カテゴリーアーカイブ:社会の見方

「オッカムの剃刀」

2023年8月22日   岡本全勝

ジョンジョー・マクファデン著『世界はシンプルなほど正しい 「オッカムの剃刀」はいかに今日の科学をつくったか』(2023年、光文社)を読みました。大分前に読み終えたのですが、どのように紹介するのがよいか悩んでいるうちに、時間が経ちました。

出版社の宣伝には、次のようにあります。
「よりシンプルな答えこそ好ましく、往々にしてそれは正しい――複雑さや冗長さを容赦なく削ぎ落とすさまから「オッカムの剃刀」と呼ばれるこの思考の方針は、科学を宗教の支配から解放し、地動説、量子力学、DNAの発見など、多くの科学的偉業を支えることとなった。本書は科学の発展史を辿りつつ、単純さこそが、宇宙や生命の誕生といった深遠な謎を解き明かす鍵であることを示す壮大な試みである。そしてすべては、中世の果敢な神学者の冒険から始まる」

西洋科学史の概説書、それを「より簡単に説明する方向に進んだ」という視点から説明した本、といったら良いのでしょうか。重力による地上と天空の運動の統一、電磁力による磁気と電気の統一、遺伝子(二重らせん)による分子と生物学の統一など、なるほどと思いつつ。結果としてみると、オッカムの剃刀なのですが、それぞれの科学者はそれを意識していたかというと、そうでもなさそうです。

科学の進歩を認めつつ、最も簡単な説明は「神様が作られた」という説です。

増える日本在住の外国人2

2023年8月21日   岡本全勝

増える日本在住の外国人」の続きです。

別の新聞の記事で、「外国ルーツの子どもたち」という言葉が使われていました。日本語での授業について行けないことを取り上げた記事です。
この言葉って、どの範囲の子どもを指しているのでしょうか。「ルーツ」と聞けば、外国人を両親や先祖に持つ子どもと想像しますが、そうでもないのでしょう。この文脈では、外国生まれの子どもも入るのでしょうし、両親が外国生まれでも日本語が堪能なら外れるでしょう。
私は「岡本の先祖は、1500年前に大陸から飛鳥の地に渡ってきた帰化人の子孫だ」と称しています(韓国でその話をしたら、「岡本さんの顔は韓半島でなく、中国だ」と言われましたが)。私も、外国ルーツかな(最近は帰化人とは言わないそうです)。

困ったものです。明晰な言葉を指導しなければならない大新聞が、このような曖昧な言葉を使うことは。国語辞典に載っていない言葉を安易に作るのは、日本語を学ぶ外国人も困るでしょう。ケア、フォロー、イベント、ハードル、クリア・・・。
さらに、アルファベットの略語も。SNS、IT、SDGs・・・。分かりやすい日本語にする努力を怠っています。「PF」って分かりますか。プラットフォームの略です。それも電車の駅ではなく、インターネットでの場を提供する企業のことだそうです。

コロナ対策、飲食店冷遇

2023年8月17日   岡本全勝

8月6日の読売新聞文化欄「コロナの時代を読む」、苅部直東大教授の「飲食店冷遇 苦い記憶」から。

・・・結果から言えば、日本は高齢者が多いにもかかわらず、人口あたりの死者が少なかった。政府や、医療機関、高齢者施設が頑張ったと言えます。市民の努力もあった。マスクを着け、多くの人が在宅勤務に切りかえました。
いちおうそう評価した上で問題を挙げるなら、飲食店を明らかに締め付け過ぎました。ウイルスの性質がまだわからず、ワクチンができるかどうかも不明だった時期はしかたがないとしても、その後まで営業を規制し続けた。午後8時までの時短営業の時期に、お店に行ったら、かえって混んでいて「密」になっていましたね。

