デジタル教科書の欠点

12月2日の読売新聞「デジタル教科書を問う2 読解力向上 模索続く」から。

・・・豪州は、先進的に教育のデジタル化に取り組んでいる。ところが、シドニーの私立レッダムハウス小中学校では昨年、それまで5年間続けていたデジタル教科書の利用をやめ、紙に戻した。7~11歳を対象にデジタルでの学習の成果を測ったところ、子供が「紙の方が集中できる」と感じていると判明したためだ。
原因を探ると、デジタル教科書では画面の切り替えやメール着信などの際、気を取られることが分かった。広報担当者は「紙の教科書を読み、自らノートに書き込む方が学んだ内容をしっかり記憶できる」と語る。

台湾では2009~11年、一部の小学校でデジタル教科書を試験的に導入した。保護者から「視力が落ちる」「鉛筆でノートに書く学習がおろそかになる」など懸念の声が上がった。これを受け、紙の教科書を維持し、理解を補うためのデジタル教材の開発に修正した。現在も、紙とデジタルを併用している・・・

・・・紙とデジタルの教科書を巡っては、経済協力開発機構(OECD)が18年、79か国・地域を対象に行った国際学習到達度調査(PISA)が注目されている。
本を「紙で読む方が多い」と答えた日本の生徒は読解力の平均得点が536点、「デジタルで読む方が多い」は476点と60点差があった。数学でも、授業でデジタル機器を使う割合が61%の豪州が、わずか8%の日本に比べて平均得点が高いわけではない。

台湾で「デジタル教育の先駆者」と呼ばれる中央大(桃園市)ネット学習科技研究所の陳徳懐教授は、端末を使った学びは「疑問を解決し、友達と共に勉強しやすいなどの強みがある一方、文章を読み飛ばしやすく、深い理解や感情移入がしにくい」と指摘する。
紙と電子媒体の違いを研究する群馬大の柴田博仁教授(認知科学)は「情報の全体像をつかみ、考えを深めるにはデジタルより紙が優れている。子供の思考力を育むにはデジタル教科書は不向きだ」と強調した・・・