投稿者アーカイブ:岡本全勝

外交文書の公開

2021年12月25日   岡本全勝

12月22日に外交文書が公開され、各紙が取り上げています。朝日新聞読売新聞日経新聞。今回対象となるのは、湾岸危機といった、1990年前後の外交案件です。

あれからもう30年が経つのですね。湾岸戦争での日本の対応が、国際社会から「笑いものになった」ことに、私は大きな衝撃を受けました。「湾岸戦争での日本の失敗
世界でも最も多くの原油をその地域に依存している日本が、イラク軍から油田を取り返す戦争に、「日本は危険なことはしないので、お金を出します」と答えたことです。巨額の戦費を負担しながら、クウェートが出した感謝の新聞広告に日本の名前はありませんでした。

私は当時の講演などで、いかに日本の常識が世界の常識とずれているかを示すために、次のような例え話をしました。
・・・あるところに、水が乏しい村がありました。村に、一つだけ共同井戸がありました。ところが、外からならず者がやってきて、その井戸を自分のものにして使わせてくれなくなりました。村人は集まって、井戸を取り戻すために、悪者をやっつけに行こうと決めました。
一番多く水を使っている大地主の岡本さんにも、「お宅の息子も一緒に行ってください」と声をかけました。ところが、岡本は「わが家には、危ないところには息子を出さないという家訓があるので、息子は参加させない」と返事しました。村人は「でも、あの井戸から一番たくさん水を汲んでいるのは、岡本さんですよ」と言うと、岡本は「では、お金はたくさん出しますよ」とお金を出しました。
みんなで危険を顧みず悪者と戦い、追い出しました。終わった後で、お祝いの席がありました。岡本の息子も近くまで来たのですが、村人は「これは、参加したものだけの打ち上げですから、あんたは呼ばれてないよ」と言いましたとさ・・・

佐々江賢一郎・元外務次官の発言(読売新聞)
・・・湾岸危機当時、外務省北米局で日米関係の実務に携わった。率直に言えば、日本外交は失敗だった。戦争をする米国が同盟国の日本に期待するのは当たり前だが、日本は「米国が日本に何を求めるか、それにどう応えるか」と考え、受け身だった。90億ドルの支援でも大蔵(現・財務)、外務両省の連携が取れず打ち出すタイミングも悪かった。
ただ、この経験は2001年の米同時テロ後に生かされた。小泉首相は「出来ることをやる」と、海上自衛隊によるインド洋での給油活動を提案した。そこからテロ対策特別措置法や15年の安全保障法制の制定へと続くプロセスは、自衛隊の力を積極的に使うことに意味があるという方向に日本の意識が変わる過程だ・・・

進まない男女共同、男もつらいよ

2021年12月24日   岡本全勝

12月12日の読売新聞、田中俊之・大正大学准教授のインタビュー「男性視点で見直す男女格差」から。
・・・政治、経済分野での女性の進出が、先進国で最低レベルの日本。政府が「女性活躍」の旗を振るのに、なぜ進まないのか。田中俊之・大正大准教授は、男性が抱えがちな悩みや葛藤を研究する「男性学」の視点から、その背景を読み解く。男性の長時間労働を見直し、育児参加を促すことが、女性の社会進出の推進につながるからだ。自らも2児の子育てに奮闘しながら考える「男女がともに働きやすい社会」への道筋とは・・・

・・・男女雇用機会均等法の施行から35年。女性の採用は増えましたが、指導的立場に就く割合は、欧米諸国に遠く及ばない状況です。賃金格差はフルタイム勤務でも女性が男性の約7割で、非正規で働く割合は男性の2倍以上。出産後も働き続けることのハードルも解消されていません。
共働きの家庭でも、男性は社会から「一家の大黒柱」とみられる傾向は変わっていないのです。女性に比べて地位向上の機会に恵まれる一方で、弱音を吐くのは男らしくないという呪縛もあり、孤独に陥りがちです。男性の自殺率が女性を上回るのは、社会的な重圧が関連しているのでしょう。
近年は低成長時代に入って非正規で働く男性が増え、男性間の格差も拡大しています。50歳時点での男性の未婚率は2割を超え、収入の低い人ほど未婚の割合が高い傾向もあります。結婚は本人の自由ですが、希望しても選択できない状況は深刻です。
「女性は収入の高い男性を好む」と言われる背景には、女性の賃金が低く、性別の役割分担を前提にした社会の設計があります。男女の生きづらさは、お互いに「人ごと」ではなく、コインの裏表のような関係なのです・・・

