投稿者アーカイブ:岡本全勝

地方から若い女性が消える

2021年12月20日   岡本全勝

地方から若い女性がいなくなっています。都会の大学に進学した後、戻ってこないのだそうです。数年前に、「消防団員のなり手がいない」と聞いたので、「女性を入れたらどうですか」と質問しました。答は、「勧誘しようにも、若い女性がいない」とのことでした。男性にとっても、結婚相手がいないと嘆いていました。

12月16日の日経新聞夕刊が「増える未婚「若い女性が消えた」」を伝えていました。

・・・日本の未婚率の上昇が止まらない。総務省がこのほど発表した2020年国勢調査を基に30歳時点未婚率(25~29歳未婚率と30~34歳未婚率の平均)を算出すると、男性64.1%、女性52.1%にも上る。未婚化は少子化を加速する。都道府県別に人口構成を分析すると、若い男女の人口バランスが大きく崩れており、結婚したくとも相手が見つからない状況に陥っている。その原因は地方から都市部、特に東京周辺への若い女性の流出だ・・・

・・・気がつくと、若い女性たちが、まちからすーっといなくなっていました――。3月に兵庫県豊岡市がまとめた「ジェンダーギャップ解消戦略」はこんな書き出しで始まる。人口減少と少子化が止まらない。状況分析しているなかで、若い女性の流出超過が課題に浮上した。高校卒業時に多くの若者が市外に進学する。20代で男性は2人に1人が戻ってくるが、女性は4人に1人しか戻らない。若者の流出は足元の人口減少の大きな要因だが、若い女性の減少は未婚率を高め、今後の少子化、将来の人口減少につながると市は強い危機感を抱く・・・
・・・状況は都道府県別で大きく異なる。シングル男性の余剰が最も大きいのは栃木の1.51倍。男性約6.9万人に対して女性約4.6万人にすぎない。以下、茨城1.49倍、富山1.45倍と続く。逆に男女バランスが最も取れていたのは鹿児島で1.03倍、以降奈良1.07倍、福岡1.08倍と並ぶ・・・

・・・なぜ若い女性が東京圏に流れるのか。公益財団法人東北活性化研究センター(仙台市)は20年に地元から出ていった女性らを対象に意識調査をした。よくいわれている通り、高校卒業後に希望する進学先が地元になく、東京圏に進学したとする回答が7割を占めた。ただ、問題は進学先だけではなかった。東京圏に進学を決めた時点で54.5%は「地元に戻る気はなかった」。なぜ地元に就職しないのか。理由の上位に「やりたい仕事、やりがいのある仕事が地方では見つからない」58.9%、「東京圏と比べて年収が少ない」56.1%とキャリアに関する不満が並んだ。
華やかな暮らしへの漠然とした憧れから東京に出て行くのだろう――。そんな甘い見立てが覆った。藤原功三地域・産業振興部長は「厳しい現実を突きつけられた。女性は進学時点で将来のキャリア設計もしっかり考えている。でもその受け皿が地方では限られる」と説明する・・・

新しい試みに反対する人、後押しする人、実現する人1

2021年12月19日   岡本全勝

公務員批判の定番に、前例主義があります。前例のないことは、しないのです。すると、新しい課題に取り組むことが遅れます。
私も、霞が関や県庁で、この慣習にしばしば遭遇しました。新しい試みを考えて相談すると、何人かの人は背中を押してくださるのですが、多くの人は反対します。しかも頭の良い人は、即座にその案の問題点をいくつか指摘して、私の案をつぶしてくれます。没にしなくても、「問題があるから慎重に検討して」と先送りされます。これも結果としては、つぶれたことになります。

課長補佐の時に、その慣習に染まりかけたときです。ある決裁を、E官房審議官に持っていった際に、いくつか違う案を提示されました。私の方が「これまで、これできましたから」と回答すると、「君は柔軟だと聞いていたけど、頭が硬いなあ」と笑われました。E審議官は私の席の経験者なので、「E審議官も課長補佐の時に、このようにされたのではないですか」と反論したら、「おかしいと思っていたんだ。君の時代に変えることを検討しろ」と言ってくださいました。
自席に帰ると、課長が「Eさんから電話があったけど、君のことを『頭が硬い』と笑っておられたぞ」と話しかけてこられました。E審議官は、私を笑いつつ、課長に変更の根回しをしてくださったのです。

以来、自信を持って「改革派」を名乗りました。そのうちに、周囲も「全勝は変えることが好きな奴」「あいつは、じっとしていない奴だ」と烙印を押してくれたようです。褒め言葉でない場合が多かったです。とはいえ、前例通りという霞が関の気風「大きな壁」は、私一人では変えることができませんでした。

