カテゴリーアーカイブ:人生の達人

山本庸幸・元内閣法制局長官回想録

2024年3月20日   岡本全勝

山本庸幸著『元内閣法制局長官・元最高裁判所判事回想録』( 2024年、弘文堂)を、著者からいただきました。400ページもの大部ですが、読みやすいです。

1973年に通産省に入省、その後、内閣法制局長官、最高裁判所判事も務められました。安倍内閣での法制局長官交代劇も、書かれています。
仕事だけでなく、子どもの頃の話や、家族など私生活についても書かれています。官僚の回想録はしばしば仕事での武勇伝になりがちですが、この回想録は仕事で考えたことだけでなく、子育てなども書かれていて、後輩に参考になります。お勧めです。

野本弘文・東急会長の若き日の苦労

2024年3月13日   岡本全勝

日経新聞「私の履歴書」今月は、野本弘文・東急会長です。東急電鉄という鉄道会社に入社したのですが、「本流」でない住宅団地開発の部門に配属されます。その後も傍流勤めが長かったのですが、難しい仕事をやり遂げます。

7日の「入社」に次のような文章があります。
・・・父は無学だったが五島慶太翁のことを少しは知っていて、入社を喜んでくれた。入社前に福岡の実家に里帰りし、いよいよ東京に戻って社会人になるというとき。父の言葉をよく覚えている。
「どんな大会社でも小さな商店の集合体なんだよ。恐れることはない。しっかりとやって会社をもうけさせなさい。自分の給料は自分で稼ぐつもりでやりなさい」

商店主であった父の自負心がにじむ。この言葉をずっと大切にしながら仕事をしてきた。東急のような大組織の中にあっても、気持ちとしては自分の商店を開いているかのように、当事者意識をもつべしという教え。当時、新入社員の私は、東急内に新規オープンさせる「野本商店」をいかに経営していくか。経験が乏しいなりに考えていた・・・

8日の「厚木」には、次のような文章があります。小さな事務所に異動します。
・・・なぜここに配属されたのか。深く考えても仕方ない。「住宅開発については東急で一番になるぞ」。心の中で誓いを立てた。片道2時間ほどの通勤時間を勉強の場にして宅地建物取引主任者や測量士などの資格をとり、地主から信頼してもらおうと税金についても学んだ。工事現場の事務所にいつも顔を出し、問題があれば作業員の人たちと解決策を話し合った・・・
その後も、苦労されます。原文をお読みください。

NTT西の情報漏洩、自治体8割「流出元知らず」 

2024年3月11日   岡本全勝

先日紹介した、西日本電信電話の元社員による個人情報持ち出し事件「情報不正持ちだし、対策の不備と組織文化」。3月4日の日経新聞が、被害にあった自治体の8割が、漏洩元の企業を把握していなかったこと、知っていたのはゼロだったと伝えています。「NTT西系漏洩、自治体8割「流出元知らず」

・・・NTT西日本子会社から900万件超の個人情報が流出した問題を巡り、被害にあった自治体の8割超が漏洩元の企業を把握していなかったことが、日本経済新聞の調査で分かった。情報を取り扱う業者の監督は法律などで義務付けられているが、昨年10月の問題発覚後も実態を「把握すべきだった」と回答したのは3割にとどまった・・・
・・・同社に住民情報の取り扱いを委託した自治体側の対応についても、専門家は「個人情報の管理が企業任せになり、委託先の監督を義務づける法の趣旨が骨抜きにされている」と指摘する・・・

詳しくは原文をお読みください。皆さんの自治体、あなたの部署では、大丈夫ですか。

2学年4クラスを4人の教員で受け持つ「チーム担任制」

2024年3月6日   岡本全勝

日経新聞が「児童に好評「チーム担任制」 関わり多様、教員も負担減」を紹介しています(2月26日)。
・・・複数の教員が児童に接し、多様な関わりを生むのが狙い。三浦清孝校長は「固定担任制では閉鎖的になりがちな児童と教員の関係も、今は開放的。学校が過ごしやすい場所と思う子どもも増えた」と話す・・・

・・・メリットは、固定担任制では一方向だった教員と児童、保護者との関係に幅が出て、児童にとっては理解者が増えることだ。教員も互いを補い合うことができ、懸案も1人で抱え込まずに済む・・・通知表の評価もチームで会議を開いて判断している。
今年1月実施のアンケートでは、児童の85%以上がこの制度を肯定的に捉えていた。4年生の女子児童は取材に「自分のことを知ってくれる先生が増えて学校が楽しい」と笑顔で答えた。5年生の息子がいる保護者は「話をできる先生がたくさんいるのはありがたい」と話す・・・

これは、よい取り組みですね。若い先生が孤立して悩むことが少なくなります。先生との相性でうまくいかない生徒も、ほかの先生に相談できます。先生による暴力や性暴力も防ぐことができるでしょう。
簡単なことですが、なぜこのような取り組みがなされてこなかったのでしょうか。

私の履歴書の限界2

2024年3月5日   岡本全勝

私の履歴書の限界」の続きです。
ある人と話していたら、「私の履歴書には、面白い人と、そうでない人がいるね」とのこと。その話を要約すると、初めてのことに挑戦した人と、既存組織で出世した人との違いのようです。

企業家だと、自ら会社を興した人や、潰れそうになった会社を立て直した人が、興味深いです。2月に掲載された女性登山家の今井通子さんは、女性として初めての困難な登山をいくつも切り開いてこられました。それぞれに苦労をしておられます。かつてなら偉人伝に載るような人で、社会一般の人が読んでも勉強になります。

既存企業や役所で出世した人も、大変な努力をしておられ、後輩たちの参考になります。しかし、それは同輩中の競争の場合が多いです。新しいことに挑戦して組織を変えたとか、こんな苦労を乗り越えて組織を立て直したたという話なら、興味深いのですが。良いと言われる学校を出て、有名企業や官庁に就職し、出世しましただけでは、面白くないです。会社員や公務員には参考になりますが、社会一般の人が読んでもつまらないでしょう。

40年前に「私の履歴書」を読んだ頃は、戦中と戦後を生きてきた人たちの記録が多かったです。その方々は、とてつもない苦労を経験し、新しい事業や仕事を切り開いてきた人たちです。社会が安定すると、そのような人は少なくなるのでしょうか。