転職者数の増加

10月21日の朝日新聞「日本経済の現在値2」「キャリアアップは一部だけ 13人に1人、25~34歳の転職」から。

・・・最近、テレビやインターネットで転職業界のCMや広告をよく見るようになった。まわりでも若い人の転職が増えた気がするが、実際はどうなのだろう。海外では賃金などの条件がいい会社へと転職を繰り返し、キャリアアップをしていくのが当たり前だとも聞くけれど、日本もそんな社会になってきたのだろうか。

まず、総務省の労働力調査を見てみると、たしかにコロナ禍前の2019年の転職者数は過去最多の351万人だった。働く人全体に占める割合を示す転職率も、ちょうど記者(29)と同年代の25~34歳は7・8%と過去最高水準で、13人に1人が転職していた。
ただ、過去にさかのぼってみると、むしろ、どの年代も転職率は00年代半ばごろがピーク。とくに若年層の15~24歳では、05~06年に14%超と、足元を超える転職率だ。いったい、何が起きていたのか。
当時の労働経済白書などをもとに理由を探ると、企業の倒産が相次いだ00年前後の就職氷河期に、希望する待遇や職種の企業に入れなかった人たちが、景気の回復にあわせて転職するケースが多かったようだ。
じつは統計上、転職者数には、景気によって雇い止めなどにあいやすい非正規の働き手も含まれている。19年の転職者も半数以上の192万人が非正規で、同様な傾向は少なくとも00年代初めから続いていた。
00年代半ばに増えてきた転職は、08年のリーマン・ショック後の不況で再び減り、ここ数年でリーマン前の水準に戻ってきた。ただ、その理由を探っていくと、以前とは違う要因も見えてきた。

エン・ジャパン社で人材紹介サービスを統括する藤村諭史さんは、人手不足と若者の意識の変化を挙げる。「人手不足で12年から売り手市場が広がり、18年までは特に若手採用が活況だった。最近の若い世代は自分のキャリアを自分でつくっていく、という風潮がある」と指摘。企業側も即戦力の人材を求める傾向が強まっていて、「35歳以上の世代の転職も今後増えていくのではないか」という。
海外では、自分で将来のキャリアを考え、転職を繰り返すのが当たり前とよく聞くけれど、どれぐらい違うのだろうか。
同じ企業に10年以上働く人の割合を、労働政策研究・研修機構の資料で比べてみた。日本は45・8%で、20%台の米国や韓国との差は大きい。一方、解雇規制が比較的厳しいとされるフランス(45・6%)やドイツ(40・3%)は、日本とそれほど変わらなかった・・・
この項続く