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生き様-明るい課長講座

面談が社員の安心感を高める

4月18日の日経新聞「働き方innovation 生産性上がっていますか」は「積水ハウス、キャリア面談は安心感が要 挑戦意欲高める」でした。
・・・積水ハウスが気兼ねなく意見をぶつけ合える関係づくりに力を入れている。生産性が高い組織に共通するといわれる「心理的安全性」を確保し、社員自身がキャリア目標をどう達成していくかを上司がフラットな立場で聞く機会を設けた。部門を超えて事業アイデアを練り上げるアプリも用意。社員の挑戦意欲も高まりつつある・・・

・・・同社はキャリア面談を組織風土改革の根幹と位置づけ、2021年から始めた。目標達成度などを確認する面談とは別で年5回、職場によってはそれ以上実施することもある。「部下の話を『聞き切る』ことで、心理的安全性の醸成につながる」と藤間美樹・執行役員人財開発部長は説明。社員が自らキャリアを考え、決める「キャリア自律」を支援する狙いがあるという。キャリア自律は一人ひとりが何をなし遂げたいかを積極的に発信し、上司もそれを受け止める安心感があって成り立つとみる。
積水ハウスでは部下を持つ管理職4000人に対し、動画研修などを通じてキャリア面談のやり方を学んでもらった。「どうした?」「それで?」「どういうこと?」「で、どうするの?」の4つの言葉を投げかけるといった簡単なコツを伝えた。岩本さんの場合は3人の部下に対して週1回10分程度のキャリア面談を実施。気を付けているのは「自分の考えを押しつけない」「自発的に問題や課題を発見してもらう」「店長としての話はしない」の3つだ。
入社して10年になる沢田さんは「上司とこれほどしっかりプライベートな話をする機会はなかった。心にゆとりが生まれるし、ポジティブな感じになる」と話す。目指すのは、部下が育って生産性が上がる→上司の仕事の質も高まる→チームや組織が強くなるという好循環だ・・・

記事には、心理的安全性(働きやすい職場)について、次のような話も載っています。
・・・心理的安全性は米グーグルが社内で最もパフォーマンスの高いチームの特性の筆頭に挙げたこともあり、「それ以降、特に注目が集まっている」とリクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所の今城志保主幹研究員は説明する。
人材サービス大手のエン・ジャパンの調査(有効回答約8900人)では、職場のどこに心理的安全性を感じるかという質問に対する複数回答で「他愛のない雑談ができる」(75%)が首位。「心身の状態を配慮し合える」(28%)、「人格や発言をむげに否定されない」(27%)などの回答も目立った・・・

一対一の面談を行うことが広がっています。しかし面談にも、二つの違ったものがあります。評価のための面談は「評価」であり、お互いに緊張します。心配を少なくする「相談」とは別のものです。

一年生の不安

「ドキドキドン!一年生」という歌を知っていますか。

サクラさいたら いちねんせい
ひとりでいけるかな
となりにすわるこいいこかな
ともだちになれるかな
だれでもさいしょはいちねんせい いちねんせい
ドキドキするけどドンといけ
ドキドキドン!いちねんせい
ドキドキドン!いちねんせい

歌詞もメロディーも、愉快な歌です。ところで、この歌をよく見ると、小学一年生だけでなく、社会人一年生や新しい職場に移った人の不安を適確に表しているのです。
「ひとりでいけるかな」は、新しい仕事をこなすことができるだろうかという不安です。
「となりにすわるこいいこかな ともだちになれるかな」は、職場の人とうまくやっていけるだろうかという不安です。
職場の不安って、この二つなのですよね。難しく言うと「業務の執行」と「職場の人間関係」です。
でも、自信たっぷりな周りの先輩たちも「だれでもさいしょはいちねんせい いちねんせい」でした。
そうです、「ドキドキするけどドンといけ」

幸福学、前野隆司先生

日経新聞夕刊「人間発見」、4月11日から、幸福学研究者の前野隆司さん「幸せはどこにある」です。前野先生は、このホームページや連載「公共を創る」でも紹介しています。

