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社会

仏教を生かした授業

朝日新聞の教育欄で、仏教系学校での医学を目指す生徒への教育について、連載が載っています。11月21日の「医の心、育む:1 医の道、心もケアしたい」から。
・・・10月下旬、午前8時半をまわると、紫色の巾着袋を手にした高校2年生たちが、黄金色の阿弥陀如来像を置く講堂に集まってきた。福岡市中央区にある筑紫女学園中学・高校の朝の勤行=おつとめだ。
「姿勢を正してください」
仏教委員長の赤司瑞祈(あかしみずき)さん(17)の凜とした声を合図に、講堂が静まりかえった。
「黙想」
香炉から広がる柔らかい香りに包まれ、およそ420人の生徒たちの表情が穏やかになっていく。
澄んだ鐘の音とともに、宗教担当の平孔龍(たいらこうりゅう)先生(44)のお経が講堂に響きわたる・・・

・・・学校は浄土真宗の教えに基づく人間教育を建学の精神とする。生徒たちは礼拝や仏教の授業を通して、他者をいたわる慈悲の心や、命の大切さを学ぶ。
その仏教の視座を身につけ、医療の道をめざす生徒が学ぶ「医進コース」が誕生したのは2020年春のことだった。松尾圭子校長(64)は、訪問した大学の医学部の先生の言葉が忘れられない。
「医者は日々、精神が不安になる患者と接する仕事。そういう気持ちをくみ取って話ができる医者じゃないと困る」
さらに、力説された。
「受験の成績がよくて合格しても、患者に向き合えるだろうかと心配になる学生もいる」、と。
学校には、医学や看護学といった学部がある大学に進学したい生徒が多く在籍する。
松尾校長は「医学部をはじめ医療系の難関学部への合格可能な学力のある生徒に、進路先を偏差値基準で薦める指導はするべきではない。医の道に進んで何をしたいのか、受験に臨む前から明確にしておくことが大事なのではないか」と思いを深めた。
人の痛みがわかる仏教の教えは、医の道に進む生徒たちの学びの素地にもつながるのではないかと考え、志を同じくする生徒が集まるコースを立ち上げた・・・

学校教育で避けてきたのが、心の問題、宗教などです。学生たちの今の不安、将来への不安にどのように対応するのか。これも、教育現場での大きな課題です。

ネットいじめを防ぐ

ネットでのいじめが、大きな問題になっています。11月16日の日経新聞夕刊に、ネットリテラシー専門家の小木曽健さんによる「ネットいじめ、我が子を守るには」が載っていました。
・・・SNS(交流サイト)などでいじめ被害に巻き込まれる子どもが後を絶たない。我が子を被害者にも加害者にもしないため、保護者が普段から心がけるべきことは何か。「ネットで失敗しない方法」をテーマに講演活動を続ける小木曽健氏に寄稿してもらった。
「親に話すつもりはありません、小木曽さんも親には言わないでくださいね」――。先日、私のSNSアカウントに寄せられた、悪質ないじめ被害に遭っている中学生の言葉だ。親に言うどころか、私はあなたがどこの誰かも分からないのに……。それでもその子は「言わないで」と何度も念押しをした。
ネットリテラシー講師という仕事柄、子どもからネットで悩み相談を受けることが多い。大半は匿名で、親にもいじめを打ち明けられていない。「心配をかけたくないから」ではない。理由はもっと切実だ。
考えてみてほしい。いじめ被害者にとって「家の外」は、加害者に囲まれ神経を擦り減らす、心が休まる暇もない戦場だ。その戦場を抜け、やっとの思いでたどり着いた我が家。そこは唯一のリラックスできるオアシスだろう。
もしいじめの事実を親に知られたら……。その瞬間、オアシスが汚染されてしまう。「いじめ以前」の時間に戻れる貴重な場所を失う。だから親には言わないという子が少なからずいるのだ。心身を削るほどの深刻な状況でも親に相談しなかった子に「なぜもっと早く言わなかったの」と問うのは時に残酷だ・・・

・・・だが実際に親がネットいじめに気付けるかといえば、正直かなり難しい。むしろ気付けないかも、という前提での備えが必要だ。例えば、ネットいじめのニュースを見る度に「私はネットいじめとの戦い方を知っている」と口癖のように言い続ける。これはかなり効果がある。
実はネットいじめとの戦い方は決して難しくない。SNSでの匿名の誹謗中傷には、「URL」を含む画面のスクリーンショットが客観的な証拠になる。その画像を添えて「法的措置を検討している」と投稿するだけで、すぐに削除されるだろう。「なりすまし」(自分の偽物)アカウントが作られた場合も同様だ。警告すればたいていは消えていく。
これらの知識を事あるごとに子どもの前で口にすることで、いざという時に相談しやすい空気をつくっておきたい。大人が本気で戦おうとする姿勢を見せることは、被害者にも加害者にも響く・・・

