「社会」カテゴリーアーカイブ

社会

インターネット上に個人が持つ情報「デジタル遺品」

9月19日の朝日新聞「Reライフ」は、「大事なデータ、どう残す デジタル遺品、注意点と対策」でした。
・・・家族写真、友人の連絡先、インターネットバンキングの口座……。スマートフォンやパソコンには様々なデータが保管されています。もし突然、あなたが亡くなったら、そのなかで大事なものを家族に残せますか?

「経営者だった父が急死した。税理士とのやりとりで、家族が知らない会社が登記されていたと分かり、父に隠し資産があるのではと疑念を抱いた。遺品のパソコンのパスワードが分からないので解除してほしい」
データの復元やパスワード解除のサービスを展開する「デジタルデータソリューション」(東京都港区)に寄せられた相談の一例だ。このケースでは依頼者が遺族だと確認したうえで対応し、パスワードの解除やデータ復旧に成功。パソコンからは、会社登記に関する書類やネット証券、ネット銀行の口座データが見つかったという・・・

・・・石塚さんが想定する主なトラブルは三つ。一つ目は、故人が利用していたネットバンキングやネット証券の口座情報、暗号資産などの金融資産が遺族に知られないままとなり、放置されてしまうケースだ。「金融機関からの通知も紙ではなくメールなどで来るため、遺族が見落としやすい」という。
二つ目は故人が有料サイトや課金制アプリを使用している場合だ。遺族が契約に気づかなければ料金が発生し続け、口座から引き落とされることになる。年会費などだと気づくのが遅くなるケースもあるというが、金融機関がどこか分かれば、口座を凍結して引き落としを止められる。
三つ目は、写真や知人の連絡先、SNSなど、故人のデータにまつわるものだ。データを消去せずに機器を処分すると悪質な業者に個人情報が流出する可能性がある。また、SNSのアカウントを放置すると、第三者に乗っ取られて悪用されるおそれがある・・・

私も、この2番目と3番目が問題になります。特に、このホームページですね。サイトを管理してもらっている社長と、息子にでも頼んでおくのでしょうか。

ところで「Reライフ」って、どういう意味でしょうね。新聞社がこのような一般人が理解できない言葉を使うのは困ったものです。

世界に遅れる日本の大学教育

9月14日の日経新聞教育欄、田中愛治・早稲田大学総長の「コロナ禍の大学教育改革 データ科学で未知の問題解決を」から。

・・・問題は高校までの教育にもある。多くの高校はより知名度と偏差値が高い大学への入学を目的にしたため、常に正解が一つだけの問題を早く解く教育に力を注いできた。
それでも、1990年代初頭までは日本の高校3年生の学力は数学でも理科でも社会でも世界一だった。その結果、日本の多くの大学、特に文系学部では、大学4年間で真剣に学問を学ぶよりも、サークル活動や体育会の部活動でチームワークを学び、人間関係の調整能力を育んでおけば、社会に出てもコミュニケーション能力とガッツで成功できると考えられてきた。事実、90年代初頭までは、日本の産業競争力は世界一であった。

一方、多くの企業の人事採用担当者も数年前までは「職場内訓練(OJT)で鍛えるから、大学で余計な学問を教えず地頭の良い学生を送ってほしい」と考えていたのではないか。だが、世界中でDXが加速する中、この考え方で大学生活を送っていたら日本の大卒者は国際競争力を失う。
経団連加盟企業との意見交換でこんな話を聞いた。入社後のOJTで議論の根拠となるデータを示しながら新しい提案をする「エビデンス・ベースト」な思考法を教えても、通常の業務をこなしながら学ぶので時間がかかり、習得するのは30歳代後半になってしまう。欧米ではその年齢で企業のトップとして活躍する人材が多数いる。
このことは、大学時代にデータ科学の考え方を学び、エビデンス・ベーストな議論の仕方を理解していないと、日本の大学の文系学部卒業生は世界に15年以上遅れてしまうことを示唆している。
では、理工系の学部を増やせばよいのかというと、それはあまりにも短絡的な議論である。
データサイエンス学部を卒業してデータ科学を学んだからといって、人間の行動(消費者行動、社会的行動)に有効な施策を打ち出せるとは限らないからだ。社会科学系もしくは人文学系の学部で人間の社会での営みをしっかり学び理解しておかないと、データ科学は活用できない。文系学部でデータ科学の賢い利用者(wise user)になる学生を育てないと、日本の国際競争力はますます衰退していく。