・・・高度経済成長期以前は、家族で農業などに携わる働き方が主流でした。男性が雇用されて定年まで働き続け、妻は専業主婦という家庭が一般化したのは、それほど昔のことではないのです。近年はフルタイムで働く女性が急増し、独身の人も多い。それなのに、依然として男性の方が社会での競争を意識せざるを得ないのは、学校教育の影響もあるようです。
大学生に聞くと、いまだに高校では部活動の片付けを女子だけが担い、男子が教室の掃除をさぼっても許される、といった風潮が一部に残っているようです。女子は他の人の世話をする「女子力」を求められ、大学進学率が上昇しても理系に進む生徒は限定的です。学校や家庭でも、男女の役割の固定観念に縛られず、将来を自由に描けるような教育が必要です・・・

12月11日の日経新聞読書欄、山田昌弘・中央大学教授の「男らしさの呪縛を解こう 生きづらい男性のための4冊」も参考になります。
・・・近年、「男性弱者」に関する議論が盛んになっている。男性弱者とはおおざっぱに言えば、「稼げない男性」のことである。グローバル化、格差社会の進展によって、「稼ぐ」という従来の男らしさを実現できない「男性弱者」が増加していると言われている。
女性抑圧からの解放を目指すフェミニズム運動に触発されて出てきたメンズリブ運動や、「男らしさ」について研究する「男性学」の論客も、男性弱者を積極的に取り上げるようになってきた。そこでは、稼げない男性が結婚できなかったり、稼ぐ役割を強要され過労や自殺に追い込まれるなど、男性であることの「生きづらさ」が強調されるものが多かった。これらの論考を、社会学者の江原由美子氏は「男はつらいよ型男性学」と呼び、男女平等がけしからんといった反動的な思想や運動につながる危険性について指摘している。
しかし、従来型の男性学を日は敵に乗り越え、新しい男性のあり方を模索する論考が最近相次いで出版されている・・・

投資に向かわない家計資産

2021年12月24日   岡本全勝

12月21日の朝日新聞「膨らむ個人マネー、偏る日本 株高・コロナ給付受け、家計資産2000兆円目前」から。
・・・家計の金融資産が膨らみ続ける背景には、老後への不安から目の前の消費を抑え、貯蓄に回そうという根強い傾向がある。
実際、少子高齢化が進み、年金支給額は今後大きく増やせない可能性が高い。そこで、政府は金融資産を金利がほとんどつかない預貯金ではなく、投資に回してもらい、個人で老後に備えた資産形成をしてもらおうと促してきた。株の配当や売却益などに税金がかからないようにする少額投資非課税制度(NISA)の拡充などはそのための政策だった。

だが、家計の金融資産のうち、株や投資信託の比率をみると、約15%でバブル経済崩壊後の30年間横ばいが続く。欧州の約30%、米国の約50%より大幅に低い。投資への動きはなぜ鈍いのか。三井住友DSアセットマネジメントの鈴木健也執行役員は「預貯金で高金利がついた時代に育った人は元本確保を好む傾向がある」と話す。
「難しい」(51%)、「ギャンブルのようなもの」(31%)、「なんとなく怖い」(31%)。日本証券業協会が今月発表した7千人対象の意識調査で浮かび上がる投資のイメージだ(複数回答)。投資が必要と考える人は全体の31%の一方で、必要と思わない人が69%を占めた・・・

・・・岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田創氏は「バブル崩壊後の株安と円高で、円を現預金で持つことが身を守る方法になった。今の40~50代はバブル後のトラウマが解けていない。アベノミクス後に株高が進んでも身動きをとれていないことが資産構成に反映されている。一方で、20~30代はトラウマがほとんどない」と話す・・・

講義や講演後の質問

2021年12月23日   岡本全勝

講義や講演の際に思うことです。
終わりに、質問の時間を取ります。そのときに、適確な質問が出るとうれしいです。「おお、よく聞いてくれて、理解しているなあ」とです。時に、私が直ちに答えられないような質問もあります。これは、私にとっても勉強になります。
時間を超過して、いったん閉講して質問者に残ってもらう場合もあります。これは(後の予定がないなら)うれしいことです。
逆に、何も質問が出ないと、がっかりします。「この人たちは、私の話を理解してくれたのだろうか」とです。

