連載「公共を創る」第97回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第97回「保険に見る企業と政府の協働」が、発行されました。

前回までの「第4章 政府の役割再考 1.社会の課題の変化」(連載第71回〜96回)では、日本が成熟社会に入り社会の課題が変わったこと、それに従って行政の任務も大きく変わるべきであることを説明しました。今回からは「2.社会と政府」に入り、これらの変化を念頭に、これからの政府の役割を検討するために、社会と政府の関係を見直してみます。

本稿では、社会は公私が対立しているのではなく、官(政府・行政)、共(非営利活動、非営利団体)、業(企業・市場経済)の三つの主体・場・仕組みに支えられていると考えるのです。そして、社会が私たちの暮らしを支えている場合には、モノやサービスの提供だけでなく、働く場、他者とのつながり、生きがいや居場所という機能も果たしています。それらは、法律や制度だけでなく、国民の意識と生活がつくっています。
かつて安全で安心といわれた日本、また驚異的な経済成長を支えたのは、これら国民の民度や気風がつくるこの国のかたちでした。
しかし、今や日本社会の安心にほころびが生じ、経済も低迷しています。安心して暮らせる社会をつくるためには、行政の役割を現状に即して変更していくことも必要ですが、民間の役割や国民の意識の変革も重要です。

ここでは、社会を支える民間活動と国民意識を再検討します。まず、改めて企業という存在に注目してみます。保険を例に、企業が私益を追求するだけでなく、社会を支えていることを見ます。