コロナ禍が日本社会に突きつけたもう一つの根本的な問題は、日本の教育のあり方が人類が直面する問題にうまく対応できないことである。コロナ禍は人類の誰もが答えを知らない未知の問題の典型だが、日本の教育で育った者は、未知の問題に挑戦するのが苦手なことが明らかになった・・・

詳しくは、原文をお読みください。

サービス付き高齢者向け住宅

「サ高住」(さこうじゅう)って、ご存じですか。関係者の方は知っているでしょうが、知らない人も多いのではないでしょうか。「聞いたことはあるけど、どんなものかは知らない」という人もおられるでしょう。

サービス付き高齢者向け住宅」の略です。高齢者向けの賃貸住宅で、医療や介護の職員が常駐し、安否確認サービスと生活相談サービスを行います。生活支援や介護やサービスがついているものもあります。2011年にできた制度(それ以前も似た制度はありました)なので、まだ知らない人も多いでしょう。

高齢者には安心できる住まいなのですが、体験した人は少なく、見た人も少ないです。人は、見たり体験することで理解し、安心します。このような新しい仕組みを、高齢者や家族の人に、どのようにして知ってもらうのか。

9月6日の朝日新聞に「高齢者と住まい」「サ高住で幸せな最期送った母 食事制限なし、友人とも面会自由」という記事が載っていました。どこで、どのように最後を迎えるかも、大きな問題です。

産学協同、日米の違い。

日経新聞「私の履歴書」、永山治・中外製薬名誉会長の8月21日の「研究開発」から。

・・・このときの精神を持ち続け、時間があれば研究開発部門のトップやリーダー格の研究者と英オックスフォード大学やケンブリッジ大学などにも行った。論文や名簿で「この人は面白そうだ」という人を探し出し、英国の知り合いを通して会いに行った。米国の大学もいくつも訪ねた。

1980年代だったと思うが、米テキサス大学に行くと、びっくりしたことに学長、医学部長、教授ら十数人が会議室で待ち構えていて「何でも聞いてください」と言う。大学にとって製薬会社は臨床試験をやってもらう「お客さん」でもある。
医学、生命科学の研究内容は一冊の本にまとめられ、誰がどんな研究をしているかすべて書いてあった。各項目にはチェック欄があり、チェック済みのものは既に他社と組んでいるという。それ以外ならどれでも共同研究をしましょうと持ちかけてきた。

このスタイルは最近でも同じだ。10年ほど前に米MDアンダーソンがんセンターを山崎達美さん(元副社長)と訪ねたときも、大きな部屋に幹部が勢ぞろいしており何でも議論しましょうと言われた。
日本はどうか。当時は有名大学でも、隣の研究室が何をしているかほとんど知らなかったのではないか。医学部の研究者に面会を申し込むと興味のあるテーマなら会ってくれるが、せいぜい一対一だ。米国の方が、産学共同研究が非常にシステマチックだ・・・

大学志望理由、合格できそうだったから

8月26日の読売新聞夕刊に「大学の志望理由…男子「合格できそうだったから」、女子は「将来の仕事と関連しているから」」が載っていました。

・・・大学の選択理由を複数回答で尋ねたところ、男子は「合格できそうだったから」(39・1%)、女子は「将来就きたい仕事と関連しているから」(49・0%)の割合が最も高かった。
大学・短大などの学校選択理由と進路選択の満足度を調べたところ、「合格できそう」を理由とした人は選択した進路に「不満」と回答した割合が21・5%に上った。「友人が選択していたから」も、不満の割合が18・3%だった。
これに対し、「授業内容に興味があったから」を理由とした人は、満足と答えた割合が93・9%に上った。「他校よりも入試の難易度が高いから」(93・1%)、「学校の雰囲気が良かったから」(94・3%)とした人も満足度が高かった・・・

合格できそうな大学に行くという男子生徒に、日本の大学の存在理由が、よく見えています。大学進学率は5割を超えています。何のために大学に行くのか。そして、学生たちは何を求めているのか。それが先にあって、その次に合格できる大学に行くのでしょう。
目的も曖昧なままに大学に進学する。これでは、満足は得られないでしょう。
大学に問題があるのではなく、このような「人生の時間の無駄」を許容している日本社会に、問題があるのでしょう。