・・・人はどうしたら幸せになれるのか。そのメカニズムを明らかにしたいと思い、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司さんは「幸福学」という学問を始めた。哲学や心理学といった文科系の思考だけではなく、データに基づく理科系の視点から幸福の本質をとらえる・・・

・・・幸福学の基礎となるのは、1500人の男女から集めたアンケートを基に統計的手法を用いて導き出した4つの因子だ。
1つ目は自己実現と成長です。「やってみよう」因子と名付けています。やりがいや強みを持ち、主体性の高い人は幸せということを表します。2つ目は「ありがとう」因子。つながりや感謝、利他性や思いやりを持つことが幸せにつながります。
3つ目は「なんとかなる」因子です。前向きで楽観的、何事もなんとかなると思えるポジティブな人は幸せです。4つ目は「ありのまま」因子。自分を他者と比べすぎず、自分らしさを持っている人は幸せになります。
この4つの因子を満たすように心がけていれば、幸せになると提唱しています・・・

・・・働き方改革や健康経営の重要性が叫ばれるなか、企業の幸福学への関心が年々、高まっている。
企業に呼ばれて話をしたり、企業が私の講演に社員を参加させたりと、関心の高まりを実感しています。企業の目的は利益を上げることですが、そのためには従業員を幸せにすることが大事だとの認識は着実に広がっています。
従業員を幸せにする経営の有効性については、様々なエビデンスが得られています。幸せな従業員は不幸せな従業員に比べて生産性や創造性が高い、欠勤率や離職率が低いなどです・・・

白黒をつける、折り合いをつける

世の中には、意見が対立する場合や、利害が反する場合があります。あちらを立てれば、こちらが立たない場合です。

新型コロナ感染対策でも、人の動きを制限すれば拡大を防ぐことができますが、それは社会活動や経済活動を止めてしまいます。ウイルスが強毒性で感染すれば直ちに重症化するのなら、厳しい行動制限をするべきでしょう。国民もそれを支持すると思います。しかし、それほどの強毒性でない場合に、どこまで行動制限をするかが議論になります。
厳しく外出を制限する案とふだん通りに生活をする案と、どちらを取るのではなく、その中間で折り合いを付ける必要が出てきます。

答が白黒の二つに分かれている場合と、右端は白く左端が黒で境目がなく次第に色が濃くなっている場合があります。
時代劇にあるような善人(庶民)と悪人(越後屋と悪代官)がはっきりしている場合は分かりやすく、最後に悪人がやっつけられると、見ている人もすっきりします。数学の問題で足し算や引き算も正解と間違いがはっきりしていて、答は100点か0点かです。
ところが、私たちの日常生活は、白黒がはっきりしている場合は少なく、どこかで折り合いをつけなければならない場合が多いのです。正解は一つに決まりません。

そのような演劇を見慣れている人は、早く結論を求め、白黒を付けることを望みます。込み入った事情を説明すると、イライラします。また、学校での正解がある勉強になれている人は、正解があると思い込みます。
残念ながら、現実世界はそうなっていません。だから、分かりやすい演劇が好まれ、明快な学問が好まれるのでしょう。

判断の4類型

私たちが物事を決める場合に、いくつかの手法があります。よく考えて決めたとか、好き嫌いで決めたとかです。

さまざまな手法があるのですが、次の4つに分類すると、わかりやすいのではないでしょうか。
1理性(弁別)=冷静に考え、自分が正しいと思う、あるいは社会で正しいと思われることを選ぶ。
2欲望(利害)=欲得を考え、自分に得になることを選ぶ。
3感情(好悪)=好き嫌いで選ぶ。
4慣習(惰性)=いつもと同じものを選ぶ。

私は、仕事では1を心がけていますが、ビールを選ぶ場合は4です。俳優などは3で、ものを買うときは2です。毎日の生活で一つ一つ1を使っていては、時間がかかります。多くの人は、たいがいは4で済ませています。

重要なのは、どの局面でどの判断類型を使うかです。
仕事の際に2を使うと、下品になります。3を使うと、よい組織になりません。時に、それを間違う人がいます。