カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

社会問題、大きな物語と個別の物語

1月15日の朝日新聞オピニオン欄、山本太郎・長崎大熱帯医学研究所教授の「感染症と生きるには 新型コロナ」から。

4千人以上が国内でも亡くなっている現状をどうみますか。
「二つの物語が進んでいます。一つはウイルスとの共生、社会経済との両立、集団免疫の獲得という大きな物語。もう一つは個別の物語。たとえば『祖母が感染して亡くなった』というものです。社会全体からみれば10万人に1人の死でも、家族にとれば大切な一人。医師としては、個別の物語に寄り添いたいとの思いをもちつつ、大きな物語を意識せざるをえない。中長期的に、あるいは公衆衛生学上、ウイルスとの共生が望ましいとしても、そのために命が失われてかまわないということではありません。個別の物語に寄り添い、葛藤を乗り越え進んでいかなくてはならないと思うのです」

そうなんです。私も被災者支援をしたときに、個別の方の事情を聞いて支えたいと思いつつ、私の仕事は個別の被災者相手ではなく47万人が相手だと、自分に言い聞かせました。

西井・味の素社長。方向性を示す

西井・味の素社長。労働時間が増えて売り上げが伸びない」の続きです。

――社長就任後、最もリーダーシップを発揮したのは。
「16年に導入した、完全ジョブ型の人事制度です。人事部長時代にも人事制度改革に挑戦したのですが、経営会議のメンバーに多数決で負けて中途半端な方式になってしまいました。でも、徹底的にダイバーシティーをやるならジョブ型しかない、と信念を持っていました。なので、社長就任から一年もたたずに完全ジョブ型に変更したのです」
「ジョブ型には良い面と悪い面があります。会社組織には、頑張ってようやくそのポストに就いた人や、レールを上がってきた人もいます。でも、ジョブを優先すると人材が若返り、実力主義になります。年功序列じゃないと困るのは上司なんです」
「自分がそうされてきたし、後ろについてきている人もいて、もはや部門の利益の代表になってしまっているからです。企業の古い価値観を変えるには、ジョブ型が絶対に必要だと思います」

――ブラジルでは多様性に戸惑いませんでしたか。
「全くありませんでした。ブラジル味の素は16年に創業60周年でしたが、60年間ずっと日本人が社長を務めていました。でも、全従業員の前でブラジル味の素の経営方針と『3年後にこう向かうぞ』というビジョンを話したのは、私だけだったと聞いています。長い時間をかけてプランを作って、1時間半話しました。会社の向かっていく方向性を示して、権限を委譲して、自分で模範を示す。やはり自分で汗をかかないといけません」

西井・味の素社長。労働時間が増えて売り上げが伸びない

1月14日の日経新聞夕刊、私のリーダー論。西井孝明・味の素社長「大企業病 若返りで打破」から。
・・・味の素の西井孝明社長は働き方改革を推し進める。管理職へジョブ型雇用制度を導入したほか、労働時間の短縮にも取り組んできた。西井社長は「味の素には典型的な大企業病の兆しがあった」と分析、「生産性を改善するにはD&I(ダイバーシティー&インクルージョン)が重要だ」と自己変革がカギと指摘する。味の素の生き残りと成長のため、組織の若返りが不可欠だと説く・・・

「ブラジル子会社の社長から戻って、味の素の社長に就いたのですが、とても危機感を持ちました。日本の味の素に、典型的な大企業病の兆しが見えていたからです。具体的には2つです。1つは味の素単体の生産性が低い点です。売り上げは伸びないのに、費用などはどんどん膨らんでいました」
「最大の要因は長時間労働です。2013年まで味の素で人事部長として、労使でワークライフプロジェクトを進めていました。当時の総実労働時間は長かったのですが、それでも、職場によって長いところと短いところでバラつきがありました」

「ところが15年にブラジルから戻って調べてもらったら、全職場おしなべて長いのです。平均で年間2100時間働いていました。はっきり言って、仕事の質が劣化していると感じました」
「もう1つは成長性が鈍っていました。本社の人材が均質化してしまって、しかも同じ方向を向いている。だから、生産性が低かったんです。一例を挙げると、過去15年以上、新卒採用の3~4割を女性が占めているのに女性の管理職は6%にとどまっていました」

