カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ボランティアと現地を結ぶ活動

2023年2月22日   岡本全勝

2月17日の朝日夕刊夕刊、兼子佳恵・特定非営利活動法人やっぺす元代表へのインタビュー「石巻は復興しましたか?」から。

東日本大震災を契機に復興団体を立ち上げた宮城県石巻市の兼子佳恵さん(51)。ボランティアと現地をつなぎ、住民同士が支え合う取り組みは全国的に注目され、組織や形を変えながら今も活動を続けている。

《数日後に電話がつながると、防災の専門家から連絡が入った。神戸市の田村太郎さんだった。阪神大震災を契機にボランティアや多文化共生の活動を始め、復興庁の復興推進参与になった人だ。東日本大震災の前に石巻で講演し、兼子さんと旧知の仲だった。兼子さんは田村さんたちと避難所を回り始めた。》
避難所には医療など様々なケアを必要とする人がいます。ボランティアと現地を結ぶ活動をしました。避難所や仮設住宅では、課題が次から次へと出てきます。田村さんたちは活動のノウハウを持っていますが、地元のことは知りません。私たちだからできることがあると知りました。
仮設住宅は知らない人の集まりです。一からコミュニティーをつくらないといけません。この時期、全国からたくさんのボランティアが来て、仮設住宅で支援物資を配り、炊き出しをしてくれました。でも知人がいるところや、人がたくさん集まる場所など偏りが生じていました。

ここで生きる人がつながる必要があると考え、2011年5月18日、私たちは「石巻復興支援ネットワーク」を設立しました。通称「やっぺす(現在は正式名称)」。石巻の方言で「いっしょにやろうよ」の意味です。ボランティアの受け入れ窓口となり、地元の方にも協力してもらってお茶会、絵手紙、カラオケ大会、フラワーアレンジメントなどの講座を開きました。仮設でも「ここに住んで良かった」と思ってほしかったのです。

まんが「寺田寅彦エッセイ集」

2023年2月17日   岡本全勝

鎌田浩毅先生が監修された「これから科学者になる君へ 寺田寅彦エッセイ集」(2023年、KADOKAWA)を紹介します。
角川まんが学習シリーズ」は、小学生に向け、学習まんがです。
寺田寅彦は、「天災は忘れた頃にやってくる」で有名ですよね。
内容は、リンクを張ったホームページを見ていただくとして。大人でも楽しめます。小学生には少々難しいかな。

侵略されるのは嫌だけれど、自分は戦いたくない。できれば他人に戦ってほしい。

2023年2月16日   岡本全勝

2月5日の読売新聞言論欄、井上義和・帝京大教授の「「祖国」を守る想像力 必要」から。

・・・ウクライナはこの1年間、自国の領域内でロシア軍を迎え撃つ戦いに徹してきました。焦土と化した街で市民までも武器を手に取り、兵站を支える総力戦を続けています。必然的に犠牲者は増える。それは日本が国是としてきた「専守防衛」に他なりません。
ウクライナでは、軍に入る男性が国外に避難する妻や子どもたちに向き合い、「国のために戦うよ」と語りかけています。こうした映像は日本でも繰り返し放送されました。しかし私たちは、危険を顧みずに国を守る人たちがいることを、別の世界の出来事のように捉えています。ロシアの暴挙が、文明が進んだはずの21世紀の世界でも、明白な侵略戦争が起きる事実を示しているのに。

専守防衛とは、相手から攻撃を受けたときに初めて、必要最小限度の防衛力を行使する受動的な戦略です。先の大戦を起こした痛切な反省と周辺国への配慮から、日本は専守防衛を国是とし、国民も支持してきました。一定程度持ちこたえれば、同盟国や国際社会が助けてくれるという発想です。
それは自分から仕掛けなければ相手から攻撃されることはないという信念の裏返しでもあります。戦後の日本では、外国の侵略からどう国を守るかという真剣な問いかけは忌避されてきたのが実情です。