座席の埋まり方も、気になります。広い会場で後ろの席から埋まっていて、前の席に人が座っていないことがあります。
「こんなよい話を聞きに来たのに、なんで後ろに座るのか」と、腹立たしくなります。

学校の授業にあっては、先生が指導してはどうでしょうか。
・講義や講演について、質疑応答の時間があれば、質問するべき、あるいは感想を述べるべきであること。
・講義中には、「もし指名されたらどのような質問をするか、意見を述べるか」を考えながら聞くこと。
・講師は、講義中も、どの聴衆が良く効いているか、顔と表情を見ていること。適確な質問をした学生には、良い評価を与えること。
・採用面接なら、うつむいている学生や何も質問しない学生より、しっかり聞いて質問する学生を採用すること。

新型コロナ、自宅療養の問題点

2021年12月23日   岡本全勝

12月16日の朝日新聞オピニオン欄、「自宅療養 その現実」から。
・・・病床が逼迫した新型コロナの第5波では、ピーク時に自宅療養者が全国で13万人に上り、命を落とす人が相次いだ。自宅療養の現場で何が起きていたのか。新たな変異株の脅威が迫る中、第6波に向けて何を教訓とすべきか。東京都内で約210人の自宅療養者を診察した「ひなた在宅クリニック山王」の田代和馬院長に聞いた・・・

――コロナ患者はそもそも自宅で療養できるものなのでしょうか。
「『自宅療養』への最初のイメージは、入院する必要のない人を自宅で治療すると、文字通りそういう意味だと思っていました。確かに患者全員の入院は、感染が爆発した状態では非現実的で、我々が家でできる治療をする必要が出てくるとは思っていました」
「だけど、現実は違った。第5波では、本来入院すべき人の多くが入院できず、『医療崩壊』としか言いようのない状態に陥りました。自宅療養ではなくて、言ってしまえば自宅待機でしたし、待機できているのかもわからない。『自宅放置』されていたのが現実です」

――実際に見た現場は。
「初診時に半数の107人が『中等症Ⅱ』でした。呼吸不全があり、酸素投与が必要な患者です。患者の中には息が吸えず、顔色が真っ青になっていく人がいて、本当に死をリアルに感じ続けた期間でした。あまりにもしんどくて動けず、汚物を漏らして尊厳が完全に失われた環境に身を置かざるを得ない人もいました」
「自宅療養は、軽症でリスクの少ない人が氷囊(ひょうのう)を載せて休んでいるというイメージです。呼吸が困難な中等症以上の人には、自宅療養との言葉は使うべきではない。重症化するタイミングが予見しにくく、治療は酸素とステロイドしかない。戦場に竹やりだけで挑むようなものです。入院できないのはある程度仕方ないと思う半面、十分な治療ができなかったことが一番の問題だと思います。コロナに感染した途端、医療体制から断絶されているという非常に逆説的なことが起こっていたのが、自宅療養の現場でした」

――今後の感染拡大に備え、何が必要ですか。
「コロナ病床として確保された病床に入院できない『幽霊病床』をなくすことです。コロナ病床を引き受けるのならば、とりあえず患者を受けてほしい。病院に『これ以上悪くなったら何もできないから、受けられません』と断られたこともあった。そうなれば結局、僕らが『入院先が見つかりません。もうだめです。すみません』と患者さんに自宅で伝えることになる。どんどん下請けに流れてきているだけじゃないですか」
――幽霊病床の背景として医師や看護師の不足が指摘されています。東京では確保病床の使用率が最も高い時でも71%でした。第6波に向けて、政府は病床の増床や「見える化」を掲げています。
「神奈川県や千葉県は第5波でも病床使用率が80%を超えていました。東京では最も厳しい8月中旬でも6割程度だったのに、どこへ掛け合っても『満床』と告げられていました。『マンパワー不足』だけで説明がつきますか。『助けられないかもしれないけど、連れてこい』と言って欲しかった。90%までいっていたら、医療崩壊なんて起きなかった。検証されるべきだと思います」
「使用率を上げるには、空床情報の可視化が必要です。リアルタイムで『どの病院でどの重症度の病床が何床』と具体的な数字を示し、医療関係者がオンラインで見られるようにしてほしい」