「日本企業がなかなかD&Iがうまくいかないのは、企業が男性中心の組織だからです。日本が成長しない中で、女性にポストを充てようとすると、そのポストをあけないといけません。そこには主にシニアの男性社員が就いているわけです。だから、シニア期のキャリアにしっかり向き合う必要があります」
――反発はなかったのですか。
「ダイバーシティーに理解を示さない人を説得するために、先ほどのデータを用意したんです。多様な組織の方がリーダーは大変です。なぜこの仕事をしないといけないのか、目標と目的をしっかりと語る必要があります。これはものすごい労力がかかります」
「もちろん、頭でわかっていても嫌だという人はいます。そういう方には退場してください、と言います。そう言えるのは上司だけですが、そこには対話が必要です。転身支援も上級役員が対象者に丁寧に面談を繰り返して納得してもらったと思っています」
この項続く

対面と遠隔、出勤と在宅勤務

新型コロナウィルスの感染拡大で、在宅勤務や遠隔会議が進められています。いろいろと長所があって良いことだと思います。しかし、難しい場面もありますね。新聞などでも取り上げられ、このホームページでも何度か書いたのですが。何が違うか、再度考えてみました。

まず、仕事の性質によります。1人でできる仕事と、そうでない仕事があります。
翻訳や校閲のような仕事なら、どこでも一人でできます。しかし、ある課の新しい企画立案は、一人で悩んでいても、よい知恵は出てこないでしょう。そして、みんなで問題点を指摘してよい案にすることは、できません。職場には、指示を受けて一人でできる仕事と、みんなで作り上げる仕事とがあります。

自宅では仕事が進まない理由に、「職場でない」ということもあります。
狭い家では、仕事の部屋がありません。子どもが邪魔をします。新聞記事では、お風呂場、自動車中でやっている人、喫茶店に行っている人もいます。
そして、自宅では気分が転換しません。
私は書斎を持っていて、子どもの邪魔もないのですが、仕事の気分になかなかなりません。ネクタイを締めて出勤することで、頭と体が「仕事するぞ」という態勢になるのでしょう。「家ではゆっくりするもの」と、体が覚え込んでいるようです。

対面と遠隔の、相手とのやりとり効果の違いも大きいです。
会って話をするのと、電話やオンライン会議とでは、何が違うか。文章(事実や意思)の伝達なら、それほど違いはないと思います。少々時間がかかりますが。しかし、対面で話をしているのは、文章を伝達しているだけではありません。それとともに、相手の反応を見ています。人間関係をつくっているのだと思います。
「目は口ほどにものを言い」の世界です。これが、初めて会う人と親しい人との意思疎通の違いです。私の仕事でも、職員以外に、政治家や民間の方と会うことが仕事の大きな部分を占めていました。何度か会って、その人との信頼関係をつくる、「この人ならここまでしゃべっても大丈夫」という関係をつくることが必須でした。これは、対面でないと、私には難しかったです。

これは、新人や若い人の教育にも現れてきます。在宅勤務で、職員指導ができるでしょうか。多くの職場で、それは難しいと思います。

子どもの嘘にどう対処するか

1月12日の日経新聞夕刊に「子供の嘘 親はどう対処 保身目的はSOSの可能性」が載っていました。
・・・嘘をつくのは悪いことと考えている人は多いだろう。しかし、子供の嘘は「つかざるをえない何らかの事情がある」と心理学では考えるという。子供が嘘をついたとき、どんな対処が望ましいか・・・

そこに、見逃してはいけない3つの嘘が載っています。
1 保身のための嘘。試験の成績が悪かったときに、「まだ答案が戻ってきていない」と話す。
2 自分を大きく見せるための嘘。チーム全員が褒められたのに、「自分だけが褒められた」と話す。
3 わがままを通すための嘘。約束した宿題が終わっていないのに、「終わった」と言ってゲームをする。

「嘘を言ってはいけない」と教育されますが、嘘を言った場合の教育は教えてもらっていません。叱るだけでは、改善されない場合もあります。
これは子供の例ですが、職場にも当てはまる場合があります。原文をお読みください。