「社会の見方」カテゴリーアーカイブ

この国のかたち、外国人との共生

憲法とは、その国のかたち・基本を定めるものですが、憲法に書かれていない「この国のかたち」もたくさんあります。
私は、明治憲法と昭和憲法には、第1条の前に第0条があったと考えています。その第1項は「国民は勤勉に働き、豊かになることを目指す」で、第2項は「その際には、欧米を手本にする」です。昭和後期に豊かさを達成したことで、第2項は不要となり、第1項は代わる条文を模索中です。
このほかにも、日本語を国語とすること。男女同権と言いつつ多くの分野で男尊女卑であること。結婚すると妻は夫の姓を名乗ることなどの慣習もありました。これらは、急速に変化しつつあります。

近年問われている「この国のかたち」の一つが、定住外国人との共生です。
移民政策(労働力として外国人を受け入れる)を取らないと政府は主張していますが、実際はなし崩し的に受け入れています。問題は、彼らをどのように社会に受け入れるかです。
一方で包摂を目指す人たちがいて、他方で排斥する人がいます。このような国民の間にある対立を調整する経験を、近年の日本政治・国会はしたことがありません。1952年の独立の際の、全面講和と単独講和との対立以来かもしれません。しかしそれも「外圧」でした。

意外な問題から、この国のかたちが問われ、政治の役割が問われることになりました。日本国、日本社会をどのようにつくっていくか。結果とともにその過程も、この国のかたちです。

フィッシングメール日本に集中

9月12日の読売新聞に「フィッシング 狙われる日本 新種不審メール8割集中」が載っていました。日本人はだまされやすい「カモ」なのでしょうか。
私の携帯電話やパソコンにも、毎日たくさん来ます。利用していない銀行やクレジットカード、車を持っていないのにETCとか。有名な女優からも(笑い)。電子メールが無料で送ることができるので、犯人たちは費用を考えることなく、やたらめったら送っているのでしょうね。

・・・日本の企業・個人の情報を盗み取ろうとする「フィッシングメール」が急増している。全世界で今年確認されている新種の不審メールの8割超が日本を標的としたものであることが、セキュリティー企業の調査でわかった。これまで「言語の壁」で守られていたが、生成AI(人工知能)により自然な日本語メールが作成可能となり、格好の標的となっている。

「日本がこれほど狙われたことはない」。米メールセキュリティー大手「プルーフポイント」の増田幸美チーフエバンジェリストは、危機感をあらわにする。
同社のメールセキュリティーサービスは、全世界の電子メールの4分の1で使われている。増田さんらが同社のサービスを使う全世界のメールを調べたところ、同社にとっても未知のタイプの不審メールが1~8月に約53億通確認された。大半がフィッシングで、日本を標的にしたものは83・9%に上った。2023年(約12億通)の4・3%、24年(約14億通)の21・0%から大幅に増加し、全体数を押し上げている。
メールの内容は、偽サイトに誘導して、「マイクロソフト365」などのクラウドサービスの認証情報やクレジットカードの個人情報、インターネット上の証券口座の認証情報を入力させて盗み取ろうとするものが多いという。

急増の背景にあるのが生成AIの普及だ。
増田氏は「従来のフィッシングメールは不自然な日本語で書かれ、日本人なら簡単に気づけたが、生成AIで自然な日本語のメールが作れるようになり、見分けがつかなくなっている」と話す。日本人向けのメールやサイトを簡単に作れる「フィッシングキット」も使われているという・・・

IT人材、日本が安い

9月24日の日経新聞夕刊「富士通の海外体制「量から質」に 労働力高騰、AI活用の新戦略」から。

・・・富士通が海外でのシステム開発体制を見直している。IT(情報技術)技術者の人員拡大という規模を追う路線から、生成AI(人工知能)活用による生産性向上に軸足を移す。地政学リスクや海外人材コスト上昇など変化の激しい国際情勢をにらみ、量から質に重きを置く人材戦略に切り替えて旺盛なシステム需要に応えられるようにする。

富士通は2024年度、世界のシステム開発事業の運営で重視する「重要業績評価指標(KPI)」から人員数目標をなくした。富士通はインドやフィリピン、マレーシア、中国など世界7カ国でIT開発拠点を持ち、日本の拠点を含めた世界のシステム開発・運用保守の人材を25年度に22年度末比3割増の4万人とする数値を掲げていた。
背景の一つにあるのが、海外技術者の給与高騰だ。日本のIT業界は従来、コストの安い中国や東南アジアといった海外を示す「オフショア」に拠点を置き、開発や運用を委託してきた。
しかし、多くの国・地域でIT人材の給与が高まり、コスト面でのオフショア開発の利点を得にくくなっている。富士通でグローバルのシステム構築事業を担当する馬場俊介執行役員専務は、一般論と前置きした上で「5年後、10年後を見据えると、単純にコストの安い国・地域にどんどん案件を流せということではなくなってきている」と話す。

