カテゴリーアーカイブ:社会の見方

アジアで負ける最低賃金

2023年10月19日   岡本全勝

10月17日の朝日新聞に、大倉忠司・鳥貴族HD社長の話「外国人労働者来てもらわないと」が載っていました。
焼き鳥居酒屋チェーン「鳥貴族」は、昨春以降、2度の値上げに踏み切りました。

――値上げの理由は原材料高やエネルギーコストの上昇?
「一番の目的は従業員の給料アップのためです。諸外国に比べて日本の給料は安すぎます。海外の方が稼げると、すし職人など人材が流出しています。物価上昇が進む外国にあわせて、日本もモノの値段を上げていくべきです。もちろん賃上げとセットで」
「外国人労働者にもそっぽを向かれかねません。鳥貴族では、パート・アルバイト従業員の2割が外国籍ですが、もっと時給を上げないと日本に来てくれなくなるでしょう。日本は外国人の雇用を積極的に受け入れていかなければ成り立っていかない。このままでは『失われた30年』が40年、50年になっていくと思います」

ホテル、脱亜入欧の終わり

2023年10月18日   岡本全勝

先日の日経新聞日曜版に、東京の帝国ホテルが日本料理の直営店を開いたことが載っていました。2021年に開店したそうですが、帝国ホテル130年の歴史で初めてのことです。既にほかの日本料理店が経営する店はあったのですが。
帝国ホテルのホームページにも、次のように書かれています。
「「帝国ホテル 寅黒」は、世界のVIPを日本の心でおもてなしする“和のダイニング”として、2021年11月に開店しました。帝国ホテルが直営する日本料理は、130年を超える歴史の中でもここが初めて。」

なぜか。それは、帝国ホテルが、日本が近代国家として認められるためにつくられたからです。そのためには、フランス料理でなければなりませんでした。東洋の遅れた小さな国が、精一杯背伸びしたのです。

しかし、外国から訪れるお客さんは、日本料理も食べたいでしょうね。かつては、西洋人からすると「変な食べ物」とも思われた和食も、寿司と天ぷらから始まり、いまや世界に通じる料理になりました。日本酒もです。
ホテルにおいても、ようやく脱亜入欧、欧米をうらやましく思う時代が終わったということでしょうか。

通じない新語をつくる

2023年10月13日   岡本全勝

このホームページで、しばしば取り上げている、カタカナ語、アルファベット略語の批判です。新しいカタカナ言葉やアルファベット略語をつくるのは、言葉をわかりにくくするという意識も働いているようです。

先日、日本糖尿病協会などが、糖尿病の名称をダイアベティスに変える案を検討しているとの報道がありました。例えば、9月21日の読売新聞「糖尿病=ダイアベティス 新呼称案近く公表へ 連想しづらく普及課題」。ダイアベティスは、糖尿病の英語だそうです。
糖尿病という病名を嫌がる患者の声に応えるためだそうです。わかりにくくするという意図があるのでしょうが、日本語にしようとする努力はないのでしょうか。
痴呆性は認知症に、精神分裂病は統合失調症に変更しましたよね。

9月29日に文化庁が、国語世論調査を発表しました。アルファベット略語についての質問もあります。
問7:質問 あなたは、ふだん、見聞きする言葉の中で、外国語の頭文字などを使ったいわゆるアルファベットの略語(例:AED、SNS、DX等)の意味が分からずに困ることがありますか。それとも、ありませんか。 (一つ回答)
問7:全体の結果・年齢別の結果 「よくある」(31.4%)と「時々ある」(53.7%)を合わせた「ある(計)」の割合が85.1%、「全くない」(1.9%)と「余りない」(12.0%)を合わせた「ない(計)」が13.9%となっている。 また、「ある(計)」の割合を年齢別に見ると、おおむね年齢が上がるに従って、割合が高くなる傾向にある。

問8付問2:質問 (問8で「どちらかと言うと好ましくないと感じる」、「好ましくないと感じる」と答えた人(全体の54.3%)に対して) 好ましくないと感じるのは、どのような理由からですか。 (幾つでも回答)
問8付問2:全体の結果 「意味が分かりにくいから」を選択した人の割合が94.2%と最も高く、次いで「見慣れない言葉だから」(31.1%)、「漢字や仮名の言葉を使った方がいいから」(29.5%)が約3割となっている。

