カテゴリーアーカイブ:人生の達人

中国古典に共通する仕事の仕方

2020年7月25日   岡本全勝

肝冷斎が、中国古典の中に、仕事のコツを見つけました。「呻吟語」より「三種方便」
私の「明るい公務員講座」と共通するようです。少々強引とも思えますが。

我嘗自喜行三種方便。甚於彼我有益。
不面謁人。省其疲於応接。
不軽寄書。省其困於裁答。
不乞求人看顧。省其難於区処。

・・・明・呂坤「呻吟語」応務篇より。一瞬、①要らん会議はするな、②無関係な人にまでメールで同送するな、③とりあえず「はい」と言っておけ、という岡本全勝さんの教えを思い出しました。ちょっとづつ違いますが、実は一緒ことを言っているのかも。でもよく考えたら、同じような組織人の行動を真摯に考えたら、同じような結論になるのは当たり前ですね・・・

資生堂、人事をジョブ型に

2020年7月25日   岡本全勝

NHKウエッブサイト「資生堂流人事の極意 “脱・年功序列”で会社が変わる?」(7月22日掲載)から。
・・・終身雇用・年功序列の日本型雇用とは異なる制度として、最近、ビジネス界で話題になっている「ジョブ型」という働き方。仕事の質や成果をより評価する人事制度です。資生堂は来年1月から、一般社員およそ3800人を対象にジョブ型を導入、思い切った改革が始まります。ジョブ型の導入で社員や会社はどう変わるのか。6年前、外部から招かれて資生堂のトップになり経営改革に取り組む魚谷雅彦社長に聞きました・・・
魚谷社長
「資生堂は変わらないといけないという強い危機感を持っていました。10年後、20年後、100年後を考えると、グローバルでの成長をさらに進めていかないといけない。そのためには、会社の中の風土やプロセス、仕組みの再構築を行い、社員の多様性や働き方の柔軟性を持たせないと会社の未来は作れないと思っています」

「資生堂を変える」ために、魚谷社長が今、変えようとしているのが人事制度です。5年前の2015年から、本社の管理職およそ1200人を対象にジョブ型の制度を導入。来年1月、一般社員およそ3800人を対象に制度を拡大します。
日本の大企業を中心に広がっている終身雇用・年功序列といった「メンバーシップ型」の雇用制度ではなく、「ジョブ型」を取り入れることで、多様なバックグラウンドを持つ社員を登用し、その個性を引き出して会社経営に生かすことがねらいです。
魚谷社長
「ジョブ型を取り入れている欧米の企業の在り方がすべて称賛すべきことだとは決して思っていません。ただ、私はジョブ型が『究極の適材適所』だと考えています。ダイバーシティー(多様性)を進めるうえで、女性の活躍を推進するだけでなく、外国人にもっとビジネスに参画してもらう。あるいは新入社員から育ってきている人と同時に、外部から採用して入ってもらうなど、さまざまな形で人材の多様性を高めていくとなると、新卒一括採用・年功序列・終身雇用といったいわゆる日本型の雇用慣行は、高度成長期の日本ではよかった仕組みだと思いますが、今の時代に合わなくなってきていると思います」

管理職を対象にした資生堂のジョブ型雇用は具体的に次のような仕組みです。
・営業・開発・マーケティングなどおよそ20の部門で各ポストに応じたグレード(職級)を設定。
・社員は、自分の持つ専門性や職務経験などを考慮したうえで、希望するポストを会社側に伝える。
・会社側は、ポストで定めた専門性や経験に対して社員の適性を見てグレードを定め、要件を満たすポストに社員を登用。
・ポストについた社員は直属の上司と面談し、今後達成する目標や具体的な計画などを決め、ジョブディスクリプション(職務記述書)と呼ばれる文書を作成。
・ジョブディスクリプションで決めた目標の達成度合いに応じて、給与や次のポストが決まる。

魚谷社長は、ジョブ型を導入すること自体が目的ではなく、多様な個人の力を伸ばすことで、ビジネスにイノベーションを起こし、企業価値の向上につなげることが重要だと話しています。

組織構成員の分類その3。階級の区別

2020年7月24日   岡本全勝

組織構成員の分類その2。能力差」の続きです。その1で、次のように説明しました。
B 上下の分担は、部長、課長、補佐、係員、平社員・職員です。また軍隊では、将官、士官、下士官、兵の区分です。「階級」(rank)です。一般的には、管理職、中間管理職、平職員の3段階に区分します。

