カテゴリーアーカイブ:社会の見方

日本人は世間の目を気にするか

2023年2月26日   岡本全勝

日本人論や日本特殊論の定番に、「日本人は世間の目を気にして行動する」という説があります。確かに、法律で強制していないのに、みんながマスクを着用することなどは、世間の目を気にしているということで説明がつきます。「世間という同調圧力

他方で、「本当かな」と思う事例もあります。私たちは子どもの頃から「人に笑われないように」と教育されてきました。でも、朝の通勤通学の電車中で、たくさんの人がスマートフォンのゲームやドラマに熱中しているのは「みっともない」とは思わないのでしょうか。

国際社会においても、明治以来、「西洋先進国に遅れてはいけない」と「笑われないように」と言われてきました。ところが、1991年の湾岸戦争で、石油をこの地域に大きく依存しているのにもかかわらず、不法なイラク軍を追い出すために関係国が軍隊を派遣する中、日本だけがお金で解決しようとして、世界から厳しく批判されました。
上記のマスクについても、現在ではほとんどの国で着用をやめたのに、日本はまだ守っています。先日ヨーロッパに出かけた知人が「誰もマスクをしていなくて、している自分が恥ずかしかった。すぐに外しました」とのこと。

これらを見ていると、どうも日本人が気にする「世間の目」は一貫せず、ご都合主義的です。そして、「自分では判断したくない」「大きな負担はいやだ」という意識の表れのようにも見えます。
それにしても、エスカレーターの右側が空いているのに、左側に延々と並んで待つのは、やめませんか。非効率です。鉄道会社が「二列に並んで、手すりを持って・・・」と呼びかけているのに、改善されませんね。

デジタル技術を活用した労災防止

2023年2月25日   岡本全勝

2月16日の読売新聞夕刊に「建設業労災 DXで防げ AI危険予測やVR研修」が載っていました。

・・・労働災害による死者が業種別最多の建設現場で、デジタル技術を活用した安全対策を導入する動きが広がっている。人工知能(AI)が危険を予測するシステムや仮想現実(VR)技術を応用した安全研修などを取り入れ、作業員の安全向上につなげる企業も出始めた。厚生労働省も活用を積極的に後押しする。

清水建設(東京)は、人と重機の接触を防ぐシステムの開発を進めている。重機に取り付けたカメラ画像をAIが解析し、人が重機に近づくと警報音が鳴るシステムだ。
AIが人を認識するのに学習させたのは、人体の全身骨格。体の一部が積まれた資材に隠れていたり、かがんでいたりしても検知できる。現在、トンネル掘削現場などで実証実験を重ねており、危険を検知すると重機が自動で止まるシステムの搭載を目指す。・・・

・・・厚労省労働基準局の美濃芳郎・安全衛生部長は「デジタル技術の活用で現場の安全対策だけでなく無人化など作業の効率化も進めば、労働災害のリスクや労働時間を減らすことができ、従業員の職場定着にもつながる。新技術の研究開発や企業への導入を促す取り組みを進め、業界の魅力を高めていきたい」と話している・・・

近藤和彦先生「『歴史とは何か』の人びと」

2023年2月24日   岡本全勝

近藤和彦先生が、岩波書店のPR誌『図書』に、「『歴史とは何か」の人びと』」を連載しておられます。2月号は、「R・H・トーニと社会経済史」です。
9月号トリニティ学寮のE・H・カー 、10月号謎のアクトン、11月号ホウィグ史家トレヴェリアン、12月号アイデンティティを渇望したネイミア、1月号トインビーと国際問題研究所。

これは面白いです。20世紀前半のイギリス歴史学を担った人たちの「肖像画」「舞台裏」です。学者は書き上げた論文で評価されますが、それは機械が作るのではなく、血の通った人間が作るものです。彼らが置かれた環境、育った経歴、意図したところが、論文を作り上げます。新しい歴史学を作った人たち、新しい見方を作った人たちには、もちろん時代背景もありますが、それだけではなく、それを生み出す個人的な背景があります。人間くささが、私たちを引きつけます。

雑誌『図書』は、1冊100円、年間1000円で、ほかにも興味深い文章を読むことができます。大きな本屋では、ただでもらえます。お得です。
近藤和彦訳『歴史とは何か』

学ぶべき既存知識の増加が技術革新を阻む

2023年2月24日   岡本全勝

2月16日の日経新聞経済教室「イノベーション起こすには」、リー・ブランステッター カーネギーメロン大学教授の「能力開発・国家間協力が必須」に、次のような記述があります。

第二次世界大戦後、科学技術の飛躍的進歩とともに、経済も成長しました。ところが、1970年代以降、成長は減速します。今後、技術革新は難しくなるとの見立てがあります。
それは、「知識の負荷」が増えているからです。知識のフロンティアを進めるためには、まず既存の知識を習得しなければなりません。しかし、既存知識はどんどん増えて、個人一人ではすべてを習得することが難しくなったのです。

学校でもそうですよね。私が学生だった頃に比べて、地学ではプレートテクトニクス論が、生物では分子生物学などが「追加」されました。少し異なりますが、管理職の必須知識も増えました。

「土地は公のもの」への一歩

2023年2月23日   岡本全勝

2月15日の日経新聞オピニオン欄、斉藤徹弥・上級論説委員の「「土地は公のもの」漸進的改革を」が勉強になりました。

明治初めの地租改正が、近代日本の強い土地所有権をつくりました。日本の土地所有権は、何をしてもよい絶対的土地所有権といわれます。これに対して、厳しい建築規制で街並みを保つ欧州は、相対的土地所有権といわれます。日本でも、土地公有化論や私権制限を強める議論もありましたが、進みませんでした。

かつては、土地は重要な財産で、一坪の土地を巡って争いがありました。ところが、山林も田畑も富を生まなくなり、管理されない土地が増えています。弥生時代以来続いてきた「土地への執着」が、崩れつつあります。
日本には、土地を放っておく「自由」もあるのです。しかし、放置されたままの土地は地域に悪影響を及ぼします。自治体では、空き家対策や、危険な空き家を取り壊す取り組みも進んでいます。政府も、所有者不明土地問題で、公共の福祉を優先した所有権の抑制に乗り出します。相続登記を義務とし、国庫帰属制度を始めます。

なかなか進まなかった、「土地は公のもの」という認識が進むきっかけになるかもしれません。