例えばインドだ。馬場氏は事業部長クラスなど熟練者に限ると「すでに日本の同等の人材よりも給与が高い」という。富士通では現在日本と海外7カ国含めたシステム構築人材が約3万人おり、うちインドが約8000人を占める。
人材サービスのヒューマンリソシア(東京・新宿)がまとめた調査(24年10月時点、ドルベース)によると、IT技術者の給与増減率の首位は、前年比10.2%増となったポーランド。インドも3.7%増と6位に入った。一方、日本は16.7%減と69カ国中59位となった。日本は円ベースでも給与が下がっており、低下傾向が世界でも際立つ・・・

経済原則では、安い労働力のところに企業が立地します。1990年代以降、日本の企業は安い労働力を求めてアジアに拠点を移しました。それが産業の空洞化を生みました。日本の労働力が安くなれば、外国人観光客だけでなく、工場なども日本に戻ってきませんかね。

東大大学院工学系、講義を英語化

9月22日の日経新聞に「東京大の大学院工学系研究科の講義英語化 「内なる国際化」に弾み」が載っていました。
・・・東京大学の大学院工学系研究科は今年度から講義を原則、英語で行うことにした。英語化により世界のライバルに伍する国際的な教育空間に近づく半面、教員は「教え方を学ぶ」ことも必要になる。他の有力大でも、同様の動きが徐々に広がる。

「英語化は当然やるべきだと思っていた。学生は英語が飛び交う環境に抵抗感がなくなる。海外に出ていくチャンスも広がる」。工学系研究科の加藤泰浩研究科長(工学部長)は、講義の英語化に踏み切った理由を熱っぽく語る。
加藤氏は1990年代、米ハーバード大で初めての在外研究を経験した。当時37歳。学部の卒論から博士論文まで全て英語で書いていたが、現地での会話に苦労した。「同じ思いを学生にさせたくない」と話す。
23年4月、研究科長に就任すると英語化の検討を始めた。ただ、講義の英語化は10年以上前から懸案として引き継がれていたという。

修士課程、博士課程で計約3900人いる学生の3分の1が留学生。講義の英語化は、アジア出身者が多い留学生の国籍の偏り是正にもつながると見る。政府が10兆円を投じた大学ファンドで支援する「国際卓越研究大学」への認定を東大が申請していることも考慮し、大学院は英語化に踏み切ることにした。
講義の英語化率は現状で7割強。目標は、これを9割に引き上げる。日本建築を扱う建築学などの分野や外部講師に配慮し、日本語で教える余地を残した。
この件を担当する津本浩平副研究科長によると、英語化は知識の更新が速くなっていることとも関係がある。
「最先端の研究成果は英語で発信され流通している。その流れがどんどん速くなり新しい言葉が出てきている」と津本氏。翻訳する時間はなく、日本人同士の会話も自然とほぼ英語になる。「英語を道具として使う必要性が一段と高まってきている。波に乗り遅れる理由の何割かは言語ではないかと思うこともある」

もう一つ、津本氏が挙げたのが隣国のトップ大学の状況だ。授業を交換している韓国ソウル大の教員や学生の英語力が近年、向上著しい。「ソウル大は相当議論して英語化を進めている。中国の清華大もそう。私たちも努力を加速していい」と話す・・・

私は先日、時事通信社の会員制評論誌「コメントライナー」に「英語が国語になる日」を書きました。明治初期の帝国大学では講義は英語でした。
その時と状況は異なりますが、世界で活躍するためには英語は必須なようです。

福井ひとし氏の公文書徘徊6

『アジア時報』10月号に、福井ひとし氏の連載「一片の冰心、玉壺にありや?―公文書界隈を徘徊する」第6回「王臣蹇蹇たり―「公文録」の時代」が載りました。ウェッブで読むことができます。

今回は物騒なことに、10人もの人を死なせてしまうのです。誰を、どのようにして? それは本文をお読みください。みなさんがご存じの有名人ばかりです。
ところで、公文書なので、決裁の過程ではんこが押されています。
19ページのはんこは、いかにも安物で、「ほんまにこんな政府幹部がこれを使ったの」と思います。「三文判」ですよね。本文にあるように、原本は焼失し、再生する際に三文判を使ったのでしょうか。
27ページのはんこは、個性が出ているようです。山縣は「有朋」としているし。大山も「巌」です。ひっくり返して押している人もいます。渋々押したのでしょうね。