諸外国の職場や、戦前の軍隊など、この階級差ははっきりしていて、給与や処遇だけでなく、食堂や便所まで違う場合もあります。
この区分をあまり際立たせない、なるべく平等にするのが、日本型職場でした。会社の中に「身分」や「階級」をつくらない。これが戦後日本の民主主義や平等意識の反映であったと、小熊英二著『日本社会のしくみ』(2019年、講談社現代新書)は指摘しています。

それが、かつては職場の生産性を上げ、近年では生産性の低さを生んでいると、私は考えています。
多くの組織において、目標を効率的に達成するには、管理職・中間管理職・職員という階級区分が必要です。それは、軍隊でも会社でも役所でも同じです。管理職は、その組織が何をすべきかを考え、それを中間管理職に指示します。中間管理職は、管理職の指示に従い、業務を達成するために、職員に指示し職員の仕事ぶりを管理します。職員は、中間管理職に指示されたことを実行します。
日本の職場でも、管理職、中間管理職、職員(社員)の区分はあります。しかし、その区分による職務の違いが、明確でないのです。
上司も部下も、みんなが一体となって一つの仕事に取り組む。それは、組織への一体感をつくり、全員で仕事をやり遂げるという長所を持っています。職場でのカイゼン運動は、その一つの表れです。
ところが、それが管理職と社員の仕事と責任のあいまいさを生みました。なるべく、上司による命令や指示という形を取らず、部下から意見をあげていく、全員が納得して仕事を進める形がよいとされました。稟議制もその現れです。しかし、その組織の進むべき方向を決めたり、新しい仕事の目標と期限を決めたりする場合には、管理職が責任を持って、時には部下全員の同意を得ることなく、決める必要があるのです。

管理職が、管理職の仕事をすること。部下の合意取り付けに労力をつぎ込むのでなく、責任を持って指示を出すことが必要なのです。管理職が責任を果たしていないことが、日本の職場の生産性の低さの原因の一つです。
この文章は、「管理職、中間管理職、職員の区分」で書いたことの要約・再掲です。参考「フランスの経済エリート
この項続く

組織構成員の分類その2。能力差

2020年7月23日   岡本全勝

組織構成員の分類その1。分野別、階級別、コース別」の続きです。
前回述べたのは、表に出ている「見える区分」です。これらの他に、「外から見えない区分」もあります。

D 同じ階級(例えば課長職)の中にも、できる課長・普通の課長・出来の悪い課長がいます。能力の差・業績の差です。
人事評価は、これをしています。良い表現がないので、「能力差」(ability)と呼んでおきましょう。2:6:2の法則は、これを指しています。人事担当者や管理職にとって、Aの分野別、Bの階級別、Cのコース別を前提として、Dの能力差を踏まえて誰をどこに配置するか、特に出来の良くない職員の配置が仕事です。あわせて、成績の低い職員に仕事をしてもらうことが、大きな悩みです。

本屋に並んでいる職場の解説をした書物には、AとBが書かれていてDが書かれていない、書かれていても「評価の仕組み」の解説にとどまっていることが多いです。
でも、きれい事だけでは、組織は動きません。『明るい公務員講座 管理職のオキテ』で、これについても説明しました。
また、Cについても、余り書かれていないでしょう。特に正規と非正規の差、同じような職務をしていても処遇に差があることについて書いたものは見かけませんね。

なお、このほかに、
E 非公式の役割分担があります。これは、社会学の教科書に出てきます。
この項続く

テレワークで見えた日本型職場の弱点

2020年7月19日   岡本全勝

7月16日の日経新聞「テレワーク新常態(3)」「責任あいまい テレワークで弱点あらわ」から。

・・・「業務の進捗を把握できない」「健康管理も難しくなった」。リクルートワークス研究所(東京・中央)には今、テレワークの社員のマネジメントに悩む企業からの問い合わせが殺到している。あまりの多さに課題を分析する専門プロジェクトを立ち上げた。責任者の大久保幸夫は「コロナを機に、上司の指示が不明確で部下も自立していない日本企業の弱点があらわになった」と感じている。
日本は欧米に比べ個々の社員の職務内容や責任範囲があいまいだ。「ホウレンソウ」に代表される緊密なコミュニケーションで隙間を埋めてきたが、テレワークになるやいなや機能不全に陥る企業が少なくない。

2月、いち早く在宅勤務に切り替えたドワンゴ社長の夏野剛は、ほどなく新たな働き方が人事評価の見直しを迫ることに気づいた。ビデオ会議では発言内容が全て。雰囲気で存在感を放つベテランが目立たなくなり、オフィスでは発言を遠慮していた若手の貢献が明確になる。
「チームワークが覆い隠してきた、さぼっている人とがんばっている人のパフォーマンスの格差が可視化された。適材適所の人材配置を進めやすくなる」。在宅で成果を出せる人材の選別が加速する・・・