022年3月期決算は、最終的なもうけを示す純利益が過去最高となった。民間企業の国内の設備投資(名目)も、12年の76兆円から20年には86兆円に増えた。
ただ、設備投資は主要先進国より伸び悩む。内閣府の年次経済財政報告によると、各国の設備投資額(00年=100)を比べたところ、日本は12年の100から21年に108・7となったが、米国は131・1から177・5になるなど、他国の伸びはより大きかった。
日本が伸び悩む一因に、投資先が国内より成長が見込める海外に向かっていることがある。

「低金利だからということで、設備投資が増長されることはない」
11月、中間決算を発表した東レの大矢光雄副社長は記者説明会で、緩和が設備投資の判断に影響するか記者に問われ、こう否定した。世界29カ国・地域に拠点があり、売上高の海外比率は56%。22年度までの中期経営計画に盛り込んだ5千億円の設備投資も、6割が海外での投資だ・・・

・・・ 低金利環境で企業が助かった面もある。資金繰りが改善し、倒産件数は抑えられている。
東京商工リサーチによると、21年度の倒産(負債額1千万円以上)は5980件で1964年度以来の少なさだ。12年度に1万1719件だった倒産は緩和下で減少傾向が続き、19年度には8631件まで下がった。コロナ下の政府による金融支援もあり、歴史的な低水準に抑えられている。

一方で業績が悪く、本来なら経営が行き詰まりかねないような企業の延命につながったとの指摘もある。
倒産が抑えられれば雇用などにプラス効果がある半面、新陳代謝が滞れば、経済成長にマイナスの影響も出かねない・・・

首相を詰問するイギリス報道機関

2022年12月19日   岡本全勝

12月7日の朝日新聞夕刊、金成隆一・ヨーロッパ総局記者の「首相を詰問 英メディアにみた、記者の役割」から。

英国で7月以降、3カ月ほどの間に2人の首相が相次いで辞任を表明した。ロンドンを拠点とする記者としてこの政治の混乱を取材したが、英メディアの記者らが首相にぶつける質問は厳しかった。

「まるでロビンフッドの正反対ですね」。トラス首相(当時)本人に向かってこう批判したのは、公共放送BBCの中部ノッティンガム放送局の司会者だ。
各地方局の司会者らが順に首相に質問するラジオ番組の中で、政権の減税案について「富裕層を利する」とデータも示しつつ指摘。富裕層から富を盗み、貧者に分けたとされる伝説的な義賊と比較し、あなたは「正反対だ」と断罪した。
財源の裏付けに乏しいまま政権が減税案を発表した直後から、通貨ポンドが急落するなど市場が混乱。そのさなかでの番組で、他の地方局からも「恥ずかしいと感じているか」「あなたのせいで困窮は悪化している」といった厳しい言葉が相次いだ。

きちんとした答えが返ってこなければ、再質問で問い詰める。市場の混乱について国民への説明がしばらくなかったことから、質問者は「どこにいたんですか?」と聞いた。首相が答えずに自らの実績を強調し始めると、「それは(市場を混乱させた減税案の)前の話です」と遮り、再び「どこにいたんですか」と質問した。

北欧の従業員の学び直し

2022年12月18日   岡本全勝

日経新聞が12月5日から「成長の未来図・第3部 北欧の現場から」を連載していました。第1回は「北欧起業圏「自らを再生する街」 救うのは企業でなく人」、第2回は「「古いままが最も怖い」 デンマークの元祖リスキリング」でした。

北欧諸国は、規模も大きくなく、自然環境にも恵まれた方ではありません。しかし、だからこそ、さまざまな挑戦を行ってきました。福祉は有名ですが、経済においてもです。
この二つの記事にあるように、会社が倒産する危機になっても、政府は救いません。生き残ることができない企業に見切りをつけ、新しい企業や事業に従業員が移ることを支援します。そして、国民もそれを受け入れています。
第2回目の記事には、失業対策として、また失業してなくても、学び直しに取り組む姿が描かれています。
4時に仕事を終わらせて、勉強会に参加している人への質問です。・・・ポールセンさんに職歴を聞くと「47歳だけどまだ2社目」という。少し恥ずかしげに答えたのは「よい仕事を得るためなら何度でも転職するのがごく自然」だからだ・・・

そして、国民の幸福度も高いのです。

トルコの若者、経済成長知らず不満

2022年12月17日   岡本全勝

12月7日の日経新聞に「トルコ与党、若者の支持離れに苦慮 経済成長知らず、不満募る」という記事が載っていました。

・・・11月に政権樹立から丸20年を迎えたトルコの与党、公正発展党(AKP)が有権者の支持離れに苦慮している。80%を超える高インフレに加え、過去のめざましい経済成長を知らない若者の不満が強く、2023年半ばに予定される選挙ではエルドアン大統領の再選も予断を許さない・・・
・・・イスタンブール経済研究所の11月調査によると、トルコの将来に「不安」を抱く人は年齢別で18~24歳の若年層が最も多く、58%に上った。反対に「希望」(18%)や「誇り」(9%)を持つのもこの若年層が最も少なかった・・・

・・・AKP政権下でトルコの1人当たり国内総生産(GDP)は3000ドル(約40万円)台から13年までに1万2000ドル台と約10年で3倍超に増えた。全国に空港や大学ができ、医療へのアクセスも大幅に改善するなど国民は成長を実感した。だが近年は1人当たりGDPは1万ドルを割り込む。
AKP政権でいったんは前進したようにみえた民主主義も近年は後退が著しい。英国の調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が公表する民主主義指数でトルコは13年ごろから年々、スコアを低下させている。

しかし、人々に不自由を感じさせるだけの欧米的な自由主義を浸透させたのも現政権の功績といえる。AKP政権以前のトルコでは世俗主義の守護者を自任する軍が強い力を持ち、人口の大半を占める敬虔なイスラム教徒が抑圧されていた。イスラム主義を掲げるAKPも裁判で違憲とされた・・・