『日本の水商売』を書かれた法哲学者の谷口功一さんは、コロナ下で、日本各地のスナックを中心に夜の街を取材しました。その終章で、個人にとって重要な「営業の自由」などの経済的自由が、あまりに軽視されていると問題提起しています。メディアは「表現の自由」には敏感ですが、飲食店の営業権の問題には冷たかった。個人が店を円滑に営業できることだって、基本的な権利として守られるべきなのに、低く見られている。人間の権利とは何かについて、真剣に考えてきたかが問われていると思います・・・

・・・ロックダウンをせず、自粛などの「要請」にとどめたのが日本型のコロナ対策でした。でもそのせいで補償が不十分になりました。行政の側は、とにかく何か「やってる感」を出さなければいけなかったのでしょう。その手段として飲食店と夜の街を槍玉にあげたのは筋が悪かった。
行政では最近、結果がきちんと出ているかを数値で検証して、政策の善し悪しを測ることがはやっています。その発想は大事ですが、数字に表れる効果がすべてではないし、長期的な意義はそうした検証では測れない。限界のある発想であることに気づかないまま、それに依拠していると、「悪い結果を出したくない」という消極的な判断にばかり向かってしまう。その結果、一部の人からの批判を過剰に恐れ、飲食店をはじめとする大多数の人たちが迷惑を被るという、おかしなことになっています・・・

株式投資

2023年8月14日   岡本全勝

株価の変動は、円ドル相場とともに、社会人になってから仕事にも関係あるので、気にするようになりました。しかしそれは、経済の動きとしてであって、自分の財布とは縁遠い話と思っていました。知人には、「儲けた」「損をした」という人もいましたが。日経新聞の多数のページを占めている株価欄も、邪魔なだけでした。

子どもの時に学校でも、貯金の重要性は教えられました。貯金箱も、いろんなところでもらいました。郵便貯金もさせられました。他方で株については、「怖いものだ」と教えられました。「祖父が買った株や国債は、敗戦で紙切れになった」と父に教えられました。
どこでどのように買うかも知りませんでした。大きな街には証券会社の建物がありましたが、縁の遠い存在でした。そもそも、若いときは給料で生活することが精一杯で、その後は家を建てた借金を返済することが先決でした。

株式投資の専門家である川北英隆先生のブログに、しばしば株のすすめが書かれています。「株式投資は実践あるのみ-1」以下の連載が、わかりやすいです。

中3、英語話す正答12%

2023年8月12日   岡本全勝

8月1日の各紙が、今年4月に実施した全国学力・学習状況調査結果を報道していました。特に目立ったのが、中学3年の英語で「話す」の平均正答率が12%ということでした。読売新聞「学力テスト 英語「話す」正答率12.4% 中3 全問不正解6割超」から引用します。

・・・文部科学省は31日、今年4月に実施した2023年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。中学3年が対象の英語では、「話す」技能の平均正答率が12・4%にとどまった。英語を使ったコミュニケーションを重視する中学校の学習指導要領が21年度に実施されてから初めてのテストだったが、英語で表現する力が十分に身に付いていない実態が明らかになった・・・

・・・英語の平均正答率を技能別でみると、「聞く」が58・9%、「読む」は51・7%で5割を超えた。一方、「書く」は24・1%にとどまり、全国値を推定した「話す」に次いで低かった。
「話す」は、英語で考えや気持ちを伝え合う活動を重視する学習指導要領を踏まえて出題された。全5問のうち、留学生による環境問題の発表を聞き、1分間で自分の意見とその理由を考え、30秒間のうちに英語で答える問題では、正答率がわずか4・2%だった。
「話す」では、1問も解けない生徒が6割を超えた。作問した国立教育政策研究所の責任者は「聞いたことを基に考えと理由を述べる力を測る狙いだったが、場面設定が複雑になりすぎ、生徒には難しかったようだ」としている・・・

8月1日の日経新聞夕刊「受験のリアル・大学編」で、後藤健夫さんが「大学共通テスト、英語4技能試験の活用はなぜ難しい」を書いておられました。そこでは、日本の高校生は英語ができない理由として、社会が英語の能力を求めていないからだと喝破しておられます。