11月23日の日経新聞教育欄には、原清治・仏教大教授による「ネットいじめ対策急げ 高校生8%経験、ゲームが主舞台」も載っていました。

休日夜間の電話受付、訪問診療

日経新聞夕刊「人間発見」11月15日の週は、ファストドクター代表 菊池亮さんの「夜間・休日の患者に安心を」でした。
・・・医師の菊池亮さんが2016年に創業したファストドクターは地域医療機関と連携し、夜間・休日といった時間外診療の総合窓口サービスを手掛ける異形のスタートアップ企業だ。新型コロナウイルス感染症が拡大してからは自宅療養の患者を24時間体制で往診し、地域医療を守る最後の砦として奮闘した・・・

16日の「軽傷者搬送に疑問 往診で問題解決図る」から。
・・・帝京大病院は外傷センター、高度救命救急センター、総合診療ERセンターが連携して救急医療を行っていました。夜間当直のある日は36時間労働です。非常に忙しかったですが、運ばれてくるのは軽症の患者も多かった。お年寄りが深夜に出たゴキブリに驚いてひざかどこかを打ってしまったとか。

全国で救急搬送される患者の5割は軽症者。この数の多さが気になった。
救急車で搬送される人の約6割は高齢者です。このうち95%は在宅医療を受けておらず、ふだんは外来で医療機関を受診している人が、休日や夜間だと本来必要がないのに救急車を活用している。
高齢者は人数が増えるだけではなく、世帯構成も変わってきています。昔は2世帯3世帯の同居が多かったですが今は独居や高齢者2人の「老々世帯」が当たり前です。頼れる人が身近にいなくて、夜間や休日は日ごろ受診しているかかりつけ医も機能していない。だから救急車を呼ぶしかない。こうした人たちへのケアが必要なんじゃないかと思うようになりました。
軽症者の救急車利用を減らすため、自治体は「#7119」という番号で医療の緊急度を判定する電話相談を実施しています。でもそこで多くの人に外来受診を薦めているのに、救急車の搬送件数は増える一方です。
不要不急の救急搬送をぐっと減らすには、夜間や休日に医師が患者のところに行く往診で問題を解決してしまえばいい。そう思い、14年ごろから診療所の設立方法や在宅医療について考え始めました。そして東京・世田谷を拠点に、医師の名倉義人さん(現・新宿ホームクリニック院長)と2人で在宅診療所を始めました・・・

世界で戦う選手を育てる

11月14日の日経新聞、ザ・スタイルに、松岡修造さんの「テニス選手育成 挑戦の旅」が載っていました。
松岡さん(1967年生まれ)が選手だった頃、日本男子は世界の100位に入るのが夢でした。彼がその壁を破り、1996年にウィンブルドンセンターコートで戦い、「こんなすばらしい場所で戦える日本男子を作り上げたい」と叫びます。
しかし、世界で戦うということは、テニスがうまくなればいいだけではありません。日本人が苦手な表現力、自立心、決断力を養わなければなりません。年間10か月を毎週違う国で過ごすために必要な心技体を養う必要があります。その方法を低年齢から教えることができれば、世界の舞台に導けると考え、10歳から18歳までの選手の強化プログラムを実施します。メンタル、技術、フィットネス、医療ケアの専門スタッフがつきます。

平成の30年が、日本にとって失われた30年と評価されています。産業経済面では、そうでしょう。しかし、テニスに限らず、サッカーや野球など、世界で活躍する日本選手が増えました。そこには、プロリーグにして鍛えること、世界に挑戦することなど、挑戦する人を育てる仕組みと支援する仕組みを作ったからです。一人の天才が出てくるだけでは、後が続きません。
他方で、産業や学問などでの停滞は、日本の中で満足し、世界で戦わなかったことによると、私は考えています。

異分野の合作で新しい知見が生まれる

11月2日の日経新聞「変わる地方国立大学」、斎藤滋・富山大学長の「革新創出へ文理融合」に次のような指摘があります。

・・・今日、トップ論文が載る研究雑誌では単一大学の単一講座(教室)からの報告は皆無となっている。複数の大学、講座、専門分野の異なる研究者の合作で新しい知見が生まれてきているのだ。
日本の大学では単一講座(教員)の指導で研究が行われてきたが、学問の進歩は複合的な解析を不可欠とし、異分野の学問領域の融合が世界的に行われている。日本の国際的な遅れは、この融合するという意識の低さが原因の一つである・・・