9月30日の朝日新聞「「推し」「盛る」「引く」 世代超え定着、新しい表現は―― 国語世論調査」は、次のように書いています。
・・・AEDは自動体外式除細動器、SNSはソーシャル・ネットワーキング・サービス、DXはデジタルトランスフォーメーションを意味する。文化庁の今村聡子国語課長は今回の調査結果について、「意味を伝え共有するという言葉の機能が十分に果たせていない、と受け手が感じてしまっている」と指摘。調査の担当者も「相手に伝わるかどうかが大切。公用文などでは今後留意していくべきだ」と話した・・・

参考「頭は類推する。カタカナ語批判。1

「先の大戦」、内容と名称

2023年10月12日   岡本全勝

10月2日の日経新聞夕刊、斉藤徹弥・編集委員の「「新しい戦前」に必要な思考 多面的で柔軟な外交が重要」に次のような話が載っています。

・・・筑波大学名誉教授で国立公文書館アジア歴史資料センター長の波多野澄雄さんは「先の大戦は4つの異なる戦争が重なったものだ」とみています。
まず日中戦争です。1937年から45年まで戦った一番長い戦争です。2つ目は日米戦争で、太平洋を舞台に多くの犠牲者を出しました。3つ目が東南アジアでの日英戦争です。フランスやオランダを入れてもよいでしょうが、東南アジアの独立に影響を及ぼしました。最後が45年8月から1カ月弱の日ソ戦争です。

先の大戦は、多大な犠牲を払い、あらゆる人に影響を与えました。その教訓も多岐にわたり、理解するのは容易ではありません。このように戦争を4つに分けて考えれば、それぞれの戦争の目的や被害、残した負の遺産などを考えやすくなるでしょう。戦争を多面的にみることができるようになるかもしれません・・・

4つに分けるのは、わかりやすいです。
では、全体を何と呼ぶか。「先の大戦」と呼びますが、悩ましいです。「第二次世界大戦」は日本がアジアで行った戦争だけでなく、ヨーロッパでの戦争を含みます。
当時の日本政府は1941年(昭和16年)に始まった戦争を「大東亜戦争」と呼び、その前に始まった日中戦争は「支那事変」と呼んでいたようです。戦後は「太平洋戦争」が使われるようになりましたが、これは対米戦争を表す言葉でしょう。

外国との経済格差

2023年10月10日   岡本全勝

この30年間、日本の経済が発展せず、所得が上がりませんでした。その間に、欧米は先に行き、アジア各国が追い上げ追い越していきました。日本は、安い国になりました。

9月25日の日経新聞、石鍋仁美・編集委員の「JRが外国人パスを大幅値上げ 訪日客価格、手本は途上国」に次のような話が載っています。
・・・10月1日、JRグループが大幅値上げを実施する。購入方法によるが、上昇率は普通車で49〜69%、グリーン車56〜77%になる。ただし一般の日本人はほぼ関係ない。対象は訪日観光客が買える全国乗り放題の「ジャパン・レール・パス」。売れ筋の7日間用だとこの上げ幅になる。
今の7日券の店頭価格は東京・大阪間の新幹線往復と大体同じ・・・

これまで安くしていた外国人観光客用料金を、日本人並みに上げたのです。それでも、一人あたり所得が日本を超える諸外国観光客からは、まだ安い価格です。
「松竹梅3段階の価格を用意すると、日本人は竹、外国人は松を選ぶ」という業者の話も紹介されています。
都市の高層ホテル、地方の古民家改装宿など外国人狙いの宿泊施設も、高級物件が多いとのこと。東京六本木には、1杯1万円のラーメン店ができたそうです。

一つの国土に、二つの経済圏ができています。
でも、かつて途上国に仕事や観光に行ったとき、同じことを経験しましたよね。悲しいのは今回は状況が逆転して、豊かな訪日外国人に対して、貧しい日本人がサービスを売ることです。

9月29日の日経新聞「経済教室」、吉田二郎・ペンシルベニア州立大学教授「世界一の大都市形成に寄与 住宅市場の特質と課題」には、安い日本の住宅が取り上げられていました。
ワンルームおよび1LDKアパートの家賃は、東京都心では平均約14万円ですが、ロンドンでは約39万円、ニューヨークでは約56万円です。
住民にとってうれしいですが、他の条件の違いがあるとしても、それだけの経済格差があるということでもあるのでしょう。