総理秘書官になって、総理からの指示で、あるいは総理と相談し、慣習を変えたり、新しいことに取り組みました。もちろん、一気に大きな変更は無理です。そこは心得つつ、総理の意向を背景に、官僚機構に働きかけました。
もう一つは、東日本大震災対応です。千年に一度の大津波と日本が初めて経験した原発過酷事故。前例がないのです。しかも、目の前には47万人もの被災者がいます。「前例がない」「慎重に検討して」とは言っておられません。被災者生活支援本部に来てくれた各省の官僚たちも、知恵を出して次々と新しいことに取り組んでくれました。
中には少数ながら「前例がありません」というセリフを繰り返す人もいました。私はそのような場合には「千年に一度の津波だから、千年前の大宝律令も調べてね」と返しました。もっともそのような人には、この冗談(皮肉)は通じませんでした。
この項続く

ソーシャル・ネットワーキング・サービスの若者への心理的悪影響

2021年12月19日   岡本全勝

12月10日の朝日新聞1面は、「把握済み、FBに批判 インスタグラム「若者に悪影響」」でした(見出しに「FB」とアルファベットが使われています。日本を代表する日本語新聞としては、これは問題ですね)。

・・・元従業員の内部告発をきっかけに、世界で36億人の利用者を持つSNS最大手メタ(旧フェイスブック、FB)への批判が強まっている。傘下の写真投稿アプリ「インスタグラム」の若者への悪影響が指摘されており、朝日新聞が入手した内部文書からは、FBが以前からそうした心理的な悪影響を把握していたことが読み取れる・・・

・・・インスタの若者に対する悪影響については、内部告発の元になったFBの内部文書に関連の記述がある。2019年11月に社内で共有された、日本を含む6カ国の約2万人を対象にした調査では、自殺願望や自傷行為の悩みをかかえる10代の少女の13・5%が、インスタをみると状況が悪くなると答えた。身体の悩みを抱える少女の32・4%が状況を悪くすると答え、「良くする」を上回っていた。
昨年3月に共有された別の社内調査では、インスタは有名人の投稿が多く、「完璧に見えなければいけないというプレッシャー」があるとしている。こうした結果、摂食障害、うつ、孤独などにつながりうるという・・・

川北稔先生「私と西洋史研究」

2021年12月18日   岡本全勝

川北稔著『私と西洋史研究:歴史家の役割』(2010年、創元社)を読みました。かつて読もうと買ってあったのが、本の山から発掘された(正確には、崩れて出てきた)ので。
川北先生はイギリスを中心とした西洋史の大家です。私は、『路地裏の大英帝国』『民衆の大英帝国』やウォーラーステインの『近代世界システム』の翻訳で、親しみました。あとで、高校の先輩だと知りました。

この本の解説には、次のようにあります。
「西洋史研究の碩学として知られる著者の個人研究自伝。計量経済史および生活史(社会史)の開拓、世界システム論の紹介・考察など数々の画期的業績を築きあげた著者の研究スタンスや思考を詳説するとともに、学界研究動向の推移や位置づけ、歴史研究の意義とあり方、歴史家の役割など、歴史を学ぶうえで必須の観点を対談形式で平易に説き明かす」

この本にも書かれていますが、川北先生と阿部謹也先生が社会史を始められた頃は、学会からは異端として相手にされなかったそうです。私も、阿部先生の『ハーメルンの笛吹き男』や川北先生の本を手に取ったときは、「このような歴史学があるのだ」と驚きました。歴史を政治史として習った私には、社会史は「文学に近いな」と思えたのです。
興味を持って読んだそれらの平凡社のやや大きめの判型の本は、いくつも今も本棚の奥に並んでいます。
大学で政治学を学び官僚になったのですが、社会史の見方に惹かれ、そのような本を読むだけでなく、今の社会と政治の見方にもつながっています。

先生の史学は、当時の主流であった東大を中心としたマルクス主義史観、大塚久雄先生の史学を超えることでした。そして、ヨーロッパの研究者の三流にならないこと、彼らと互角の戦いをすることでした。すると、史料を読み解いて発表するだけでなく、新しい物の見方を提示する必要があります。それに成功されたのです。
先達の努力と葛藤を学ぶことは、ためになります。

ブログ「自治体のツボ」2

2021年12月18日   岡本全勝

このホームページでも紹介した「自治体のツボ」。めでたく、3年続いたそうです。

・・・この間、地方では色々なことがあった。ふるさと納税、大阪都、インバウンド。しかし、なんと言ってもコロナ対応に尽きるであろう。
知事の存在感は際立った。患者数を憂慮する会見、国を批判するコメント、踊るフリップ。スタンドプレー込みでも不眠不休の行政運営だった。
ただ知事個人に目が行ったものの、自治体個別、地方独自といえる政策はもうひとつ見るべきものがなかった。残念ながら少なかった。
気になるのは、やや国頼みが強まって見える点だ。未知なる感染症との闘い、財政も逼迫とあってはやむを得ないが、国お任せムードが充満する・・・
・・・地方の形を変える論議は消失した。財政再建論議も止まっている。地方分権の機運も残念ながら薄れていると考えざるをえない。
ウィズコロナ、ポストコロナの時代。地方をダイナミックに、そして地道に駆動させる政策で競い合ってほしいものである・・・