カテゴリーアーカイブ:社会の見方

競争が動物の進化を促す

2023年3月31日   岡本全勝

3月26日の日経新聞科学欄「体サイズ急変、絶滅リスク 島の哺乳類、人類の狩猟も影響」が、興味深かったです。

・・・ドイツのマルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルクや東京大学などは、生物が体のサイズを極端に変える進化は絶滅につながりやすいとの分析をまとめた。島のような特殊な環境では大きい動物が小型化したり小さい動物が大型化したりする・・・
・・・大陸の祖先と比べて体重が1%程度になったゾウや、祖先の200倍の大きさになったジャコウネズミは絶滅した・・・

へえ、そんな進化もあったのですね。
私が注目したのは、「大陸から離れた島では捕食者がおらず、脳の縮小や走行能力の低下も起きる」という指摘です。
そこに人類が渡っていくと、簡単に捕まえられて、滅んでしまいます。

古語解説「気配り」

2023年3月30日   岡本全勝

「気配り」とは、かつて日本にあったとされる慣習。
周囲の人が困らないように、あるいは行動しやすいように、自ら行動すること。相手の行動を予測し「気を配ること」から来た語。例えば通路で並ぶ場合は、端に立って他の人が通りやすくすること。
スマートフォンの普及によって、公共の場でもスマホに熱中し、周囲に気を配らない人が増えて、この言葉はほぼ死語となった。先の例で言えば、電車の扉近くに陣取りスマホに熱中し、他人の通行の邪魔になっても気づかない。通路でもスマホを見ながら歩き、他の人とぶつかるなど。

「気配りはやめよう」と、政府が推奨したり法律で禁止しても、ここまで徹底できなかったでしょう。
スマートフォンが普及して、まだ20年も経ちません。この短期間に、何百年も続いていたと思われる「気配り」の習慣が「絶滅危惧種」になるとは、スマホの威力はすごいです。その分野にノーベル賞やギネスブック認定があれば、第一位になるでしょう。

追記
読者から、次のような指摘がありました。
「気配り」は「仲間内ですること」としては生きているので。古語ではなく意味がずれた言葉(古今異義)なのでしょう。

意識を変える難しさ

2023年3月29日   岡本全勝

女性の昇進を阻む男性たち」「人は何に従うか」の関連にもなります。
人の意識を変えるといった場合に、二つの状況があります。
例えば、「たばこのポイ捨てをやめましょう」という呼びかけは、たばこを吸う人向けです。たばこのポイ捨てがなくならず、エスカレーター問題に見られるように、呼びかけだけでは効果が少ない場合にどのように働きかけるか。これが課題です。
ところが、女性の昇進を進める場合は、呼びかける相手は女性ではなく、それを阻んでいる男性に向ける必要があるのです。すると、喫煙者向けより、難しくなります。
すなわち、本人の課題か、周囲の課題かです。

少子化問題についても、よく似た課題があります。生まれる子どもの数が減っています。しかし、夫婦から生まれる子どもの平均数は減ってはきていますが2人程度で推移しています。すると、夫婦に向かって「子どもを産みましょう」と呼びかけても、大きな効果はないでしょう。
結婚した夫婦から生まれる子どもの数が減っていないのに、子どもの数が減っているのは、結婚する若者が減っているからです。
夫婦に働きかける以上に、独身者に結婚する気になるように働きかける必要があります。「若者には結婚したい意識がある」という調査結果もあります。彼ら彼女らが結婚に踏み切れない課題を解決する必要があります。それは、彼らに問題があるのではなく、社会の仕組みに問題があります。
「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」のような昭和の標準的家庭は、過去のものになりました。非正規の若者は結婚が難しいです。それを変える必要があるのです。

「海外ルーツの子」?

2023年3月29日   岡本全勝

「海外ルーツの子」と聞いて、あなたは、どのような子どもを思い浮かべますか。
3月23日の朝日新聞「海外ルーツの子へ、学習アプリを開発」に、次のような文章で出てきました。
「日本語指導が必要な子どもが増えている。海外にルーツがあり、日本で生活する子どもたちが、楽しく日本語や漢字を学べる方法はないか」
そして、記事の後ろには、次のような解説がついています。
「日本に暮らす、海外ルーツの子どもは増えている。20年の国勢調査によると、外国籍の19歳以下の人は29万5188人で、10年前の約21万人から8万人以上増えた」

私が疑問に思ったのは、「ルーツ」という言葉です。かつて、アレックス・ヘイリーの「ルーツ」という本が売れました。これは、確かアメリカの黒人がアフリカまでご先祖を探しに行くという話でした。
辞書には、起源、由来、先祖、故郷などが挙げられています。さて、この記事での「ルーツ」は、どれに当たるのでしょうか。

日本語が母語でない子どもたちを指しているようですが。
本人の生まれ育った地は、通常はルーツとは言いませんよね。出生地でしょう。「ルーツ」では、親や祖先が生まれ育った地で本人の出生地ではない国を想像します。しかし、「在日」と呼ばれる人たちの3世は、「海外ルーツの子」に入るのでしょうが、多くの子どもは日本語を話すと思います。
カタカナ語は、意味が曖昧なことが多いです。新聞記事がそれを助長するのは、困ります。

会社による社会保障国家の限界

2023年3月24日   岡本全勝

3月14日の朝日新聞夕刊、浜田陽太郎記者の「休職体験への指摘 「正社員」の私、分断を自問」から。

・・・やはり来たか――。予想はしていたが、グサッと刺さった。
「55歳の『逃げ恥』体験」という記事を、朝刊リライフ面で連載している。
「自分は会社で役立っていないのでは」と悩んだ私は「自己充実休職」という制度を使って1年間、九州・大分で過ごした。その体験を軸にした記事だ。デジタル版では昨年末、同じストーリーをより詳しく書き込んで配信している・・・
・・・「正直、共感するポイントを探すことが難しい」。私の記事にこんなコメントを寄せたのは、人類学者の磯野真穂さんだった。
任期無しの正社員に一度もなったことがない磯野さんにとって、落下しても「ふかふかの羽毛布団と高級マットレス」が待ち構えている人(つまり私)と、「冷たいコンクリート」がある人(任期付きで働く多くの非正規労働者)が存在することをあらわにされた気持ちはぬぐえないという厳しい「感想」だった。
ただし、磯野さんは、こうした思いを言葉に出すことの危うさへと論を進める。「あなたよりもっと大変な人がいる」という語り口を進めれば「不幸の総量」が発言力を決める事態に陥るからだ。個々人の感じる苦しさを重量のように比べる議論は分断しか生まない……。・・・

・・・ 最近、ある有識者から、子育てや住宅の分野で日本の社会保障が立ち遅れたのは「それはカイシャ(会社)が面倒をみるべきもの」という規範意識が岩盤のようにあるからだ、と指摘された。
カイシャが面倒をみるのは正社員のみ。その枠から漏れる非正規労働者には「冷たいコンクリート」しかない状況を変えるため、政府にお金を預け(税金を払い)、社会保障を充実すべきだとの主張はこの岩盤を崩せていない、という。
正社員にも切実な不安や苦しみはある。だが、その吐露を批判されるのは嫌。黙って岩盤を守っている方が得策。そんな気分が自分にないか、自問自答するところから始めている・・・