投稿者アーカイブ:岡本全勝

デジタル教科書の欠点

2020年12月9日   岡本全勝

12月2日の読売新聞「デジタル教科書を問う2 読解力向上 模索続く」から。

・・・豪州は、先進的に教育のデジタル化に取り組んでいる。ところが、シドニーの私立レッダムハウス小中学校では昨年、それまで5年間続けていたデジタル教科書の利用をやめ、紙に戻した。7~11歳を対象にデジタルでの学習の成果を測ったところ、子供が「紙の方が集中できる」と感じていると判明したためだ。
原因を探ると、デジタル教科書では画面の切り替えやメール着信などの際、気を取られることが分かった。広報担当者は「紙の教科書を読み、自らノートに書き込む方が学んだ内容をしっかり記憶できる」と語る。

台湾では2009~11年、一部の小学校でデジタル教科書を試験的に導入した。保護者から「視力が落ちる」「鉛筆でノートに書く学習がおろそかになる」など懸念の声が上がった。これを受け、紙の教科書を維持し、理解を補うためのデジタル教材の開発に修正した。現在も、紙とデジタルを併用している・・・

・・・紙とデジタルの教科書を巡っては、経済協力開発機構(OECD)が18年、79か国・地域を対象に行った国際学習到達度調査(PISA)が注目されている。
本を「紙で読む方が多い」と答えた日本の生徒は読解力の平均得点が536点、「デジタルで読む方が多い」は476点と60点差があった。数学でも、授業でデジタル機器を使う割合が61%の豪州が、わずか8%の日本に比べて平均得点が高いわけではない。

台湾で「デジタル教育の先駆者」と呼ばれる中央大(桃園市)ネット学習科技研究所の陳徳懐教授は、端末を使った学びは「疑問を解決し、友達と共に勉強しやすいなどの強みがある一方、文章を読み飛ばしやすく、深い理解や感情移入がしにくい」と指摘する。
紙と電子媒体の違いを研究する群馬大の柴田博仁教授(認知科学)は「情報の全体像をつかみ、考えを深めるにはデジタルより紙が優れている。子供の思考力を育むにはデジタル教科書は不向きだ」と強調した・・・

アメリカの悩み、賃金が増えない

2020年12月8日   岡本全勝

11月26日の日経新聞経済教室は、会田弘継・関西大学客員教授の「大統領選後の米国と世界」でした。内容は本文を読んでいただくとして、そこに2つのグラフが載っています。

一つは、学歴別で見た男性正規従業員の実質賃金の変遷です。1964年から2012年までの実質賃金の変化(1963年を100とした指数)が、折れ線グラフで示されています。学歴別区分は、高校中退、高校卒、大学中退、大学卒、修士以上の5区分です。
グラフを見ると、ものの見事にその差が出ています。1970年代までは少しの差がありつつも、全体に上がっています。1980年代以降は、大学中退以下の学歴層が低下します。高校中退では、1990年代に指数が100を切ります。他方で、修士以上は1990年代以降も順調に伸びます。大卒も上昇します。
その結果2012年では、修士以上は200、大卒が140に対し、大学中退は120程度、高卒は110程度、高校中退は100程度です。
この半世紀で、大卒以下はほとんど賃金が伸びていないこと、そして学歴によって大きな格差が生じていることがわかります。製造業が他国に奪われ、知識集約型産業は元気が良いことの反映でしょう。

もう一つは、親の所得を超えた子の比率です。1940年から1980年代半ばまでに生まれた子どもの、親の所得を超えた子の比率です。1940年ごろに生まれた子どもは、9割が親の所得を超えます。その後どんどん低下し、1960年代生まれでは6割になります。1980年ごろの生まれでは、5割です。
これも、一目瞭然です。

1980年代にアメリカが元気を失った際に、経済で日本に追い抜かれたことより、建国以来続いていた、子どもが親より豊かになることが止まったことが理由だと言われたことがあります。連載「公共を創る」でも、紹介しました。
「公共を創る」では、社会の雰囲気や社会意識が「この国のかたち」をつくることを説明しています。アメリカの元気のなさ、社会の分裂を生んでいるのは、このような経済的背景でしょう。それも、GDPといった一国の経済指標でなく、国民・庶民の暮らしであり、肌感覚です。
そして、アメリカの現状は対岸の火事ではなく、明日の日本でもあるのです。

話しかけられて嫌なときほどうれしそうな顔をしろ

2020年12月7日   岡本全勝

12月3日の日経新聞夕刊、私のリーダー論は、野島広司・ノジマ社長の「部下の声にうれしい顔を」でした。

――理想のリーダー像はありますか。
「やはり部下から尊敬されていない人はリーダーとしては不適格だと思います。尊敬されるというと言い過ぎかもしれませんが、上司の悪い点を部下が言いやすい環境をつくらなくてはなりません。部下の意見などを抑え込む人はリーダーとしてよろしくないと思います」
「親子関係もそうです。親に何でも相談できる性格の子と、できない子がいますよね。でも子供が相談できないのは半分以上、親が悪いのだと私は思います。ですから『話しかけられて嫌なときほどうれしそうな顔をしろ』とリーダー候補と思う人には言っています。そうすると部下の姿が見えるようになります」

――でも、忙しいときに話しかけられるといらつきませんか。
「イラッとします。会社でも私が出かけようとするときに限って話しかけてきて了承を求める社員もいます。イラッとして『こんな忙しいときにまた持ってきて』と言葉に出しちゃいます。本人に面と向かって言うのが私のスタイルなんです」
「人を叱るときはオープンな場で叱ります。一対一で叱れ、と言う人もいますが、他の人が聞いている方がいいと思います。言い過ぎたと思ったときには謝ります。この年になって、その加減がようやく少し分かってきました」

関西大学で講義2

2020年12月7日   岡本全勝

関西大学で講義」の続きです。学生たちが書いてくれた感想文を読みました。
授業終了後30分以内に、電子メールで林先生に提出する仕組みです。54人の学生が、書いてくれました。

簡単なものもありますが、多くの学生が結構長文を書いています。林先生もおっしゃっていますが、多くの学生が、5分程度でこれだけの長い文章を書けることは、驚きです。
しかも、私が伝えたかった内容を、的確に理解してくれています。大震災は、彼らが小学生の時です。被害の生々しさと復興の難しさのほかに、町が失われたことによって、また町を復興することを通じて、町の暮らしが何からできているか、行政だけでなくそのほかの主体が重要であることがわかったことです。

よい反応をしてくれた学生諸君に、感謝します。