昨年4月、日本人の学生100人を対象にアンケート調査をしました。「他国が自国に攻め入ってきたら、国のために戦いますか」との質問に「いいえ」と答えた学生は32人で、「わからない」との回答は40人に上りました。
その一方で、「戦わずに、敵の侵略を受け入れた方がいいと思いますか」と聞くと、88人が「いいえ」と回答し、「できれば自分や身内以外の他の誰かに戦ってほしいですか」との問いには、47人が「はい」と答えました。
最初の質問で「いいえ」と「わからない」が多いのは、国際意識調査で示された日本の傾向と同じでした。侵略されるのは嫌だけれど、自分は戦いたくない。できれば他人に戦ってほしい。多くの日本人には、そんな本音があるのではないでしょうか。危機が訪れたとき、どこからともなくヒーローが現れ、敵を撃退して去って行くのが理想なのでしょう。でも現実の世界ではそんなことはあり得ません・・・

ライト・ミルズ著『社会学的想像力』

2023年2月15日   岡本全勝

ライト・ミルズ著『社会学的想像力』(2017年、ちくま学芸文庫)を読み終えました。
ほかの本にも引用されていて気になっていたのですが、なかなかその気にならず。『21世紀を生きるための社会学の教科書』で、読まなくてはならないと考え、文庫本で新訳が出て読みやすくなったので挑戦しました。判型は読みやすくなったのですが、内容は決してわかりやすいものではありません。かなりの日数がかかりました。布団で読む本ではないですね(反省)。

ウィキペディアのミルズの項では、「「一人の人間の生活と、一つの社会の歴史とは、両者をともに理解することなしにはそのどちらの一つも理解することができない」と考える想像力である」と書かれています。
私なりに理解すると次のようになります。
ミルズは、社会学を学ぶ意味とは人が日々遭遇する困難を根本的に解決するにはどうすればよいかを考えることである、と言います。個人が困っている問題を本人の責任とせず社会の問題であると位置づけることが、この学問の意義だと言うのです。そのためには個人の日常の問題を社会と関連づけて捉える知性が必要であり、その知性を「社会学的想像力」と呼びます。
我が意を得たりです。「今頃、遅い」と言われそうですが。早速、連載「公共を創る」に利用しました。
このホームページを検索すると、「社会を観察するのではなく、社会に参加し貢献する学問」から「社会学的想像力と政治的想像力」まで、長く同じ主題を考えていたのでした。

要旨は明快なのですが、当時の社会学への批判の書でもあります。原著が出版された当時(1959年)の社会学界、特にアメリカの社会学界を知らないと、理解しにくいのです。パーソンズの「構造主義」や、調査統計に特化する社会学を批判します。社会学の有り様を理解するにはよい本です。もっとも、出版以来、半世紀以上が経っています。
ミルズの書は、学生時代に政治学で『パワー・エリート』を読みました。あの人だったのですね。

日本を捨てて外国に行く人たち

2023年2月13日   岡本全勝

朝日新聞が、1月27日から「わたしが日本を出た理由」を連載していました。
・・・海外に移住する人の流れが静かに増えています。失敗のリスクも承知のうえで、生まれ育った日本を離れた決断の背景には何があったのか。それぞれのストーリーを重ねていくと、日本の現在地が見えてきました・・・
として、日本での仕事を辞めて、海外に移住し仕事をしている人たちを紹介してます。

そこに見えるのは、海外が憧れと言うより、日本の職場の処遇の悪さです。給与が低い、勤務時間が長い、休みを取れない、周囲の目が厳しいなどなど。日本の職場の「欠点」が見えます。このような現実が広く知れ渡ると、日本型職場慣行がおかしいことや、経済力が低下していることが理解され、変わる一助になるのではないでしょうか。

福井県立大教授(人口学)・佐々井司さん
――海外永住者がコロナ下でも増え続けています。
このところ非常に強くなった、日本の閉塞感が背景にあるのでしょう。賃金や労働環境、社会の多様性などの面で、日本より欧米諸国に相対的な魅力を感じる人が多くなっているのではないでしょうか。閉塞感が解消しない限り、増加傾向は続くと思います。

――長期滞在者も含めて、いつごろから増え始めたのですか。
2000年ごろからです。日本経済の低迷や日系企業の海外進出が進むなか、日本国内での求人は抑制され、特に若い人たちが正規雇用につきにくくなりました。

――日本の人口減を抑えるため、海外から移民を積極的に受け入れる必要があるとの意見があります。
日本の賃金は上がらず、他の国の賃金は上がってきています。日本に来る外国人の数は減り、人材の質も変わるでしょう。日本人が生きづらさを感じているなかで、外国人の方々はいつまで働きに来てくれるでしょうか。「外国人に来てもらえば何とかなる」という楽観的なシナリオは、もう成り立たないと思います。